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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第七章 「月印」_06 

「シグムント、やはり変わったな……」
「そ、そうかな」
「うむ。だが悪い変化ではない。物腰が柔らかくなったことに関しては、陛下も喜んでおられた」
 カペルたちは再びコバスナ大森林を歩いていた。月の雨はやんでいるが、鬱蒼と茂る森の様子は変わらない。
 キリヤという月印の研究者は、森の最奥部に庵を構えているらしく、その道案内のためにトウマとコマチが一緒に来てくれているのだが、シグムントの幼なじみであったというトウマがカペルに話しかけるのは自然の成り行きで、カペルはしどろもどろの会話を続けていた。
 そんなカペルの様子を見て、トウマはシグムントが変わったと感じたらしい。ずいぶん鈍いというか、素直な人というか……。彼がそういう人なのだとわかると、騙していることに胸が痛みもする。それでも、今はまだばらすわけにはいかないのだ。
「トウマ、ちょっといいかい?」
 その様子を見かねたのか、ユージンがトウマを連れて行ってくれた。
「た、助かった……」
「何が助かったんだ?」
 そう声をかけてきたのはヴィーカだ。ハルギータへの道案内は済んだのだが、ついでだからと一緒に来てくれたのだ。
「べ、別になんでもないよ。それよりヴィーカ、一緒に来ても大丈夫なの? 他の仕事とかあるんじゃない?」
 そう言うと、ヴィーカは少し寂しそうな顔を見せて言った。
「成り行きだからさ。……それに、エドアルドのことは他人事に思えないんだ」
「ん?」
「おいらには兄ちゃんがいたんだけど、エドアルドと同じような病気で死んじゃったんだ。月印が効かない奇病だってんで、みんな近寄りたがらなかった。半分盗賊みたいなこともやってたし、それで見捨てられちゃってさ。治せるのなら治してやりたいだろう? あんなの、もう見たくないから」
 ヴィーカの抱いた思いは新月の民が持つ思いと似ている。みんなからつまはじきにされ、居場所を失う感覚。あんな思い、誰だってしたくないはずだ。それを憂うヴィーカの表情からは本気でエドアルドを心配してくれていることが感じられて、カペルにはそれがありがたかった。
「ありがと、ヴィーカ」
「へへ。でもちゃんと儲けさせてくれないと困るんだからな。兄貴、そこんところもしっかり頼むよ」
「それは保証できないなぁ」
 ヴィーカは少し嬉しそうにして、先を行くアーヤたちを追いかけていった。ちらとこちらを見遣ったアーヤが「大丈夫でしょうね?」と視線を送ってきたが、カペルは笑って誤魔化しておいた。
「――だとすると、その失踪に封印軍が絡んでいるかもしれないってことかい?」
「ああ。だが、まだ確証はない。《影》を使って調べているところだ」
 すると、後ろからトウマとユージンの会話が聞こえてきた。なにやら不穏な話らしい。
「どうしたんです?」
「ああ、実はね」
 それは、コバスナ大森林の中にあった新月の民の村から、突如、住人がいなくなったという話だった。
「いなくなったって……村人全員ですか?」
「うん。連絡が途絶えたと思って調べてみたら、村はもぬけの殻だったらしい」
「封印軍が関係している、と我々は見ているのだが……」
 特に争いの形跡もないらしく、襲撃があったわけでもなさそうだ。そもそも新月の民の村を襲う理由なんて無いはずで、だとすれば、村人全員でどこかへ移動しているのだろうか。わからないが、カペルはふとファイーナが言っていたことを思い出して首をひねった。
「ファイーナさんが取引相手が現れないって言っていたけど、関係あるのかな……」
「封印軍が絡んでいるのなら放ってはおけないけど、調査をするにしても、まずはエドくんの病気を治してからだね」
「そうですね」
 言いしれぬ不安が胸を締め付ける。ファイーナたちは無事だろうか。まだケルンテンにいるであろう姉弟の姿を思い出し、カペルは心許無い気分を乗せた視線を、ケルンテンの方角へと向けた。

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