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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第五章 「心の壁、心の闇」_02 

 港町の匂いは他のどんな街よりも独特だ。
 潮風に導かれるように入り口からまっすぐ進めば、街の中央にある広場に到着する。その向こう、北側には定期船が係留する港と倉庫群が並び、足を運べば潮の香りが密度を増し始めるだろう。広場の周辺には宿や酒場が並び、取れたての魚介類を中心に生鮮食品を商う露店から、客を呼び込む声が途切れなく聞こえてくる。
 はずだった。
 海運の拠点の一つであるはずの港町が、このときは沈みに沈んでいた。厚い雲がでているわけでもないのに、街全体が色褪せて見える。露店は開いておらず、行き交う人々の顔も一様に暗かったが、その理由が月の鎖にあることは想像に難くなかった。
「いったい何があった?」
 エドアルドが住民の一人に呼びかけた。
「ん、ああ。鎖がな」
 力ない視線を海岸線の方へと向け、住民は続ける。
「あれが打ち込まれちまってからは海が荒れてな。まともに漁も出来ないし、定期船も入ってこなくなった。オラデアにはモンスターが出て、陸路も機能していない。気分は陸の孤島だよ、まったく……ん?」
 そこまで言った住民の視線がふいにカペルのところで止まり、重苦しい表情が一変する。
「お、おい、あんた!」
「ぼく?」
「もしかして光の英雄シグムントじゃないか!? ってことはあんたたち、解放軍なのか?」
 そう問われ、カペルは気持ちだけあごを引いて答えた。
「そうです。僕が光の英雄です……いてっ」
 横に並んでいたアーヤに唐突に足を踏み抜かれ、カペルは小さく悲鳴を漏らした。腕をぐいと引かれて顔を寄せると、アーヤが小声で怒鳴りつけてくる。
「ちょっとカペル! シグムント様が自分で『光の英雄です』なんて言うわけないでしょ!!」
「そうなの?」
「そうよ!」
 どうやらまたミスをしてしまったらしい。ヴェスプレームの塔からフェイエールに帰還したときもそうだった。迎えに出てきていた親衛隊との応対を上手くやれず、あのときはユージンさんに庇ってもらったのだ。
 そのやり取りを見ていた住民が怪訝そうな顔を浮かべ、「……本当に解放軍なのか?」と問うので、カペルとアーヤは慌てて取り繕うとした。しかし上手く言葉にならない。
 まずい、と思ったのも一瞬、
「安心しろ」
 とタイミング良くエドアルドがカペルと住民の間に割って入り、こう告げた。
「あの月の鎖はわれわれ解放軍が切って捨てる。住民はそれまで慌てずに避難してくれていればいい」
 その力強い声は、歴戦の戦士たち、解放軍というイメージに遜色ない貫禄があった。それで信用したのか、集まってきていた住民から歓声が上がる。
 怪訝そうにしていた住民も同様で、カペルに向かって、正確には、光の英雄に向かって言う。
「それじゃあ、まずは宿屋に案内させてもらうよ。そこで話をさせてくれ」
「あ、ありがとうございます」
 もう一度あごを引いて、できるだけ低い声で答えてみる。
 横でアーヤが頭を押さえているのが見えた。これもまずかった?

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