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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第六章 「発病」_04 

 国家としての交流もほとんど無かったから、アーヤがケルンテンに来るのは初めてだった。
 フェイエールの生活はひたすら暑さと乾きとの戦いだったけれど、ここは真逆だ。
 宿の部屋には暖炉があった。スリの少年のことがあるものの、アーヤは我慢できずに暖炉の前に陣取ってしまう。もっと厚着をしてくればよかった……。
 隣にはカペル。
 財布を盗まれた張本人だというのに、何故かのほほんと暖を取っている。何度怒ってもこの緊張感の無さはどうしようもないらしく、ドミニカが「どうするんだい?」と尋ねるのにも「まあ、いいんじゃない。財布は返してもらったわけだし」なんて答える調子なのだから、怒る気も失せてしまう。
 まあ、それがカペルのいいところでもあるんだけど……。
 だから、ちょっと茶化してやりたくなったりもする。
「大して入ってないしね」
「ひどいなー、アーヤ」
 口を尖らせる様子はまるで子供だ。見た目はシグムント様とそっくりだというのに、何だかそのギャップがおもしろい。
「あんたたち、もしかして解放軍かい?」
 スリの少年が唐突に言った。
「そうだよ」
「カペル!」
 何も考えずにカペルがカペルのまま答えてしまう。あれほど口を酸っぱくして「あなたは光の英雄だ」と言っているのに……。慌てて顎を引いて言い直しているが、
「そ、そうだよ」
 貫禄も何もあったものじゃない。フォローするとは言ったけれど、先を思うと頭が痛かった。
「はぁ……」
「ふーん、なんだか事情がありそうだね。光の英雄も聞いてた印象とは少し違う気がするし」
「ぎく……」
「で、ケルンテンにはどういう理由で来たんだい? 今ケルンテンには月の鎖はないはずだけど。そうすると、もしかしてハルギータにでも行くのかい? それともカサンドラの方かな。たしかあっちにも月の鎖があったはず。でも今はカサンドラ方面の道は通れなかったような……」
 まくし立てるように言う少年の目がやたらと輝いて見え、アーヤはそれに少し気圧されてしまう。
「ず、ずいぶん詳しいのね」
「おいら、情報屋だからね」
「スリじゃなくて?」
「そっちは副業だよ、副業」
「……副業でもどうかと思うけど」
「で、どっちに行くんだい? ハルギータ? それともカサンドラ?」
「ハルギータだよ」
 またカペルがしれっと言ってしまった。それにアーヤが突っ込むよりも早く、少年が身を乗り出した。
「じゃあコバスナ大森林を通るんだよね。それならおいらもついて行くよ」
「えっ?」
「コバスナ大森林を通るなら道案内が必要だろ」
「大丈夫よ、ハルギータ出身の人もいるから」
「大丈夫なもんか。最近のコバスナは少しおかしいんだ。一ヶ月もすれば森の様相は一変する。最新の情報を持っている道案内がいなけりゃ、迷ってのたれ死ぬのが落ちさ」
 コバスナ大森林は、世界最大の樹海だ。その深奥に建設された城塞都市がハルギータで、たどり着くためには必ずコバスナ大森林を抜けなければならない。
 迷路のように入り組んだ構造は、戦時においては守るに適した天然の要塞となるが、平時は交通の妨げ以外のなにものでもなくなってしまう。そんな樹海が今、不気味な変化を見せていると少年は言っている。
 やはり月の鎖の影響なのかしら……。
「ふーん、そうなんだ」
 そんなアーヤの心配もよそに、カペルは暢気なものだ。
「兄貴―、緊張感無いなぁ……」
「よく言われます」
 こればっかりは少年の意見にまったく同意見。のんびりしたカペルの受け答えに、頭をもたげた緊張感も霧散してしまう。エドなんかはもう話も聞かずに窓の外ばかり見ている。ちょっときつくあたりすぎたかもしれない、とそれを見たアーヤの胸がちくりと痛んだ。
「おいら、ヴィーカってんだ。よろしくな」
「でもどうして僕たちに協力を?」
 にやりと笑ったヴィーカが全員を舐めるように見回す。そして人差し指をピンと立てて言った。
「兄貴たちからは金の匂いがする。おいらの鼻がそう言っているんだ」
「金、ね……」
「兄貴の財布には期待してないよ、へへへ」
 カペルが胸のポケットに入れた財布を隠そうとすると、ヴィーカは無邪気に笑ってそう答えた。
 悪い子ではなさそうだ、と思える笑顔だった。被害者本人がいいと言っているし、それどころか兄貴と呼ばれるほどになつかれている。道案内が必要ならこの子でもいいのかもしれない。
「いずれにせよ、コバスナがそんな状態なら、まずはここで情報収集をしよう。それでいいね」
 ユージンが言うと、皆が頷いた。
「情報収集ならおいらに任せておきなよ!」
 そして、小さな胸をそらせてヴィーカが言った直後だった。
「キャアアアア!!」
 窓の外から悲鳴が飛び込んでくる。
「なんだ!?」
 窓のところにいたエドアルドが身を乗り出して外を見る。同時に何かが崩れ落ちる音が聞こえた。
 事故かモンスターか、それとも封印軍の襲撃か。
「おいら、ちょっと見てくるよ!」
 ヴィーカが真っ先に飛び出していった。ほかのみんなもそれに続く。
「カペル、私たちも行くわよ」
「えっ、僕も行くの?」
「当たり前でしょ!」

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