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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第二章 「鎖を斬る者たち」_04 

 地鳴りのような喚声が聞こえる。
 ルセ平原東部、プレヴェン城にほど近いところで、封印軍とブルガス軍がぶつかった。数ではブルガス軍が圧倒しているが、戦況は膠着状態といったところか。
 ルセ平原外延部を大きく迂回しながら、カペルは解放軍とともにその様子を遠くに見た。戦の目的はあくまで鎖の切断。光の英雄を鎖の元に届けることが勝利条件だ。主力であるブルガス軍が正面から攻撃して封印軍を引きつけ、その間に少数のブルガス兵を連れた解放軍が搦手より侵入するというのが作戦のあらましだった。

「バルバガン、すごい!」
「ちっからもちー」
 前を歩くバルバガンの両肩に抱えられて、ルカとロカがはしゃいでいる。二人はバルバガンとすっかり意気投合したようだ。
「そうか、すごいか。はっはー」
 心なしかバルバガンの様子も明るく見える。まるで本当の親子のようだ。
「バルバガンはね、子供好きなんだよ。だけど昔、奥さんと子供を亡くしていてね」
 ユージンがカペルに教えてくれた。
「そうなんですか」
 子を失った父親と、父親を失った子供たち。二人を連れてきて良かったのだろうかとまだ少し悩んでいたカペルだったが、思いがけない出会いもあるものだと、この時ばかりは感じていた。
「見えたぞ、静かにしろ」
 シグムントとともに先頭を歩くエドアルドが、バルバガンたちに注意する。バルバガンは二人を下ろすと、背中の戦斧に持ち替えた。双子は最後尾にいたカペルの所に意気揚々と引き揚げてきた。
「ずいぶん楽しそうだったじゃない?」
「何言ってるんだよ、カペル。もう本番なんだぞ」
「緊張感ないんだから」
「……」

 搦手の門は正門と違い、簡素な造りになっている。防備も薄く、門の両側に立つ兵士と、それから少し離れたところにたむろする小隊、それに城壁の上に見張りが数名ばかり。
「アーヤ」
 シグムントに呼ばれたアーヤがこくりと頷くと、続けざまに矢を放った。矢は城壁の上の兵士を射貫き、一人二人とくぐもった声を漏らしながら下へと転がり落ちる。同時にユージンとミルシェが魔法で攻撃を仕掛けた。敵はまだこちらを捕捉していない。散発的な爆発に注意が集まるのに合わせて、物陰から飛び出したシグムントとエドアルドが門番を倒す。遅れて走ってきたバルバガンの左腕の月印が光り、走る勢いのまま門にタックルをかました。門は閂ごと押し広げられた。そのまま後続も流れ込む。カペルが門を抜け、プレヴェン城内に入ったときには、その場に残っていた封印軍の兵士はすべて倒されていた。ざっと十名ほどか。
 エントランスを駆け抜け、狭い通路に入る。
 プレヴェン城はもともとはブルガスの持ち物なので、シグムント達はその構造をおおよそ把握していた。先頭を行くシグムントとエドアルドの足に迷いはない。その後ろをユージンとミルシェ、それにカペルとアーヤが続き、てけてけと走るルカとロカの後ろで最後尾を守るのがバルバガンだ。目指すはプレヴェン城の最奥部。
 二階に上がる唯一の階段に足をかけた時に、シグムントが振り返って言った。
「バルバガン、ここは任せた」
「おう!」
 ここで追撃を退ける。その為にバルバガンが残された。
「一人で大丈夫なのかな……」
「心配ないわよ。鎖を断つまでだもの。すぐ終わるわ」
 シグムントもアーヤも大丈夫と判断しているのなら、と思ったところで、すぐ後ろを走っていたはずのルカとロカがいなくなっているのにカペルは気づいた。
 見れば、バルバガンの後ろで一緒になって構えている。
「ルカ、ロカ!」
「一人じゃかわいそうだよ」
「僕たちも残るから、カペルは先に行ってて!」
「でも……」
 二人のことを任された身としては、置いていくわけにもいかない。カペルが迷って足を止めていると、「カペル、任せておけ。二人は俺が預かった!」と親指を立ててバルバガンが笑っていた。
「カペル、バルバガンに任せておけば大丈夫よ」アーヤが言う。
「……うん。じゃあよろしくお願いします!」
 斧を突き上げなら「おう!」と答えたバルバガンと、同じように両手を上に突き出している二人を確認して、カペルはシグムントたちの後を追った。
「それじゃあチビども、援護頼むぞ!」
「おう!」
「おー!」

 大部分がルセ平原の戦いに出ているせいか、警備は薄い。無人の野を行くごとく、解放軍は通路を一気に駆け抜ける。
 階段を上がった先も抵抗はないと思ったのも束の間、飛び込んだ先の部屋に魔術師が待ち構えていた。待ち伏せだ。魔法の詠唱はほぼ終わっている。カペルたちが確認した時には、すでに魔術師の目の前には真っ赤な火球が出現していた。
 エドアルドが迷わず飛び出す。放たれた火球に真っ正面から突っ込んだ。目の高さから一気に突き出された大剣がそれを両断する。両側に爆発を見ながら、エドアルドはそのまま爆炎の中央を突っ切り、護衛の剣士もろとも魔術師をなぎ倒した。
「ロウズ」
 ユージンがそう唱えると、エドアルドの斜め前の床が隆起して分厚い土壁を形成する。直後、その土壁に数本の矢が突き立った。伏せられていた弓兵による攻撃だ。
 状況を確認するのが精一杯のカペルをよそに、すでに走り出していたアーヤがその土壁を駆け上がると、天井近くまで跳躍する。手の甲で月印が赤く弾けると、つがえられた矢が炎を纏って射降ろされた。弓兵の頭上に到達した矢はそこで弾け、無数の小さな炎の矢となって降り注ぐ。炎の雨を浴びた弓兵が沈黙する。
 あっという間に制圧だ。一連の連携をカペルは呆然と見ているだけだった。自分が入り込める余地も、それを探す時間もない。それだけ解放軍の面々は圧倒的だった。
「みんなすご――」
 風を切る音。弓兵はまだ残っていた。
 カペルと弓兵を繋ぐ直線上を、一本の矢が疾走する。
 カペルがそれに気づいた時には、すでに逃げ遅れていた。間に合わない。そう思った刹那。
 視界に人影が飛び込んできた。シグムントだ。矢はシグムントの右腕に突き立った。遅れて、カペルは尻餅をつく。シグムントは表情を変えずにこちらを見下ろしている。その向こう側では、弓兵がエドアルドによってすでに倒されていた。
「あっ、ありがとうございます……」
「油断するな。行くぞ」
 それだけを言ってシグムントは行ってしまった。すぐにミルシェが駆けつけて治療を始める。
 すれ違いざま、彼にぺこりと頭を下げながら、アーヤが駆け寄ってくる。彼女に引き起こされる最中も、カペルはシグムントの背中を見つめていた。
「カペル、大丈夫?」
「……みんなすごいね。僕なんていなくてもよかったんじゃ――」
「私は、大丈夫かって聞いてるの」
「あ、うん。ありがと」
「うん。ならいいの。行きましょ」

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