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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第一章 「運命の始まり」_12 

 葬儀も終わり、村は再び落ち着きを取り戻し始めていた。悲しんでいてもリュウカさんは喜ばないだろうことは、村人にも、そしてカペルにもわかっていた。当たり前に生きていくことが弔いにもなる。死者と生者の関係とは、そういうものなのかもしれない。
「わたし、そろそろ行きます」
 翌日、アーヤはみんなに告げた。
「もうすぐ封印軍との戦いが始まります。私、行かないと」
 封印軍が青龍の祠に来たときに、解放軍がブルガスに来て戦いの準備をしているという話を聞いた。ブルガスまでは歩いて一日か二日。急げば間に合うかもしれない。
「ルカ、ロカ、私行くね。封印軍なんて私が全部やっつけちゃうんだから」
 二人の頭を撫でながらアーヤは言った。
 それを聞いたルカとロカが目を輝かせている。まずい、あれは何かを企んでいるときの目だ。
「ボクたちも連れてって!」
「ワタシたちも戦う!」
「ええっ、何言ってるの!?」
 両手を突き上げて力強く言う二人とは対称的に、慌てたカペルは盛大に椅子からずり落ちた。
「奥さん、何とか言ってあげてくださいよ」
「カペルはボクたちが戦えるの知ってるだろ?」
「カペルなんかよりずっと役に立つんだから!」
「なんかって……」
 ロカの中での僕の評価ってどうなっているんだろうか……。
「あなたたち、戦いに行くということが、どういうことかわかって言ってるの?」
 奥さんが聞く。表情は真剣そのものだ。
「ボクたちだけじゃパパを守れなかった」
「封印軍はこんなこといっぱいやってるんでしょ、止めなきゃ!」
「だからシグムントのお手伝いをするんだ!」
「シグムントと一緒なら封印軍をやっつけられるもん!」
 守れなかった。その言葉がカペルの胸を締め付ける。目を見れば二人が本気なのはわかるし、月印があれば戦えるのも確かだろう。二人は二人なりに話し合ったのかもしれないが、それでもさすがにまずい。子供が解放軍に参加するということも、リュウカさんを失ったばかりの奥さんを一人にすることも。それに、リュウカさんを助けに行くときは、奥さんは子供たちを止めた。今回も許すことはないだろう、とカペルは思っていた。
「アーヤさん、もしよろしかったらシグムント卿に会わせてやってもらえないでしょうか」
「お、奥さん……?」
 想定外の言葉に、カペルは思わず一歩後ずさりをした。
「シグムント卿がダメだと仰ったら、そのまま帰らせてください。この子たちは、月の神の恩恵を十二分に受けています。二人でも大丈夫ですから」
「ちょ、正気ですか!?」
「……わかりました。二人は責任を持ってお預かりします」
「ア、アーヤまで!?」
「カペル、あなたはどうするの?」
「どうって……」
 自分が解放軍に参加するということを、カペルは考えたことがなかった。成り行きでここまで来て、そして封印軍と戦った。けれど僕はフルート吹きだ。戦士じゃない。フルート吹きが参加していったい何が出来るというのか。それに僕は……。
「カペル、一緒に行こうよ」
「わたしたち、もう仲間でしょ!」
 二人の真剣な目を見て、リュウカの姿と青龍の言葉が頭をよぎる。避けられない戦いというのは、やはり封印軍との戦いなんだろうか。いずれにせよ二人をアーヤだけに任せるのは気が引けたカペルは、とりあえず光の英雄に会うまでなら、と思い始めていた。
「仕方ないなぁ。僕も行くよ」
「カペル!」
「やったぁ!」
「またよろしくね」
 喜んでくれることは素直に嬉しいが、この二人が封印軍との戦いに身を投じると考えると気が重くもなる。双子と一緒になって両手を突き上げてみても、それは振り払えずに引っかかっているのが本音だ。
「……カペル、ありがと」
「うおー! ……ん? いやいや、実は興味があったんだよね、僕のそっくりさんってのにさ」
 それも本当だった。見間違うほど自分にそっくりな人、それがどういう人なのか知りたいという思いもある。
「逆でしょ! あんたが、シグムント様の、そっくりさんなのよ!」
「まあいいじゃない、どっちでも」
「よくないわよ」
「じゃあボク準備してくる!」
「ロカがお弁当作るー!」
 いずれにせよ、しばらく一人旅はお預けだ。旅が賑やかになるのも悪いものじゃない。
 




「もう少し時間がかかるみたいだね」
 帰ってくるなり、ユージンが言った。
「温和な方だとは聞いていたけど、これほどとはね。のんびり待っているってわけにもいかないんだけど……」
 憂鬱な表情とメガネを押し上げる仕草は、ユージンが難題を抱えているときに見せる癖だ。理知的な印象そのままに解放軍の参謀的役割を担う彼には、いつも諸侯との交渉を一任している。だが、このブルガスの王はどうも一筋縄ではいかないようだった。
「これだから政府は……。こうしてシグムント卿がいらしてるんだ。最優先で準備すべきでしょう! こうなったら俺たちだけでも!」
「エドくん、焦っても何も解決しないよ。我々だけで攻めても大軍に押し包まれるだけだ。ブルガス王の準備が整うまで、今は待とう。」
「しかし……」
 エドアルドは見るからに焦れていた。
 先の戦いで封印軍に敗れた後、解放軍は散り散りになった。それがブルガス王の厚意によって再起を図る事が出来るわけだが、その緒戦の準備が遅々として進まないのが現状だ。
 目標は、王都ブルガスよりルセ平原を挟んで東にある城塞、プレヴェン城。かつては王族の別邸として栄えたその城も、鎖を打ち込まれてからは封印軍の根拠地の一つとなっている。
「焦れるな、エドアルド」
「シグムント様……」
 封印軍によって月の鎖が打ち込まれた土地には災厄が降り注ぐ。生物はいなくなり、災害が頻発し、そしてモンスターが徘徊を始める。出来うるならば一刻も早く断ち切るべきだ。先の敗戦のことを踏まえれば、エドアルドの焦りも当然だろう。
 だが、解放軍のみでは封印軍の根拠地を叩くのは難しい。解放軍は寡兵だ。そもそもハルギータ女皇国の後ろ盾で動いていた解放軍は、ハルギータ以外では他国の軍と見なされる。鎖が世界中にあることを考えると大軍をもって動くわけにもいかず、こうしてその土地の政府に力添えを頼まざるを得ない。政府軍が封印軍をひきつけている間に、解放軍は鎖のもとへと向かう。そしてシグムントが鎖を断つ。辺境に打ち込まれた鎖ならともかく、今度のように敵の根拠地の一つとなると他に選択肢はない。
「ユージン。あとどれくらいかかる」
「一週間、ってところかな」
「わかった」
 大地と月を繋ぐ巨大な鎖が窓の向こうに見える。
 シグムントもまた、エドアルドと同様に焦れていた。

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