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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第六章 「発病」_02 

 錨が降ろされる鈍い音が止まり、舫いが結ばれ、橋がかけられる。
 船を下り、船員たちが係留後の作業に追われているのを背にして、カペルはファイーナたちと別れの挨拶を済ませていた。彼女はさっそく行商としての仕事があるそうだ。弟と二人、きちんと仕事をこなしている姿は、出会った頃の弱々しい印象を覆すに十分だった。
「じゃあ、また」
「はい。カペルさんたちは、次はハルギータへ行かれるんでしたっけ?」
「そうだよ」
「じゃあ、また会えるかもしれませんね」
 屈託のない笑みに、一瞬どきりとしてしまう。
 新月の民が旅をするというのは、いくら長年の知恵があるからといっても安全とは言えない。商談の方も含め、とにかく二人には無事でいてほしい。同じ新月の民であるせいか、それとも彼女たちの醸す空気がそう思わせるのか、カペルは二人との時間に不思議な安らぎを感じていた。
「では」
「あ、ファイーナさん」
「はい?」
「覚えてるよね、約束。確か何でも――」
 背中に突き刺さる視線に、一瞬どきりとしてしまう。
 アーヤの睨みは後ろからでもはっきりとわかるから不思議だった。
「ふふ。覚えてますよ。じゃあまた」
「バイバイ、カペル兄ちゃん」
「またね、レイム」
 手を取り合いながら歩く姉弟の姿が、ケルンテンの雑踏の中に消えていく。貨物の積み卸しで港は喧噪に満ちているのに、どこか寂しげな空気がこの街には漂っている。二人がそこに消え入りそうな印象が脳裏をよぎり、ザラで見た夢のせいで変に気分が出ちゃってるのかな、とカペルは頬を掻いた。
 二人の背中が見えなくなると、アーヤが隣にやって来て言った。
「ファイーナさんたち、大丈夫かしら」
「心配なら直接言えばいいのに」
「うるさい」
「大丈夫だよ、きっと」
「そうね……。さあ、私たちもがんばらないと」
 月の鎖を斬ってしまえば、天災に見舞われることも減るし、モンスターに襲われることも無くなっていくだろう。そういった負の状況に直面して一番困るのは、力のない新月の民であることは疑いない。それがわかっているから、アーヤも心配なのだ。次の目標となる鎖はまだ決まっていないが、早く斬るに越したことはない。戦いになるのは嫌だけど……。
「カペルくん、アーヤくん。そろそろ行くよ」
 ユージンに呼ばれる。当面の目的地はケルンテンの宿屋だ。

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