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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第八章「手を取り合って」_12 

 思っていたよりも、世の中には知らないものが多くある。
 ハルギータの城とコバスナの森しか知らぬ自分は、まだまだ未熟なのだ。スバル女皇がシグムントに協力するよう命じてくださったのは、そんな自分の未熟さを思ってくださってのことなのだろう。
「ありがたい……」
 蜘蛛の群れを蹴散らしながら、トウマは女皇に感謝を捧げた。
 ハルギータとは全く違う街並みには、どこか作り物めいた印象がある。それが雪に飾られる様は、肌を刺すような気温と相まって、ゆるみがちな気分を引き締めてくれるだけの峻厳さに満ちていた。
 知らぬ街並み。知らぬ敵。知らぬ仲間。
 それら全てがトウマにとっては鮮烈で、だがそれを噛みしめている時間がないことも承知している。
「殿下、敵が多すぎます。このままでは近づけません!」
 群がる蜘蛛を両の小太刀で切り伏せ、コマチが言う。
 敵の数に比して、戦力が圧倒的に足りない。戦理に従うなら、ここは一気に敵の頭を狙うべきだが、それを実現するための最低限の条件が足りていないのだ。それならば、今やれることに全力を尽くすのみ。
「コマチ、ここは耐えよ! ユージンたちが戻ってくるまで、蜘蛛の拡散を最低限に押さえ込むぞ!」
「はいっ!」





 蜘蛛の数が劇的に減った。
 避難する一般市民を護衛しながら、ユージンは時計塔の方を見遣り、そこで戦っている幼なじみの姿を思い浮かべる。
 シグムントとトウマ、そして自分の三人が一緒の時は、年長者である自分がいつも抑え役だった。二人とも、小さい頃から失敗することを恐れない無謀なところがあったから、自分がその役割を担うのは当然だろう。そう思っていた。だが、いま思えば、なんでも出来る、と思っていたのは自分の方だったかもしれない。三人でいれば、なんでも……。
 ユージンは杖を振り上げる。
 減ったと言っても、敵の数はまだ多く、逃げ惑う人たちに秩序はない。守りきれないことはわかっていても、一人でも多くを無事に逃がしたかった。
「きゃあ!」
 親とはぐれたのだろうか。小さなクマのぬいぐるみを持った少女が道に倒れ、一人取り残されているのが見えた。
 まずい。
 遅れた少女を狙う蜘蛛の群れを視界に捉え、ユージンは慌てて月印を発動させる。
 人間の頭大の岩石を目の前に生成し、それを対象に向かって撃ち放つ。土属性魔法の初歩だが、初歩ゆえに発動も早い。ユージンは咄嗟に繰り出したその魔法で蜘蛛を打ち払おうとしたが、作り出した岩石よりも襲いかかる蜘蛛の数が多く、数匹を取り逃がす。
「逃げるんだ!」
 そう叫んでみても、少女は足を怪我したのか、それとも恐怖に震えてか、その場にへたり込んだまま、襲いかかる蜘蛛の様子を見ているだけだ。
 また一人、守りきれなかった。
 少女の引き裂かれる姿を正視することなどできるはずもなく、ユージンは目をそらした。
 瞬間、人のものではない断末魔が鼓膜を震わせた。
 はっとしてそらした視線を戻すと、蜘蛛と少女の間に割って入った兵士の姿があった。
 甲冑のものから、ケルンテンの兵士であることは疑いない。数人の兵士に続いて、逃げる人の流れを逆走してくる甲冑姿が徐々に増え、ユージンは突然の援軍を唖然とした面持ちで見つめていた。
「解放軍の方とお見受けするが」
 部隊長らしき出で立ちの兵士に声をかけられ、ユージンは慌てて返答する。
「そうです。ケルンテン軍の兵士ですか? 確か、解放軍への協力は拒否したはずでは」
「上がなんと言ったかは知らないが、ケルンテンの治安維持は我らの勤めだ。ここは我々に任せて、あなたたちにはあの馬鹿でかいのを何とかしてほしい」
 上の命令無しに動いているのか。
 どこか冷たい印象だったケルンテンの人たちの中にも、こういう人もいる。そんな当たり前のことを忘れていた自分に気づいて、ずいぶんと余裕を失っていたんだなとも気づかされると、久しぶりに軽くなった気分にユージンは少しだけ笑った。
「助かる」
 それを快活に笑って答えると、部隊長は部下たちの元へと戻っていった。
 彼とすれ違うようにミルシェがこちらへやってくる。別れて動いていたが、彼女の方にも援軍が来たのだろう。
「ミルシェくん、君は彼らの手伝いとけが人の治療を。大蜘蛛はトウマたちと僕で何とかする」
「わかったわ」
 けが人の間を駆け回り始めたミルシェの背中を見遣ると、ユージンは来た道を引き返し、仲間の待つ時計塔の方へと走り出した。





「そこをどきなさい! 我々はあの化け物を追わねばならない! やつが解放軍の仲間だというのなら、それなりの責任を――」
 漆黒の翼を持つ化け物を追って転送陣の方へとやってくれば、そこは子供とクリムゾンベアによって塞がれていた。こんなところで遊んでいる場合ではないというのに、子供たちはそこを動こうとしない。
 自分たちを解放軍と言い張るこの子供たちはいったい何者だ。それよりなにより、あのクリムゾンベアはいったい……。
「ここは通さないもんねー」
「おじさんたち、邪魔になるだけだから」
「なっ」
 失礼な物言いにいらっとするが、クリムゾンベアが気になって前に進めない。子供たちと一緒になって道を塞いでいるのだ。無理に押し通ろうとしたら、と想像するのは同僚たちも一緒のようで、誰も進んで前に出ようとしない。
「カペルたちに任せておけばもんだいないよ」
「なんたって、カペルは光の英雄なんだから!」
「がう」
 子供たちの言う意味もよくわからず、街の喧騒とは不釣り合いのこの状況に、兵士たちはただその場でおろおろとするほかなかった。

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