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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第八章 「手を取り合って」_08 

 倒せど倒せど次が現れる。
 女王蜘蛛を中心にして際限なく出現する蜘蛛の処理に追われ、ユージンとミルシェは本体に近づくことさえ出来ずにいた。逃げ遅れた一般人を庇いながらでは本来の力も発揮できず、敵の数に比してこちらはたった二人。打てる手も思い浮かばない。
 こんなときにあいつがいてくれれば……。
「きりが無いね」
「ママのおなかからどんどん次が出てきてるわよ。あれは生んでるんじゃないわね。召喚魔法みたいなものかしら」
「いずれにせよ、まだ逃げ遅れている人たちもいる。あまり大きな魔法は使えないよ」
「でも、このままじゃ小さい子たちが街中に拡散しちゃう……きゃっ!」
 横合いから飛びかかってきた蜘蛛に、ミルシェが悲鳴を上げる。
 ユージンが咄嗟に杖を振り上げた。
 すると、蜘蛛を遮るように地面から岩石の壁がせり出してそれを遮った。
 ロウズ――地中の成分を再構成し、至近に岩石の壁を生成、一時的な遮蔽物を作り出すこの魔法は、ユージンにとって、詠唱を破棄し、呼吸するのと同様に使える魔法の一つだった。
 身体に馴染んだそれが条件反射の速度で発動し、これまでも幾度となく仲間の窮地を救ってきた。それもすべて、無茶なところのあった幼なじみに付き合わされてきたせいで身についた、癖のようなものだ。それを思い出すと、戦闘中にもかかわらず、少し感傷的な気分にもなるのが今のユージンだった。
 それは油断なのだろうか。
 避けがたいとも思えるその一瞬の隙をついて、別の蜘蛛が、今度はユージンに襲いかかる。辛うじて杖を間に割り込ませ、喉を食いちぎろうと迫ってくるその蜘蛛を押しのけようとしたが、吐き出された糸が杖に絡まって取れずに膠着した。
「くっ……」
「ユージンくん!」
 ミルシェは武器になるようなものは持っていない。護身用にとナイフや杖を進めてみたりもしたが、必要ないと言われた。確かに、彼女が持つには無粋だと思える。もし彼女がナイフを持ち合わせていたら、この蜘蛛を引きはがしてくれただろうか。それを想像してみたが、やはり彼女にはそういう役回りはさせられないともユージンには思えた。
 だからといって、黙って噛みつかれるわけにもいかない。僕にはまだやらなきゃいけないことが残っているんだ。
 だが、その思いとは裏腹に、絡みついてくる蜘蛛の向こうからもまた、別の蜘蛛が数体飛んでくるのが見えた。身動きの取れないままでは、それらを退ける術がない。
「動かないでください!」
 ふいに少女の声が聞こえた。
 それが自分に対しての言葉かどうかはわからなかったが、いずれにせよ動けるような状態じゃない。そうユージンが判断したのも一瞬、視界の外から一本のクナイが飛来し、絡みついていた蜘蛛の口を貫いた。それによってユージンの杖を絡め取っていた糸が切断されると、その蜘蛛が一瞬宙に浮く。
 声の主は蜘蛛の真横へ風のように飛び込むと、小さな身体から最大限の衝撃を生むためにその場で身をひねって回転する。旋風のごとき渾身の回し蹴りが蜘蛛の頭をとらえ、その衝撃に耐えきれなかった蜘蛛がユージンの身体から引きはがされた。はじき飛ばされた蜘蛛は壁にぶつかって潰れ、悲鳴をあげる時間も無く絶命した。
「遅くなりました」
 《影》の戦装束を身にまとう姿は、シグムントと旅に出る前に会ったときと比べれば、ずいぶんと様になって見えるようになった。にこりと笑うコマチの顔を見てそんなことを思った刹那、こちらに飛びかかろうとしていた蜘蛛の群れが一瞬にして両断されていくのを視界に入れると、肩の荷がいくらか軽くなったように思えて、ユージンは身体の力が抜けるのを感じた。
「少々手こずったが、オルトロスは何とか撒いてきたぞ」
「トウマ!」
 ミルシェと二人ではとても対処しきれないと思えていたユージンにとって、これほど頼もしい援軍は他にはない。そう思える幼なじみの顔を見ると、落ち着きを取り戻したユージンの頭はすぐに次の展開を予測しようと回り始めていた。
「ずいぶんと大きな蜘蛛だな。敵襲か?」
「トウマ、ここをを頼めるか? こんなところでは戦えない。一般人を遠ざける必要があるんだ」
「よかろう。コマチ、こやつは仕留めるぞ!」
「はっ、お供いたします!」
 二人は蜘蛛の群れの間を飛ぶように移動しながら、徐々に女王蜘蛛へと肉薄していく。
 それを見ると、ユージンはミルシェに言った。
「ミルシェくん、僕らは雑魚を掃討しつつ、一般人をこのあたりから避難させよう。それでいいね?」
「うん」
「じゃあ行こう」

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