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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第七章 「月印」_10 

 コバスナ大森林をケルンテンへとひた走る。まだずいぶん距離があるのだが、だらだらと歩いてはいられない事情ができてしまったのだから、多少息が上がっても気にはしていられなかった。
「珍しく愚痴一つこぼさずに走ってるじゃない」
「僕だってそんな場合じゃないことくらいわかるよ」
「そうね、急ぎましょう……ん?」
 アーヤの顔に警戒の色が浮かぶ。同時にトウマやコマチが武器に手をやるのが見え、カペルも慌ててそれにならった。
「な、何? どうしたの?」
「……何か来る」
 直後、遠雷のような咆哮が森の向こうに聞こえ、何かが枝葉を押しのける音が続いた。
「全員、散れ!」
 トウマが叫ぶ。
 直後、それは頭上からやってきた。
 コバスナの木々を越えるほどの跳躍から再び大地に戻ってきた巨体が、先ほどまでカペルたちのいた空間に降り立った。獰猛な肉食獣の顔を持ったその四足の巨獣は、前足に竜の翼を持ち、背から五又の大蛇を生やしている。こんな異形の生き物をカペルは見たことがない。
「な、なななな、何なのこれ!?」
 カペルが悲鳴にも似た声を上げる横で、隣にいたトウマが刀に手をやりながら言った。
「オルトロス! コバスナの主が何故我々を襲う!?」
 それに呼応するように、オルトロスと呼ばれた化け物が咆哮を上げる。すると、背に生えた五つの蛇が五方へとその頭を伸ばし、それぞれが紅蓮の火炎を吐き出した。五つの頭が振られるたびに火炎があたりを蹂躙し、生木をまるで枯れ木に火をつけるように次々と焼き払う。トウマの声で距離を取っていたので皆それをかわしていたが、火炎を吐き出し終えてなお、獲物と決めた意志をまき散らす六対の目が、こちらを捉えて放さない。
「こ、こんなの相手にしてたら、エドアルドが……」
「シグムント、ここは私とコマチに任せておけ。そなたはケルンテンへ急ぐといい。十分に足止めをしたら、我々も追いかける」
 トウマはカペルの返事を待たずに刀を抜き、オルトロスの間合いへと踏み込んでいく。カペルはアーヤと目配せし、一つ頷くと、構えていた剣を納めた。
「トウマさん、おねがいし……ヴィーカ!」
 オルトロスと戦うトウマに視線を遣った直後、カペルは敵の後ろから飛びかかろうとするヴィーカの姿を見た。ナイフ一本で飛び込むのは無茶すぎる。
 その無茶はオルトロスの尾で簡単に迎撃され、ヴィーカはカペルの方へと跳ね飛ばされた。カペルはそれを何とか受け止めたが、一緒になって尻餅をついてしまう。
「いてて……ヴィーカ、無茶だよ」
「つぅ……ごめん、兄貴」
「とにかく、ここはトウマさんたちに任せて、僕らはケルンテンに急ぐよ」
「お、おう」
 こけた拍子に落としてしまっては大変だからと、カペルはポケットにしまった試験薬の革袋を確かめた。ちゃんとそこにある。エドアルドを救う唯一の希望を確かめながら、アーヤに引き起こされたカペルは、再び、コバスナの森をケルンテンへと走り始めた。

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