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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第六章 「発病」_16 

 エドアルドの容態はいっこうに良くならない。それどころか原因さえもはっきりしないのだ。ミルシェやユージンが治療を試みるも、月印による治癒術を受けるたびにエドアルドは苦しみだしてしまう。エドアルドの月印が鈍く光っていて、どうもそれが原因なのだろうことは想像できるのだが。
「カペルくん、どうだった?」
 カペルはケルンテンの医者を手当たり次第に回って、エドアルドの症状について尋ねてきた。だが、
「どのお医者さんも『わからない』の一点張りですね」
「そうか……」
 結局、詳しいことは何もわからなかった。すでに日は暮れてしまっていて、最後の方は露骨に嫌な顔をされたものだ。
 そこに、バンと派手な音を立てながらドアを開けて、アーヤが帰ってきた。彼女はフェイエールの王族なので、ケルンテンの王城に協力を願いに行ってくれたのだが、
「なによ、あの態度!」
「どうしたの?」
「『我々けるんてん政府ハ解放軍ノ協力ヲ必要トシテイナイ。ヨッテ、我々ハ解放軍ニ協力スルツモリハナイ』ですって! 私はフェイエールの王族よ。それを門前払いって……もっと上に照会するくらいしなさいよね、あのハイネイル!」
 どうやら断られたらしい。
「そうなると、手がかりをケルンテンで見つけるのは難しそうだね」
 ユージンの一言に場の空気が沈む。
 治療できないためにミルシェさんが落ち込んでいる。ドミニカさんは黙ってエドアルドの様子を見ているが、今回はいつものように助言をしてくれない。やはり彼女にもわからないことはあるらしい。
「どうしたんだ、兄貴?」
 ヴィーカがやってきた。だが、入って来るなり重い空気を感じ取ったのだろう。心配そうにカペルに問いかけてくる。
「エドアルドがね」
 そう言ってエドアルドを指差すと、ヴィーカはその姿を見てはっとしたようだった。カペルが状況を説明してあげたが、エドアルドのことが心配なのか、いつもの得意げな表情はなりを潜めてしまっている。
 だが、説明が終わるとヴィーカの表情はいつものように変わり、そして、彼らしい表情を浮かべながら人差し指をピンと立てて言った。
「こんな不親切な街にいても原因はわからないよ。調べたきゃハルギータに行くしかないね」
「ハルギータ?」
「月印が関係してそうなんだろ? だったらハルギータさ。あそこは月印の研究が進んでいるって話だし」
「でも、連れて行ける状態じゃないし……」
「私が残るわ」
 ミルシェが言った。
「治癒術が効果無くても介護くらいはできるわ。医術の心得だってちゃんとあるから」
「ミルシェさんがついていてくれるなら安心です」
 治癒術が効かないとしても、病人のそばにおいておくならやはりミルシェだろう。美人がそばにいてくれる方がエドアルドも嬉しいに決まっている。きっとそうだ。
「私も残ろう」
 一人納得していたカペルは、黙っていたドミニカが突然そう言ったことが少し意外だった。
「ドミニカさん?」
「またあの透明の騎士が現れるかもしれないだろう。そんな場所に病気のエドアルドとミルシェだけを残していくのは少し不安だからね。また透明のまま現れたらあれだけど、見えない敵なら見えないなりに戦い方ってのもあるかもしれない。そういう戦いもちょっとおもしろそうだしな」
「おもしろそう、ですか」
 さすがは戦闘狂……、もとい、プロの傭兵だ。
「それに、だからといって坊やがハルギータに行かないわけにはいかないだろう。ハルギータはシグムントの故郷でもあるわけだからな」
 介護役としてミルシェが最適なのと同じように、ドミニカが残ってくれれば、護衛としてこれ以上頼もしい人はいない。それに、アーヤのそばを離れてまでドミニカが残ると言ったのだ。何か考えがあるのだろう。
「じゃあ、エドアルドはミルシェさんとドミニカさんに任せて、ぼくたちはハルギータへ向かおう」
「日も暮れちゃったし、出発は明日ね」
「案内頼むよ、ヴィーカ」
「任せときなって!」
 月の鎖を斬るのとは別の意味で、急がなければならない理由が出来た。でも、ハルギータに行けば治療法はわかるのだろうか……。
 不安はある。でもそれはいつものことで、今はやれることをやるだけだ。
『大切なものを見つけたら、何があっても守り抜け』
 シグムントの言葉が脳裏をよぎる。
 エドアルドは大切な仲間だ。カペルはそう思いたかった。

 だから、僕はエドアルドを助けたいんだ。





 闇夜を切り裂くように、金色の雨がケルンテンの街に降り注ぐ。月はなかば雲に隠れていて、街を照らす魔法石のない教会の裏側は、完全に夜に飲み込まれていた。
「わかってるよ。その薬があれば治せるんだろ?」
「そうだ」
 小さな影が、見上げるでもなく、隣にいたローブの男に話しかける。
「上手くやるさ。絶対に……」
「……」
 雲に隠れていた月が姿を見せる。
 その明かりに照らされた小さな影の上に、そばかすの残る顔が浮かんで、消えた。

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