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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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小説Fallout3 『じいさんとベルチバード』_04 

 第三章です。
 ぶっ倒れたウイリアムじいさんを、現実時間にして一週間ほどそのままにしてしまいましたが、物語時間ではその直後からです。
 まずは本編を。よろしくお願いします。



【三】



「ったく、無茶しやがって」
 倒れたウイリアムじいさんを担いで運び、ベッドに寝かせたのが二時間前。効くかどうかはわからなかったが、アランが持ち歩いているなけなしの抗生物質を無理矢理飲ませて眠らせると、じいさんの熱はようやく落ち着きを見せ始めた。
 調子が悪いのは腰だと思っていたら、無理がたたって熱を出していたらしい。
「風邪でもこじらせたらすぐにお迎えが来る歳なんだか、無茶しちゃダメだって……って、聞こえてないか」
 的外れな心配をしていた自分を笑うしかなかった。少しだけ感じた自責の念をごまかすために軽口を叩いてみるが、眠っているじいさんには聞こえるはずもない。
 それにしても。
 熱を出すまで《ベルチバード》の修理を続けたとして、いったい何があるというのだろうか。修理が終わったとして、それが空を飛んだとして、じいさんにいったい何が……。
 執着する理由をじいさんに聞いてみたことがあった。だがそのときは鼻息一つであしらわれてしまったので、アランはまだその理由を知らずにいる。言いたがらないことに執着する姿を重ね合わせれば、話す方にも聞く方にも楽しくない話なのだろうことは想像がつくが。
「じゃあ、俺は飯食ってくるから。ベッドまでの輸送費として今日はウイスキーもいただくよ」
 勝手に飲んだことを怒りたいなら、さっさと身体を治すことだな。
 胸中で続けて小さく笑うと、アランは部屋を出ようと立ち上がった。
「ロバート……」
「ん?」
 ドアの前まで来たところで、背後からじいさんの声が聞こえた。
 振り返ってみると、じいさんはまだ眠ったままのようだ。
「寝言かな?」
 いくらか落ち着いた姿を見つめ、とりあえず大丈夫そうだとわかれば、あのウイリアムじいさんが年相応に弱ってみせる姿だ。可笑しくも思えてくる。
「……で、ロバートって誰だ?」
 聞き慣れぬ名前に疑問が浮かんだが、腹の虫にせっつかれたアランはそのまま部屋を後にした。


 食事を軽く済ませ、ウイリアムじいさんが眠っていることを確認すると、アランはじいさんの部屋へと向かった。もちろん、報酬のウイスキーをいただくためだ。
 寝室とは別に、本や酒の類が並んだ部屋がじいさんの家にはある。工具類や整備関連の書籍、コンピュータ端末もあるこの部屋は、言ってみればじいさんの趣味の部屋だ。
 男の一人暮らしだから部屋はそれなりに散らかっている。いつもなら勝手に入れば怒られるだろうが、じいさんがあんな調子なら咎めようもない。禁止された部屋に入る行為に子供じみた楽しみを覚えつつ、アランはまっすぐウイスキーの瓶が並ぶ棚へ向かった。
 どれが一番高級なやつか。そんなことを考えながら物色しているアランの後ろで、雲が風に流れたのか、隠れていた月明かりが窓から差し込み始めていた。今夜は満月だ。
 物色を終えたアランが振り返ると、月明かりに照らされたテーブルに目に止まる。暗がりなら見落としていたかもしれない。偶然か必然か、月明かりに導かれて、アランはそこに見慣れぬものを見つけることになった。
 それは、何通かの手紙と一葉の写真だった。
 封筒から取り出されて無造作に置かれたそれは、保存状態から言ってもずいぶん前のものだろう。アランは何の気なしに近づいて、それを手に取った。
「……」
 写真には一人の青年が写っていた。初々しく敬礼してみせる青年の身体は、鋼鉄の鎧に覆われている。間違いなくそれは、エンクレイヴ兵が使うパワーアーマーだ。それを証明するように、青年の後ろには《ベルチバード》が鎮座している。
 青年と《ベルチバード》が写る写真。思わぬところでつながったじいさんと《ベルチバード》の関係にはっとしたアランは、慌てて写真の裏側を確かめた。
 そこには十年前の日付と、予想通り、「ロバート」の名が書き記されていた。写真に写る青年の姿から、彼の歳は今のアランとそう変わらないだろうとわかる。
「息子さん、かな」
 食事のときに飲んだビールが回ってきたのか、微かに感じる酔いがその推測を確かめたいという衝動を後押しする。子供じみた楽しさの後押しもあったのだろう。悪いとは思いつつもアランは手紙の一枚目に目を通した。
 ロバートは、やはりウイリアムじいさんの息子らしい。『父さんへ』で始まる文章からは、ウェイストランドの住人には珍しい、純粋さを持ち合わせた青年と思わせる人となりが読み取れた。
 どうやらエンクレイヴに入隊して間もない頃の手紙のようだ。
 新しい環境でも上手くやっている。訓練は厳しいけど今はもう慣れた。そんなありきたりな文面の合間から、エデン大統領が掲げた「秩序の回復」という大義名分を信じ、必ずウェイストランドに秩序を回復させるんだと意気込む姿が想像され、アランは複雑な思いでそれを読み続けた。
 エンクレイヴは、そんな集団じゃない。今なら誰もが知っていることだ。エンクレイヴにいたのであろうウイリアムじいさんにもそれはわかっていたはずで、『父さんの反対を押し切って』云々と書かれていれば、じいさんが入隊に反対したことも読み取れる。
 そして、じいさんはそんな息子さんを止めきれなかったのだろう。理想に燃える息子の目に負けたのか、あるいは喧嘩別れしたのか。結果、息子であるロバートはエンクレイヴの兵士となった。彼は今、いったいどうしているのだろうか。
 写真に写る青年の目を見つめ、自分の目はこんな風に理想に燃えてはいないだろうし、燃えていたことも無かっただろうと思ったアランは、青年の後ろに写る《ベルチバード》に何気なく視線を移した。
 写真はいくらか色褪せているが、まだ真新しいと思える機体には、エンクレイヴの徽章に並んで「X36」のナンバーが塗装されている。
「これって……!?」
 先ほどまでは見落としていた機体のナンバー。識別番号か何かだと思われるそれを見た瞬間、一機の《ベルチバード》の姿が脳裏をよぎり、アランは部屋を飛び出した。


