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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_32 

 空間全体がぜん動する不快な感触に肌が粟立ち、ミルシェは詠唱の手を止めた。ドミニカがニエジェランにはじき飛ばされ、瓦礫の中から立ち上がろうとしていたバルバガンにぶつかる。漆黒の翼をまとったニエジェラン一人に苦戦をしていたおりだった。
「時間か……」
 億劫そうに天井を見上げたニエジェランが呟く。
「ボクはそろそろ退散するとするよ。きみたちもさっさと逃げ出した方がいい。こんなところで死なれても、後の楽しみが無くなってしまうからね」
 ふひひと野卑た笑いを上げ、「楽しかったよ」と言い捨ててから、ニエジェランは空間を歪めるようにしてその場からかき消えた。「待て!」と叫んだドミニカの声はニエジェランには届かず、ざわめく空間の中に反響するだけだった。
「……まずいね」
 ユージンがそう言った直後、吹き抜けの上、天井の一部が剥がれ落ちてきて、瓦礫となってミルシェたちのいるフロアに降り注いだ。たいした大きさではなかったが、高さがある分の衝撃が粉塵を巻き上げる。そして、それは始まりに過ぎなかった。今にも崩れ落ちると言わんばかりに天井に巨大な亀裂が走ると、吹き抜けを縦貫してそれを支えていた四本の支柱が音を立てて軋み始めた。
 崩壊の前兆――
 唯一の結論が脳裏をよぎり、上層に行った者たちの姿を亀裂の先に幻視したミルシェは、粉塵の向こうから「あんたたちは先に脱出するんだ」と響いたドミニカの声を聞いた。
「上に行ったやつらは私が必ず連れ出してやる。崩れ始めたらあんたたち魔術師は邪魔になるから外で待ってな!」
「でも……!」
「ミルシェ、あんたが怪我したら他の誰がやつらを治療するんだ。ユージン、ミルシェを連れてさっさと行きな!」
「わかった! 必ず無事で帰ってきてくれ」
「あいにく、勝算のないことはやらない主義なんでね」
 ドミニカの声は笑っているように聞こえた。彼女が転送陣に消えるのを見送り、いっそう激しくなった震動の中でミルシェは祈った。皆が無事に帰れることを。
「バルバガン、きみも早く!」
 ユージンとミルシェが出口へと向かおうとしたにも関わらず、バルバガンはその場に仁王立ちしていた。ユージンが促しても動こうとしない。
「おまえたちは先に行け。俺はここでやつらを待つ」
「何を言ってるんだ。さあ――」
「悪いが、出口の確保はいつも俺の役割だ。全員が無事に帰れるようにな」
「バルバガン……」
「いざとなったら塔ごと俺が支えてやらぁ。だからさっさと行け、ユージン、ミルシェ!」
 ぐいと親指を立てた男の背中に決意を見て取り、二人は時間を無駄にすることをやめた。
「後で会おう、バルバガン」
「おう!」

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