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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第二章 「鎖を斬る者たち」_03 

 数日後、出発の時がやって来た。結局カペルは解放軍に同行してプレヴェン城攻略に参加することになった。内心では逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、言ったところでアーヤがそれを許すはずもなく……。
 ブルガス軍本隊とは別行動となる解放軍の面々は、宿の前に集合していた。まだ来ていないのはシグムントとエドアルドだけだ。街は朝靄が立ちこめる早暁。メインストリートにもほとんど人影はない。そんな時だった。
「シグムントさまぁ~」
 丸く甘ったるい声がしてカペルが振り返ると、華奢な人影が一つ、その胸に飛び込んできた。
「わっ、わっ!」
「置いていくなんてひどいです。ケルンテンから追いかけてくるの、大変だったんだから」
 鼻をくすぐる甘い香りは香水のものか。胸の中に沈むのは、カペルには見覚えのない女性だった。視線を下に移せば、あらわになった鎖骨が艶めかしく朝日を反射し、さらにその下では自分と彼女を繋ぐ双丘が深淵なる谷を形成している。点から広がったその設置面は、人間の身体の柔らかさ、その限界の向こう側をカペルに教えるとともに、柔らかさに相反するはずの弾力をもって今にも二人を引き裂こうとしているかのように――
「――ル、カペル!」
「は、はい!」
「あんた、何デレデレしてるのよ!」
 ぷりぷりと怒りだしたアーヤが引き離そうとするが、それをものともせずに女性はカペルの首に腕を回す。
「ちょっと、嫌がってるでしょ、離れなさいよ!」
「別に嫌がってるようには見えないわよぉ、ねえ?」
「は、はい!」
「カペル!!」
 アーヤの努力もむなしく、女性の腕は離れる気配を見せない。とにかく柔らかく絡みついてくる。こんなの、初めて……。
「ん? ミルシェ……ミルシェじゃないか!」
 こちらの騒ぎに気づいたユージンが来て、驚きの声を上げた。
「あら、ユージン君。お久しぶり」
「そうか、追いかけてきてしまったのか……」
 かちゃりと眼鏡を押し上げ、明らかに残念そうな表情をユージンは見せたが、ミルシェは意に介していないようだ。
「ユージンさんのお知り合いなんですか?」
「ああ、その人はミルシェと言ってね。ケルンテンで――」
「どうした」
 遅れてシグムントとエドアルドがやってきた。
「あれ? シグムント様が……二人?」
 彼女もまた同様だ。二人のシグムントを眼前にして、目を丸くしている。
「だから言ってるでしょ。それはカペルで、あっちがシグムント様!」
「……」
 アーヤの指摘にもきょとんとしたまま、ミルシェは二人を見比べる。
「あは、あははは……」
「ミルシェか、久しいな」
 ミルシェは抱きついていた方を無残にも突き飛ばし、もう一方の胸へと飛び込んでいった。
 名残惜しい。が、無意識に伸ばした手は彼女には届かず、すっかり弛緩した身体はふらふらとよろめくばかりだが、カペルは何とか体勢を立て直した。その足をアーヤが思い切り踏み抜いた。
「痛っ!」
「ふん!」

 細身でありながら出るところはきっちりと出ている彼女の肢体は、抱きつかれるまでもなく抜群だと判断できる。胸元まであらわになったドレスがそれを強調しているが、誇るような素振りのないのがカペルには好印象だった。ゆるいウェーブのかかった髪の上にヘアバンドとちょこんと乗せた眼鏡。手には人を撲殺できそうなくらい分厚い本。ミルシェさんも解放軍の一員なんだろうか……。
 抱きつかれるままにしているシグムントが、ミルシェの頭越しにユージンを見やる。責めるようなその視線を受けて、ユージンは頭を掻きながら苦笑した。
「あれはミルシェといってね。ケルンテンで解放軍に加わった治癒術士なんだ。まぁ、その……、こんな感じの人なんでいろいろあってね。僕の判断で置いてきたんだけど」
「ミルシェ、これからプレヴェン城の攻略に向かう。ついてこい」
「もちろん! シグムント様もみなさんも、怪我をしたらすぐに私に言ってね」
 魅力的な女性のウインクは、男にとってチャームの魔法と同義だ。それを実証するミルシェに、カペルは顔の筋肉という筋肉を弛緩させる。
 カペルは再び足を踏み抜かれた。

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