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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第八章「手を取り合って」_16 

 ヴィーカを押しのけて盾となるその兄の姿を、アーヤははっきりと見た。射線に重なり、エドアルドを止めるための一矢が放てなかった。その先で、大切な仲間の剣が、仲間の大切な人を貫いてしまった。
 ……こんなこと、あっていいの?
 想定していなかった事態に、アーヤの思考は白濁していく。
 直後に耳をつんざいたエドアルドの絶叫が、虚脱した心に痛みと悲しみを伴って切り込んでくる。その感触に怯え、アーヤは思わず身をすくませた。
「エドアルド!!」
 その一瞬の心の空白に、カペルの声が反響する。その声音は、遊離しかけた意識を引き戻すのに十分で、アーヤは正気を取り戻すと、腰の矢入れに手をやりながらエドアルドの姿を目で追った。
 これ以上、エドアルドに仲間を傷つけさせるわけにはいかない。もしそんなことになったら、リバスネイル化を治療できたとしてもエドアルドの心が持たない。ヴィーカの兄を貫いた後のエドアルドの絶叫が、彼がその感触を確かに感じているということを教えていた。
「あのバカ……」
 本当は思い切り頬を引っぱたいてやりたい。みんなに心配をかけて、周囲に迷惑もかけて、それでいて、まだ暴れようとしているのだ。
「治ったらお説教なんだから、覚悟しなさいよね」
 エドアルドの名を呼んだカペルもまた、同じ気持ちなのだろう。他の誰かを傷つける前にエドアルドの注意を引き、それを自分で引き受けようと言っているのだ。あれだけ悪し様に言われたのにもかかわらず、カペルはまだエドアルドのことを仲間だと思ってくれている。アーヤはそれが嬉しかった。
 カペルを追うエドアルドの姿を見遣り、泣き崩れたヴィーカの背中を見ると、アーヤはその元凶となった男の方へと視線を流した。
「どうした、キリヤ。その程度か!?」
 鎖鎌での攻撃は変則的で、その使い手を初めて見たアーヤには予測できない動きばかりだったが、同じ武器の使い手同士だとそうでもないらしい。怒りをあらわにしたキリヤの攻撃を、ヘルドは涼しい顔をしてかわしている。鎌と鎌がぶつかって火花が散る。その向こうに見えたヘルドの余裕の笑みが、けして相容れない相手なのだということをアーヤに理解させた。
 キリヤがヘルドと刃を交え始めると、それまで交戦していたソレンスタムがヴィーカの側にやってきた。英知の目が見据える二つの動かない影。ソレンスタム様なら、と淡い期待を抱いたのも束の間、目を瞑って首を横に振るのが見え、アーヤは落胆するほか無かった。
 いくら頑張っても、全てを救うことが出来るわけじゃない。わかっていても胸の痛みが止められるわけではなく、自らの非力さを再確認させられると、くやしさにアーヤは唇を噛んだ。
 それを知ってか知らずか、キリヤの攻撃を受け流しつつ、ヘルドが哄笑しながら言った。
「そちらばかりが大人数というのも気が引けるだろう」
 高々と掲げられた右手に、月印が赤く光る。そこからほとばしった月の力が四方に飛び散ると、まるで準備されていたかのように、それを受けた地面や岩盤の壁、岩石の表面に召喚の魔方陣が滲み始める。肌をざわつかせる不快な共鳴音が弾け、それぞれの魔方陣が漆黒の翼を模した怪しげな色の光を放つと、そこから同色の球体がごとりと音を立てて吐き出された。
「ソーサリーグローブと言う。ただのおもちゃだが、その名の通り魔法を使う。気をつけたまえ」
 ヘルドが言うと同時に、その球体がぶんと音を立てて浮かび上がる。手の届かぬ高さを飛び交い始めたそれは、互いにぶつかり合いながら軌道を無秩序に変化させていて、ヘルドの言うとおり、その動きはガラス玉をぶつけ合う子供の遊びを連想させた。だが、それがそんなかわいいもののはずもない。球体のそれぞれが帯電していくのを頭上に見たアーヤは、咄嗟にその場を離れた。
 瞬間、全ての球体から雷撃が降り注ぎ始める。
 カペルとアーヤ、エドアルドもそれをかわしていたが、動かないヴィーカは別だ。ソレンスタムが殺到する雷撃を防いでいなければ今頃はやられていただろう。
 雷撃特有の刺激臭が鼻をつく。降り注ぐ雷撃をかわし、キリヤがヘルドに押され始めたのを見て取ると、アーヤは残りの矢の数を確かめた。敵の数を考えればいくらか心許無い。それでも、皆が手一杯の今、自分がやるしかない。
「カペル、ちょっとだけ一人で踏ん張りなさい!」
「ええっ!? 手伝ってくれないの、アーヤ!!?」
「情けない声ださないの!!」
 まったく、ほんとに頼りないんだから……。
「あれは全部わたしが叩き落とすんだから、そっちはそっちでなんとかしなさい!」

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