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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第六章 「発病」_03 

 ケルンテンの街並みはフェイエールのそれと対称的だ。
 過酷な環境には変わりないが、ケルンテンの過酷さは寒さにある。鈍色の雲と降り積もる雪。肌を凍てつかせる冷気が切るような風にのって押し通り、カペルは思わず自分の腕を抱いて身を震わせた。
 積雪対策の尖った屋根が林立する様は、肌を切る冷たい風と相まって、神殿めいた荘厳な印象と同時にどこか近寄りがたい印象を見るものに与える。それは住民の印象とも重なり、開放的だったフェイエールや牧歌的なブルガスのそれとも異なる、都会の匂いがこの街にはあった。
「ずいぶん寂れているな……」
 崩れ落ちたままにされた石像の残骸を横目にエドアルドが言う。
 同意見だった。
 この生気が抜け落ちたような印象は、いったいどこからやってくるのだろうか。凍てつく寒さから、とは少し違うような気がする。どこかで感じたことがあるような気もするが、はっきりとは思い出せない。
 漫然とした思考に気を取られ、前方を確認していなかったカペルが悪い。不注意から、すれ違おうとした少年とぶつかってしまった。
 こけてしまった少年を起こそうと手を伸ばすと、
「大丈夫?」
「気をつけろよな!」
 その手を少年にはたき落とされた。
「ごめんなさい」
 カペルが謝ると、少年は少し意外そうな顔を見せた。そしてにやりと笑ったかと思うと、猫を思わせるしなやかさで立ち上がるなり走り出した。
 まるで逃げるように。
 一応、謝りはしたし、それに相手が答える気がないのならそれでもいい。あっけにとられながらもそう思ったカペルがその背を見遣っていると、すれ違いざまにドミニカが少年をつまみ上げた。やっぱり猫みたいだ。
「何するんだよ!」
「返すものがあるだろう?」
「ね、ねーよ、そんなもん!」
 余裕の笑みを浮かべると、ドミニカはカペルの方を見て言った。
「ぼうや、懐が寂しくないかい?」
「えっ……、ああ、財布がない!」
「し、知らねえよ!」
 そう言いながらも慌ててしまったのだろう。少年の手元からぽろりと何かがこぼれ落ちる。
「あっ、それ僕の」
「……」
「ちょっと宿まで一緒に来てもらおうか」
 確かな物証に観念したのか、少年はドミニカの言葉にうなだれたまま頷いた。

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