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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第八章 「手を取り合って」_05 

 エドアルドは僕を狙っている。街の人を襲い始めるくらいならその方が良いとも思えるが、リバスネイル化したエドアルドの攻撃をかわし続けるのは、思っていた以上に骨が折れた。同時に、かわし続けられるほどに戦いの腕も上がっていたのかと自分に感心したくもなる。アーヤに引きずり出されてから今まで、戦いの渦中、というそれまではそうぞうもしていなかった状況に適応してきた結果なのだろうが、それで本分であるフルートの腕が鈍ってきていないだろうか。そして、そのフルートも今では戦いの道具の一つになりつつある。そんな諸々の現状が、カペルをなんとも複雑な気分にさせていた。
「戦いの道具とか、柄じゃないんだけどな……って、うわっ!」
 屋根の上から、エドアルドが剣を突き出して突撃してくる。それはシグムントの使っていたグリン・ヴァレスティという技の真似のようにも思えたのも一瞬、ぎりぎりでかわした剣撃の後に衝撃波が巻き起こり、カペルはそれに吹き飛ばされた。
「いてて……」
 直撃でなくてもこの破壊力だ。剣で受け止められるかも怪しいのだから、逃げるしかカペルには選択肢がない。だからといって、逃げ続けても事態を解決できるはずもなく、今は仲間の援護を待ちながら、生き延びることが最優先だった。
 瓦礫からはい出し、剣を構える。
 赤熱するエドアルドの目を見返し、再び突撃してきたのを確認すると、ぐっと息を止めてかわすタイミングを計る。何度もかわしているうちに、攻撃の癖もなんとなくわかってきていた。いつものエドアルドの動きを、さらに直線的にしたような動き。タイミングさえ間違わなければ、かわすだけなら何とかなる。
 だが、次の瞬間にはその攻撃をかわす必要がなくなった。
 カペルに向かって直進してくるエドアルドを、横から豪快に蹴り飛ばした人がいたからだ。エドアルドが何枚かの壁をぶち抜いて吹き飛ぶ様を満足げに眺めたあと、ドミニカはにやりと笑ってこちらを見た。
「坊や、苦戦しているようだね」
「ドミニカさん……っ!」
 頼もしい援護がようやくやってきたと思ったのも束の間、彼女の背後に見えた透明な影に言葉をのんでしまう。
「見えるかい?」
「……すごく機嫌が悪そうです」
「あのときみたく、フルートを吹いてみな。見えるようになったら、私が何とかする」
「わ、わかりました」
 結局、誰かに聞かせるためではなく、戦いの道具として使うことになる。複雑な気分をとりあえず横に置き、カペルは取り出したフルートを口にあてがった。シグムントに教わったこの曲を演奏する度に少し感傷的になるのは、仕方ないことだろうか。目の前に迫る透明の騎士の姿がそれを許さずにいるが、フルートの音にはそんなカペルの気分が混じり合っていたかもしれない。
 鳴り響いたフルートの音に反応して、剣を振り下ろす動作に入っていた漆黒の騎士が、ドミニカの眼前に姿を現す。右手には剣、左手には盾。その斬撃よりも早く、ドミニカの槍が騎士の肩を捉える。肩当てをはじき飛ばしたその攻撃は、同時に、跳躍していた騎士の身体をも吹き飛ばした。
 ほっとして演奏を止めたが、背中越しに向けられたドミニカの鋭い視線に、カペルは「助かりました」の言葉を遮られた。直後、身体を反転させながら水平に振り回されたドミニカの槍がぶんと音を立てて半月を描き、カペルの頬をかすめるところで制止する。思わず身をすくめたカペルの後ろで鈍い音と動物のような悲鳴が弾け、思わず振り返ると、槍の反対側に漆黒の騎士が吹き飛ぶ様を遅れて目で追うこととなった。
「ふ、二人いたんですね……」
 理性を失い、野生に身を落とした人間の姿。攪拌された意識を引き戻そうと、四つん這いの状態で首をぶんぶんと振る様は、まさに獣だ。その目と視線が絡まると、カペルの背中を大粒の冷たい汗が伝った。
「ここは任せて、坊やはひとまず姿を隠しな。エドアルドは坊やを狙っている。リバスネイル二人と蜘蛛の群れの相手をしながらじゃ、さすがにかばいきれない」
「じゃ、じゃあお願いします」
 エドアルドが消えた瓦礫の方へと目を遣りながらカペルが答えると、ドミニカは思わせぶりに笑って言った。
「ああ、それと、アーヤを探して連れて行ってくれないか?」
「アーヤを?」
「あの子は昔から蜘蛛がダメでね。今頃は震えて動けなくなってるはずさ」
 そういえば、コバスナ大森林でも蜘蛛を見て怯えていたっけ……。あのときは小指大の小さな蜘蛛だったにもかかわらず、ひどい怯えようだった。あの馬鹿でかいのを見たら、卒倒していても不思議じゃない。
「今は普通の女の子だから、しっかり守ってやらないとダメだよ」
「はいはーい」
 立ち上がってきた二人のリバスネイルが、同時にドミニカに襲いかかる。身を低くしてそこを抜けだし、二対一だろうと余裕を感じさせる彼女の背中を見遣りながら、カペルは混乱に落ちていくケルンテンの街を駆けだした。

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