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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第五章 「心の壁、心の闇」_03 

 住民の話によれば、月の鎖が打ち込まれたのはショプロン村の鎖より前のようだった。対応に追われていたことと、オラデアのモンスターが凶暴化していたことがあって、フェイエールの方まで連絡する余裕が無かったらしい。
 月の鎖が打ち込まれた場所は、ザラの北西の外れ、岸壁に穿たれた空洞を抜けた先にある海岸線ということだ。モンスターが出るようになってしまってからは村人は誰も近づいていないという話で、今、そこがどうなっているかはわからない。
 月の鎖を打ち込まれてからは海が荒れてしまって、定期船はおろか、主産業である漁業もままならない状況らしく、一刻も早く斬って欲しいと言う住民に「すぐに向かう」と答えたカペルたちは、旅装を解いて準備に取りかかっていた。
「カペル、おまえはもう喋るな」
 抜き身にした剣の状態を確かめつつ、エドアルドがこちらを見ようともせずに言った。
「えっ?」
「おまえが喋るとボロが出る。黙って後ろからついてくればいい。おまえは飾りだ」
「……でもシグムントさんの代わりに月の鎖も斬らなきゃいけないし、そういうわけにも――」
 カペルがそう言うと、大剣をしまったエドアルドが目の色を変えて詰め寄ってきた。突き刺さる視線にどうしていいかわからず、あたふたするしかなかったカペルの胸ぐらを掴むと、エドアルドはカペルをそのまま壁に押しつけた。
 自分の身長ほどもある大剣を振り回すエドアルドの膂力に、カペルには首が絞まるのに抵抗するすべがない。
 そして、エドアルドは吐き捨てるように言った。
「おまえが……おまえなんかが、シグムント様の代わりだと!? ふざけるな!!」
「エド……アルド……苦しいよ……」
「言っただろう? おまえは飾りだ。鎖を斬るだけの人形なんだ。勘違いするな」
 足が少し浮いている。絞まる首の奥、潰された喉からかろうじて絞り出した声も届かず、エドアルドに力任せに持ち上げられる。彼の手に月印が微かに光るのが見えたが、カペルはその色に漠然とした違和感を感じたような気がした。
「それくらいにしておけ、エドアルド」
 そう言ってドミニカがエドアルドの肩を掴んだが、エドアルドの視線はカペルに突き刺さりっぱなしだった。
「……ふん」
 そしてエドアルドは手を離した。崩れ落ちたカペルを一瞥するでもなく、愛用の剣を担ぎ上げるとつかつかと出口へと向かう。
「さあ、行くぞ。さっさと準備しろ」
 そう言って一人で出て行ってしまった。
 カペルを支えながら、アーヤがドアの方を睨みつけて言った。
「ちょっと、何なのよ、あれ! シグムント様がいなくなったからってリーダー気取り?」
「まあまあ、アーヤさん。そうぷりぷりしないで」
「なんで私がカペルにになだめられなきゃいけないのよ! カペル、あんたもなんとか言ってやりなさいよ!」
 シグムントの代わりをやると言っても、それは鎖を斬る役割であって、自分が解放軍のリーダーになるなんて思ったこともない。だいたい、リーダーなんて柄じゃないのは自分が一番わかっている。だから、エドアルドがリーダーをやりたがっているのならそれでいい、とカペルは思っていた。
 まあ、命令するにしても、もう少し言い方ってものがあるとも思うけれど……。
「とにかく、さっさと鎖を斬ってしまおう。エドくんのことはその後、だね」
 ユージンがさっと場をまとめてしまったので、アーヤは怒りのやり場に困っているようだった。
 エドアルドは怒っている。
 でも、それが自分に向けられたものだけではないような気もする。エドアルドが怒っているのは、半分は自分自身にだ。大切な誰かを守れなかった自分自身に。その原因を作ったのはカペル自身で、その自覚があるからか、アーヤのように、エドアルドの怒りを理不尽なものと片付けることは、カペルには出来なかった。

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