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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第二章 「鎖を斬る者たち」_02 

 ブルガス軍らしきいくつかの野営地を横目に、カペルたちが街道を行く。王都ブルガスに着いたのは、まだ日が傾く前のことだった。
 温暖な気候が紡ぐブルガスの四季と同じように、王都もまた、淡いが多彩な色合いに満ちている。白塗りの壁とそれにツタを匍わせた黄色い花。葉の生い茂った木々がのびのびと太陽の光を浴びていて、その向こうに見える城壁には、青を基調とするブルガスの旗が大きく飾られている。もうすぐ日が暮れ始めれば、この景観はオレンジに染められてまた別の顔を覗かせるのだろう。
 世界一豊かな国ブルガスの首都は、城外の喧噪とは裏腹に穏やかな日常を紡いでいた。
「おっきいねー」
「人がいっぱい!」
 石畳のメインストリートには商店が並び、住民や旅行客だけでなく、行商や傭兵といった手合いの姿も見える。それでも戦時の雰囲気をさして感じさせないのんびりさは、封印軍の脅威はまだそれほどでもないということなのだろうか。

「ユージンさん」
 知り合いなのか、宿の前に立っている男にアーヤが声をかけた。
「アーヤ君! 無事だったんだね」
「ええ。シグムント様は?」
「シグムントなら今は……!?」
 ユージンと呼ばれた男は、カペルを見て絶句した。
 カペルよりも一回り以上大柄ではあるが、眼鏡がそう思わせるのか、その体躯とは裏腹に知性的な印象の方が大きい。年齢はカペルよりも上のようで、カペルを見る前に浮かべていた微笑からも、大人の余裕というか、穏やかな人と思わせるものがある。背中にはかなり大きめのバックパックを背負っているが、あれには果たして何が入っているのか……。
「詳しいことはシグムント様と一緒に」
「あ、ああ、そうだね」

