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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第八章 「手を取り合って」_07 

 アーヤとヴィーカを伴ってちょうど宿の側に差し掛かったとき、カペルは反対側から走ってくるソレンスタムとキリヤの姿を見つけた。少し息の上がっているキリヤとは対照的に、ソレンスタムはいつもどおりだ。ただ、微笑が消えていた。全てを見通す目を持つ彼が思い詰めたような顔をしていることが、少し意外でもあり、不安な気分にもさせてくれる。
「カペルくん、探しました」
「どうされたんですか?」
「私たちはあの封印騎士を追いかけます」
「でもどうやって? 居場所がわかったんですか?」
「ケルンテンの転送陣を一時的に書き換えます。ヘルドの……、あの封印騎士の行き先はわかっていますから」
 転送陣を書き換える。
 ヴェスプレームの塔へ乗り込むときのそれもソレンスタムがやったのだと思い出し、その能力も無ければ方法も知らないカペルは、ただただ、この人はすごい人なのだなと感心するばかりだった。
 ……でも、勝手に書き換えたりして、ケルンテンの偉い人に怒られたりしないのだろうか。
 そんなカペルの心配もよそに、ソレンスタムは騒然としている方向を見ながら言う。
「カペルくんは何とかして暴走した彼を転送陣まで連れてきてください。一緒に向こうに飛ばしてしまいましょう。街の中で暴れてしまっては、後々困ることになります」
「あのエドアルドを、僕がですか……?」
「それでは、しばらく時間をいただきます」
 カペルが肯定することを確認せず、ソレンスタムは転送陣の方へと走り出した。声や態度からは想像できなかったが、あのソレンスタムがそれほど焦っているということなのだろうか。
 三日月の映える背中が走り去る中、それを追わずにいたキリヤの目がヴィーカを見ていた。ヴィーカはそれを見返すことも出来ずに唇をかんでいる。
「あの、キリヤさん、薬の予備ってないんですか?」
「ないな」
「じゃあ取り返さないと。転送陣、よろしくお願いしますね」
「……ふん」
 そっと二人の間に割って入った意図を、キリヤも察してくれたらしい。それ以上は何も言わず、ソレンスタムの後を追っていった。
「さあ、エドアルドを探そう。それで転送陣の方に連れて……連れて行くってどうやるの?」
「知らないわよ、バカ」
 他に選択肢はないようだけど、暴走しているエドアルドを誘導することが自分に可能なのか。そんな器用な戦い方が出来るとも思えず、だからといって逃げ出すわけにもいかず、カペルは自分の力を確かめるように剣を抜いて光りに捧げてみた。
 なまくらという程ではないせよ、エドアルドが一撃入れればへし折れてしまいそうな印象がある。いや、それは見る者の気分のせいだろうか。
 ふいに、ヴィーカに袖を引かれた。
 赤い目に笑みを浮かべ、鼻頭をこすりながらヴィーカは言う。
「兄貴、おいらも手伝うからさ。なんとかして助けようぜ」
 気持ちは伝わる。
 ヴィーカの強がった笑顔にそれが確認できると、カペルはその笑みに答えた。
「……そうだね。よろしく頼むよ、ヴィーカ」
 新月の民とコモネイル、ハイネイルだってわかり合えるのだ。リバスネイルだって、きっと……。
「へへ」
「アーヤも手伝ってよ。蜘蛛の相手はしなくていいから」
「う、うん」
「じゃあ早速――」
 エドアルドを探そう。
 そう言いかけたところで、視線の先、屋根の上に黒い固まりが見えた。赤い双眸をこちらに向けたかと思うと、それは漆黒の翼を広げ、屋根の上から一直線にカペルへと突進してきた。
「アーヤ、ヴィーカ、離れて!」
 言い終わるやいなや、エドアルドの大剣がカペルの構えた剣と衝突し、衝撃が二人を中心に同心円を描いて駆け巡った。
 辛うじて堪えられたのは一瞬で、その間にアーヤとヴィーカは後ろに飛んで距離を取れたものの、カペルは吹き飛ばされ、後方に積んであった木箱に激突する。
「カペル!」
 そこから這い出ると、エドアルドは頭を抱えて悶絶していた。
 燃えるような漆黒の翼は、内部から吹き出る感情の象徴だ。抑えきることも出来ず、自分の身を苛むほどの激痛に抗いながら、エドアルドは再び、その赤く焼けた目でカペルを見る。
「カ……ペル……、ドウシテ……オマエ……ナ……ンダ……ドウシテ……」
 どうして……。
 それは絶望の言葉。
 そして、誰かに助けを求める言葉。
「シグムント……サマ……」
 だが、彼が求める人はこの場にはいない。
 苦しげに伸ばされた手が空を掴み、身体をよろけさせる。
「エドアルド!」
 カペルの声にエドアルドが反応する。
 そうだ。それでいい。
 僕を見るんだ。そして、追いかけてこい。
「必ず治してあげるから」
 だから、治った後のことを考えるなら、君はここにいちゃいけないんだ。
 エドアルドが猪突する。
 それを辛うじてかわしながら、カペルは転送陣の方へと走り出した。

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