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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第七章 「月印」_03 

 物見遊山というわけではないが、シグムントになりきるにはどうすればいいかと考えているうちに眠れなくなり、カペルは持てあました時間をハルギータの散策に当てることにした。もう夜も遅いので、誰かと会うこともないだろう。
 その油断が命取りとなる。
「勇者様、お久しぶりです!」
 宿を出て、神殿のものらしい大きな扉の前にさしかかったあたりで声をかけてきたのは、確かヴェスプレームの塔へ攻め込む際に転送陣へと案内してくれた少女だ。エンマの部下であったはずだからハルギータにいてもおかしくないのだが、まさかこんなタイミングで鉢合わせるとは……。
「おお、シグムント、久しいな」
 しかも、その隣にいる少年はシグムントさんの知り合いらしい。
「帰ってくるとは聞いていたが、このようなところで会えるとは」
「ひ、久しぶり」
 まだ幼さを多分に残した顔立ちからは想像できない落ち着いた雰囲気の少年に、カペルはぎこちなく答える。さらりとした銀髪の上から見たことのない意匠のお面を横向きにつけていて気にはなるのだが、それはこの際どうでも良い。彼の背中に見える三日月状の光輪が、彼がハイネイルであることを教えていて、カペルはどう接して良いのかがよくわからなかったのだ。ハイネイルの知り合いなどソレンスタムくらいのもので、ハイネイルの中でも変わり者のソレンスタムだからこそ普通に接していられるのだ。他のハイネイルとなると、さすがに緊張してしまう。ましてやシグムントの知り合いともなれば、不用意に答えるわけにもいかないのだから。
「少し痩せたのではないか?」
 気軽に身体に触ってくることから彼とシグムントの親交の深さがわかるというものだが、今のカペルにはそれさえも困り種だ。
「南大陸にまで足を運んだと聞く。であれば、船で海を渡ったのであろう? その心労が原因ではないのか?」
「さ、さあ、どうだろう」
「海には底がないと聞いたぞ。そのようなところを渡って平気なものなのか?」
「殿下。そろそろ参りませんと」
「おお、そうであったな」
 このまま会話を続けてはいつかばれてしまう。その恐怖に冷たい汗が背中を伝っていたカペルを救ってくれたのは、少女の一言だった。当然、彼女がそんなカペルの心中を察したはずはないのだが、ともかく感謝せざるをえない。
「シグムント。陛下にはもうお会いしたのか?」
「え、いや、今日はもう遅かったから」
「そうか。明日には参内するのであろう? 旅の話など聞きたいところだが、それは謁見の後にでも時間を作ろう。もはや深更。疲れもあろう。また明日だな」
「あ、はい」
「参るぞ、コマチ」
「はっ。では勇者様、失礼を」
 伏し目がちに会釈をすると、少女は先を行った少年を追いかけていった。
「……あ、危なかった」
 散策は状況がもう少し落ち着いてからか、フォローしてくれるアーヤが隣にいるときにでもすればいい。いや、アーヤがいたらなおさら危険な気もする。過ぎ去った危機と想定される危険にどっと疲れが吹き出したカペルは、今度こそ眠れそうだと宿へと足を向けるのだった。

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