 反応は一様だった。僕を見た人たちも、そして僕自身も。
 光の英雄がどの人なのかと迷う必要がなかった。服装と髪型が違うだけで、僕と瓜二つの人が目の前に立っていたからだ。あれが光の英雄……本当にそっくりだ。
「アーヤ君。説明してくれるかな」
「はい」
 アーヤは僕を助けたところから話し始めた。僕が光の英雄と間違われて封印軍に囚われていたこと。それを助けるためにアーヤが牢に潜入したこと。怪我をしたアーヤを僕がモンタナ村まで運んだこと。モンタナ村に封印軍が現れたこと。
「仮面と鎖……それって」
「おそらく、闇公子レオニード」
 アーヤが答えると、一瞬全員に緊張が走るのがわかった。
 特に、身の丈ほどもある大剣を背負った男はきつく両の手を握りしめていてわかりやすい。黒髪に碧眼。整った顔立ちと、瞳に合わせたようにブルーで統一された服装。それらから感じられるクールさと異なり、レオニードの名前一つで感情が昂ぶっているのが見て取れる。
 彼らの表情に封印軍の首魁の姿が重なり、その威圧感を思い出したカペルには緊迫した空気も仕方ないと思えた。出来れば出会いたくなかった。出くわしたことを不運というべきか、そこから生きて帰れたことを幸運と呼ぶべきか。
「いったいなぜそんなところに……どう思う、シグムント?」
 心配そうに問うユージンに、シグムントは顔色一つ変えずに答える。
「今はプレヴェン城の鎖に集中しろ。それが終わってから考えればいい」
 その一言で不安に押し包まれていた皆の表情が別のものに変わる。一言で場の空気を引き締めてしまうリーダーっぷりに、やはり自分とは違うんだなとカペルは痛感せざるをえなかった。同年代のそっくりさんでこうも違うものかと、身の不甲斐なさを嘆くしかない。
「……うん、そうだね。そうしよう。カペル君、だっけ? 君も一緒に来てくれるかな」
「あ、はっ、はい」
 流されるまま、カペルは即答していた。
 また安請け合いしてしまった……。
「がーっはっはっはー! なんだぁ? しけた面並べやがって」
「バルバガン、遅いぞ」
 遅れてやってきたのは、筋肉が鎧代わりだと言わんばかりの大男だ。全身に見られる傷跡は歴戦の兵士を印象づけるに十分で、カペルの腿より太そうな左腕には月印とおぼしき刻印も見える。何よりも印象的なのは、その巨体に負けない大きさの戦斧だ。身長よりも長い柄に、その半分にも及ぶ巨大な刃。常人に振り回せるものではないことは明白ではあるが、その隆起する筋肉であれば、と思わせるほどに彼にはお似合いの武器とも思える。
 荒々しい雰囲気ではあるが妙にきれいな目をしているその男もまた、カペルを見るなり皆と同じ反応を示す。
「すまんすまん……ん、シグムントが二人!?」
「後で僕から説明するよ。もうすぐ約束の刻限だ。さあ行こう」
「……まあ、それはいいけどよ。ところで、あのチビたちはなんだ?」
 ユージンが促すのには答えず、バルバガンはルカとロカを見て言った。
「それも私から説明します」
 再びアーヤは説明を始めた。
 シグムントの表情は変わらないが、ユージンの顔には憂いが浮かんでいた。大剣の男の態度には苛立ちがはっきりと見て取れる。バルバガンは腕を組んで目を瞑ったまま、何も言わず聞いているだけ。おそらく二人の同行は断られるだろう。それが常識というものだ。
「アーヤ、君に任せる」
「ありがとうございます!」
「ええっ!? ちょ、そんなあっさりと……いいんですか?」
「かまわん」
 それだけ言うと、シグムントはカペルに背を向けて足を進めた。ユージンたちも同じように歩き出す。今から城に用事があるらしい。
 その中で一人足を止めた大剣の男が、こちらを睨め据えて言った。
「おまえが連れてきたんだろう?」
「それはそうだけど……」
「何よ、エド。シグムント様がいいって仰ったのよ。文句あるわけ?」
 突っかかってきた大剣の男――エドアルドに、逆にアーヤが突っかかる。それを「ふん」と鼻であしらった彼は、もう一度こちらを睨むと踵を返して行ってしまった。
「もう、感じ悪いわね。ごめんね、カペル」
「う、うん……」
 エドアルドにとって僕の第一印象は最悪だったようだ。身に覚えのないことで怒られても対処のしようがないと思いつつ、嫌われるのはいつものことと、カペルはそのやるせなさを慣れた手順で処理した。
「それはそうとさ」
「何?」
「ちょっと怖い人だね。シグムントさん」
「そう?」
 ユージンとバルバガンはともかく、エドアルドとシグムントはどうも取っつきにくい印象だった。しばらくは一緒にいることになってしまったわけだけど、これから自分はうまくやっていけるのか……。
 少し気が重くなったカペルの顔を覗き込むと、アーヤがにやりといじわるな笑みを浮かべる。
「誰かさんと違ってヘラヘラしてないからそう見えるんじゃない? 並んでみたら、ほら。やっぱり全然違うじゃない」
 アーヤが僕とシグムントさんを見間違えたことを、以前からかったことがある。それをまだ根に持ってるのか、アーヤは挑発するようにそう言った。
「僕だっていつもヘラヘラしているわけじゃないよ、ほら」
 そう反論して、カペルはシグムントの顔を真似てみた。顎を引き、口を固く結び、視線は遠く、明日を見据えるように。
 それを見たルカとロカ、それにアーヤが盛大に笑い出す。
「カペル、変なかおー」
「似合わないよー」
「ほんとに似合わないわね」
「ひどいなぁ。僕だって傷ついちゃうよ……」
「あはは、ごめん。でも、カペルはちょっとヘラヘラしてるくらいでいいんじゃないかな」
「アーヤはそっちの方が好み?」
「そ、そういうこと言ってるわけじゃないでしょ、バカ!」


 新入りたちの談笑を見やりながら、エドアルドは痛む頭を押さえた。
「はぁ……なんて緊張感のないやつらなんだ。もうすぐ戦が始まるっていうのに」
「まぁいいじゃないか、エド君。たまにはさ」
「ユージンさんまで……俺は反対ですよ。ガキも、あんなヘラヘラしたやつも、連れて行く必要なんてないでしょ」
「シグムントが連れて行くと言ったんだ。僕らはそれに従うだけさ」
「わっはっはっ、そうだぞ。だいたい、子供の一人や二人いた方が賑やかでいいだろうが」
「うるさい、バルバガン! そういう問題じゃないだろ。ったく……」
 どうしてシグムント様は……。まあいい。シグムント様は俺がお守りするだけだ。そう堅く胸に誓うことで、エドアルドはなんとか平静を保とうとした。

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