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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第八章 「手を取り合って」_06 

「クモ……嫌、クモ……」
 街に散らばり始めた蜘蛛を蹴散らしながら駆け回り、カペルはようやくアーヤを見つけた。物陰に隠れていた彼女は、目に涙を浮かべながらわなわなと震えている。
「アーヤ、大丈夫?」
 カペルが声をかけると、アーヤは目に溜まった涙をこぼしつつ、カペルの足にしがみついた。
「わっ、ちょっとアーヤ! 危ないって!」
「カペル!」
「今のうちにもう少し離れようよ。蜘蛛、いないからさ」
「う、うん……」
 そう答えながらもなかなか足を放そうとしないので、カペルは途方に暮れた。こんなときにエドアルドや蜘蛛に見つかったら、まともに戦うことも出来ないじゃないか。
 カペルは周囲に警戒の視線を飛ばした。エドアルドの姿はないし、蜘蛛はかなり遠くに見えただけで、近くにはいない。近隣の住民はすでに避難をしていたのか、通りからは人の姿が消えていた。
 だが、その無人の通りに一つ、動かない人影を見つける。
「ヴィーカ……?」
 うなだれてしゃがみ込み、世界から独り取り残されているかのように見える様子は、あのいつも元気なヴィーカらしからぬものだった。
 どうしてこんなところに……。
「アーヤ、ヴィーカの様子を見てくるからちょっと待ってて」
 ヴィーカを見つけたことを教えるために通りを指さしてみたが、アーヤはそちらを見ようともせず、カペルの足を掴む手に力を入れる。
「ダメよ! カペルはずっと私の側にいるの! こんなところに独りにしないで!!」
「わ、わかったから放してよ。一緒に行こう、それでいいよね?」
「クモ、いない?」
「いないから、ね」
 ひとしきり周りを見回して納得したのか、ようやくアーヤの束縛から解放されると、カペルはその手をひいてヴィーカの元へと走った。

「ヴィーカ、怪我したの?」
「兄貴……」
 ぱっと見では怪我をしたわけではなさそうだ。それにひとまず胸をなで下ろしてはみたものの、頬に泣いた後が見て取れると、先ほどの印象が再び重なり、カペルはヴィーカの言葉を待った。
 一度伏せられたヴィーカの目がカペルを見る。震える口から言葉が出るのと一緒になって、その目から再び涙が流れ出していた。
「兄貴、おいら……、おいら、兄ちゃんを助けたかったんだ……。それで、あいつがあの薬を持ってくれば治療薬が作れるって……、それで……」
 激しく首を振り、そうして目の前の現実を拒絶しながら、ヴィーカは続ける。
「これじゃ、エドアルドも兄ちゃんみたいになっちまう。兄ちゃんみたいに、リバスネイルってやつに……どうすりゃいいんだよ……全部、全部おいらのせいだ!」
 詳しいことはわからなくても、ヴィーカに悪意はなかったのだとは理解できる。兄を想う気持ちを利用され、それがエドアルドが暴走するきっかけになってしまった。後悔に悲鳴を上げる姿を見、それだけわかればカペルには十分だった。
「エドアルドを元に戻さなきゃ。ヴィーカ、手伝ってくれる?」
「兄貴……?」
「僕だけじゃ絶対に止められないもん。無理無理、絶対無理」
「でも」
「責任を感じてるんだったら、手伝ってくれるよね?」
 カペルは意識して笑ってみせた。その気持ちが伝わったのか、ヴィーカは止まらなくなった涙を隠すように下を向いてはいたが、静かに頷いて言った。
「……うん」
「行こう、ヴィーカ」
 その頭をぽんと撫で、カペルは通りの向こうの喧噪に目を遣った。
 そちらにいるだろうエドアルドの姿を幻視する。彼もまた、ヴィーカと同様独りきりになってしまっているのだ。
 まだ言葉は届くだろうか……。

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