 家の入り口をそのまま突っ切って外に出る。酔いを醒ますにはちょうど良いと思える夜風が頬を撫でたが、それを気にとめる余裕はなく、アランは家の横に鎮座する《ベルチバード》のもとへと急いだ。
「はぁ、はぁ……やっぱり」
 右翼のプロペラがひしゃげてしまった、それでも数年前に比べれば修復のはるかに進んだと知っているじいさんの《ベルチバード》。それには、アランの記憶どおり「X36」のナンバーがあった。
 剥げているのは風化の跡か、それとも戦闘の跡か。おそらく後者だと思える傷跡をアランは覚えている。
 その記憶を写真の《ベルチバード》に重ね、アランは二枚目の手紙に目を走らせた。
 二枚目の手紙には、パイロットに選ばれたことの報告が書かれていた。
『正直に言って、治安維持のためでも、相手がならず者のレイダー達であったとしても、人殺しはあまり気分が良くない。だから輸送機のパイロットになれたのは行幸なんだ』
 直接じゃないだけでやってることは一緒だけどね、と自嘲しながらも、パイロットに選ばれた喜びを表現する文言が二枚目の手紙には並んでいた。
 じいさんと《ベルチバード》を結ぶ一本の線がつながった。
 エンクレイヴで《ベルチバード》のパイロットをしていたというロバート。写真はおそらくこのときのものだろう。
 《ベルチバード》が起動したとき、じいさんは緑色のディスプレイの向こうに彼の姿を見ていたのだろうか。もしそうなら、ロバートはもう……。
 壊れた機体とじいさんの横顔から思い至る結論はそれほど多くはない。
 アランの推量を裏付けるように、ロバートの今を想像させるものが三枚目の手紙には書かれていた。
 そこに書かれていたのは、離脱するロバートの《ベルチバード》の眼下で、エンクレイヴが仕掛けた爆弾によって街が一つ消し飛ばされた様子だった。そして、二枚目までとは違う淡々と書かれた文面の最後に、それはあった。
 ロバートは《ベルチバード》を奪ってエンクレイヴから逃げる決意をしたと書いていた。偵察任務中に行方を暗ます、と。
 エンクレイヴを抜ける方法は他に無かったのだろうか。だが、希望に燃えていた分、ロバートの絶望は大きかったのだろう。それが、彼を追い込んだ。
 いや、本当に実行したのかはわからない。その前に、別の任務中に撃墜されたのかもしれない。
 そこまでの過程はわからないが、結果はアランの目の前に横たわっている。
 手紙には上手く逃げられたときに身を隠す場所も書いてある。ロバートはウイリアムじいさんが迎えに来てくれることを期待していたのかもしれない。場所は、アランがじいさんの家に向かうときに目印にする、丘の上のビル群を指していた。ここからすぐ近くだ。
 それらの決意さえも淡々と書かれていた。
 そして、この手紙の最後を締めくくっていたのは「ごめん、父さん」の一言だった。


 アランはじいさんが眠る部屋に戻った。
 ウイリアムじいさんの様態はすっかり落ち着いたようだった。
 じいさんはこの手紙をどうやって受け取ったのだろうか。エンクレイヴに出入りのある行商を伝ってか、それとも遺品として渡されたのか。どちらにせよ、じいさんは手紙を読んでここへ足を運び、そして墜落した《ベルチバード》を見つけたに違いない。
 あの《ベルチバード》を修理したからといって、ロバートが戻ってくるわけじゃない。それでも、じいさんを突き動かしたのは、ロバートへの思いだったのだろう。
 いっそ、この推測がてんで的外れで、たまたまアランの訪問時にロバートがいないだけだったら、とも思うが、家の様子を見ればじいさんが一人暮らしなのは言うまでもない。
 十年分の刻苦を刻んだ皺に沿って、じいさんの額を汗が伝う。汚れたタオルでそれを拭き取ってやると、じいさんは呻くように呟いた。
「ロバート……すまん……」
 無意識に伸ばされた手が虚空を掴む。
 帰らぬ息子までは届かない老いた手。
 目の前のそれを、アランはそっと握ってやった。
「帰ったよ、父さん」
 握りかえされる感触は弱々しく、だから、アランはその手を離せないでいた。
 窓の外では、夜陰に沈んでいた鈍色の獣が傷ついた身を月明かりの中に横たえている。
 虫が遠くに鳴いている。月のきれいな夜だった。



【小説Fallout3『じいさんとベルチバード』】
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 ありがとうございました。今回はここまでです。
 第四章があるので、もう一回だけ続けさせてください……。


 今回は短編なので、登場人物は少なめ、視点移動は無し、を心がけて書いているんですが、おかげでロバートの手紙が出しっぱなしになっていた理由のくだりは丸々カットすることに。長編ならだらだらと書きまくれるわけですが、いやはや、難しいですね。
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テーマ: 二次創作:小説

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