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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第八章「手を取り合って」_15 

 倒れたリバスネイルの身体から、闇が消え去るのをキリヤは見た。残ったのは、次第に人間の姿を取り戻していく男と、それに寄り添う少年だけ。
「ヴィーカ、か……」
 絶え絶えになった息の合間に、か細く漏れる声。それに混じって、口から鮮血がこぼれ落ちる。
「意識が……兄ちゃん、意識が戻ったのか?」
 ふっと笑った口元を染める血の色は、純度を取り戻した月印の光と同化し、こぼれ落ちて大地を朱に彩っていく。
「ま、待って。薬があるんだ。それで月印の病気も治るから――」
 そう言って治療薬を使おうとするヴィーカを、キリヤは腕を掴んで止めた。振り返るヴィーカの目には、怒りと、やるせなさと、涙が滲んでいる。それを見て、この少年がすでに兄の状態を理解していることを察すると、キリヤはただ事実だけを告げた。
「もう間に合わん。月印も、身体も」
「嘘だ! 嘘だと言ってくれよ。この薬で治るって、そう言ってくれよ!!」
 ときに、言葉は心に嘘をつく。
 全てが終わったことを肌で感じながらも、ヴィーカは言葉でそれを否定せずにはいられない。止まらぬ涙が、その気持ちを雄弁に語っていた。
「おまえ、最初からわかっていたんだろう?」
 それでもなお、止められぬ思い。自分を騙して、他人を騙して過ごす日々。この小さな身体が抱えた痛みの大きさが想像できると、それはキリヤの中で、兄弟子への怒りへと変質していく。
 ヴィーカはキリヤの問いに答えるでもなく、肩を落として涙を流す。兄が弱々しく腕を上げ、そっとその涙を拭ってやると、血に染まった手がヴィーカの頬を赤く染めた。
「ヴィーカ……ありがとう……」
 弱々しく震えた喉から声が漏れ出す。それが最期だった。
 ヴィーカの頬を撫でていた手がぼとりと大地に落ち、頬を染めた彼の血が、止めどなく流れるヴィーカの涙によって洗われていく。
 治療薬を手放し、ヴィーカは動かなくなった兄の手を強く握った。キリヤはその薬を取り、ぽんと一つヴィーカの頭を撫でてやると、その目をヘルドの方へと向けた。かつては本当の兄弟のように過ごした兄弟子の姿。変わり果てたその姿に、怒りと失望が折り重なる。
「最後に自我を取り戻したか。やはり面白い素材だったな」
 力に取り付かれ、昔の面影などほとんどない。実験材料を見る目でこちらを観察する男は、ただ観察の結果を知らせるだけの声音で言葉を継いだ。
「だが、つまらぬ死に方だぞ、それは」
 怒りが月印の姿となって手の甲を焼き、持った鎖鎌の柄が軋む音を聞いたキリヤは、その扱い方を教えてくれた兄弟子の姿を頭の隅へと押しやると、目の前の敵に向かって大地を蹴った。

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