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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第六章 「発病」_14 

「さむっ……」
 思わず身体が震え、アーヤは自分の腕を抱いて白い息を吐いた。
「もう少し厚着したほうが良かったかな」
 フェイエールで育ったアーヤにとって、防寒のために服を着るというのは思考の外だった。月印を使えばある程度は調整できるし、何より今の格好が動きやすくて好きなのだ。
 そんなアーヤでさえ厚着したくなるほどに、今夜のケルンテンは寒かった。
「どうですか、ケーキ作り」
 ふいに声をかけられ、アーヤはそちらに視線をやった。そこにはファイーナが一人で立っていた。手袋に包まれた手には買い物袋。マフラーに顔をうずめ、もこもことした耳当ての後ろで一つに結った栗色の髪が揺れている。
 女の自分から見ても、思わずドキリとしてしまいそうなほどにかわいかった。
「まあまあね。ファイーナさんは?」
 それを悟られぬように、腕をこすりながらアーヤは言う。
「まあまあです、私も」
 さっきのカペルとのことが思い出されて、なんだかアーヤはちょっと気まずい。そんな微妙な沈黙を払ったのは、ファイーナだった。
「あの……、コンテストが終わったら、私とアーヤさんの作品、交換しませんか?」
「えっ?」
「アーヤさんの作るケーキ、食べてみたいです」
「べ、別にいいけど」
 ファイーナの紅潮した頬が屈託のない笑みを浮かべるの見、胸がきゅっと締まるのをアーヤは感じた。
 思えば、ファイーナさんと違って私はいつもカペルと一緒にいる。それは封印軍との戦いがあるのだから仕方ないけれど、彼女のことを思えば、少しずるい気もする。だから……
「……うん、私もファイーナさんの、食べてみたい」
「でも負けませんから」
「私も負けないわ」
 ファイーナの笑顔につられてアーヤも笑う。自然と口をついた言葉が、心のもやもやを払ってくれる感覚にアーヤは少し驚いた。
 ファイーナさんとはきっと仲良くなれる気がする、とアーヤはふと思った。
 王族として過ごしてきたアーヤにとって、心を許せる同年代の女友達というのは、手に入れたいものでもあり、手に入らないものでもあった。感情をぶつけ合える相手なんて、カペルと出会うまではドミニカくらいしかいなくて、たぶん、同年代ではファイーナさんが二人目。
 だから、彼女ならきっと……。
「気をつけて帰ってね、ファイーナさん」
「アーヤさんも風邪を引かないでくださいね」
 それで、ファイーナは自分の宿に帰っていった。
「負けられないなぁ……」
 ファイーナの背中を見送りながら、アーヤは凪いだ心の内に語りかけた。
 彼女の姿を隠すように、ケルンテンの街には雪が降り始めていた。

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