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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_31 

 怪我の痛みならいくらでも耐えられる。だが、エドアルドを襲っている激痛は怪我に起因するものではなかった。
 手の甲に灼熱する月印から、何かが腕を通してせり上がってくる。そのおぞましい感覚はすぐに全身へと行き渡り、耐えようとする心そのものを蝕み始めた。
 月印が暴走する。
 漆黒の翼をまとったドミトリィを圧倒したのは、最初の一撃だけだった。次の瞬間、痛みを耐え、肉体を動かしていた精神そのものが硬直し、力を求める衝動だけが全身を跳ね回った。
 力を……もっと力を……。
 理性を焼き切られていく感触に気が触れそうになり、燃えるように熱い手を押さえながら、エドアルドはその場にうずくまる。
「月印一つ御しえぬとは……」
 新月の民が言う皮肉に肌が粟立ち、役立たずの自分を笑う声も、戦いに挑んだ意志も、ただ強さを求めた心も、破壊の衝動に押し切られて、胃の内容物ともどもはき出してしまった。
 空っぽになった身体に跳ね回るのは、暴走する月印の力とドミトリィの蔑む声。「哀れなものだな」と重ねられた言葉が、エドアルドの中の衝動に拍車をかける。
 力だけは手に入ったことを教えるように、床をかきむしる指がそれを削り取り、叩きつけた額が分厚い石畳を粉砕した。
 俺は何をやっている。俺は……。
「ドミトリィ、引き上げるよ!」
 不意に女の声がし、気配が一つ増えた。その声は知っている。サランダの声だ。
「サランダ、何をしている……。レオニード様はどうした?」
「追って説明する。今は一刻も早く引き上げて、あの方をお救いしないと」
「救う!? 何を言っている。まさか……」
 シグムント様が勝ったのか? それなら俺も……こいつを……。
 だが、エドアルドの身体はその思いに答えない。ただ月印が暴走しているという感覚だけがはっきりとしていて、それが月印を授かったときに炎鳳王に言われた一言を思い出させた。
 ――汝がその月印を御しえなかったとき、身も心も焼き尽くされると心得よ。
 まさに今、自分を襲っているのがそれだと自覚したエドアルドは愕然とした。
 月印に、焼き尽くされる……?
「命を拾ったな」
 その言葉に視線を上げたエドアルドが見たのは、サランダとドミトリィ、二人の封印騎士の背中だった。
「ま、待て……」
 絞り出した声は、その場から消えた二人の耳には届かなかった。
「くそぉ!!」
 負けた……完璧にだ……。
 叩きつけた拳が床を砕いた直後、エドアルドの怒りは衝動の奔流へと転化して全身を駆け巡る。
「ぐあああああ!」
 すり減る理性が思考を白濁させ、身体の中で暴れる衝動に抗うこと以外の全てをそぎ落とす。もはや自分のものとも思えなくなった拳を押さえつけるのに必死で、エドアルドは、部屋全体が震え始めたことにも、自身の月印がどす黒く汚れていくことにも気づかないでいた。

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