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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第八章「手を取り合って」_19 

「ファイーナ!?」
 月の雨を吸った直後だった。リバスネイルの片割れが発狂したように頭を押さえ、ドミニカではなく、逃げ惑う人の群れに向かって走り出したのだ。その人の群れの中に、ファイーナがいた。
 刃を交えていた方のリバスネイルをはじき飛ばし、ドミニカは走り出したリバスネイルを追いかけた。
 人の流れで突き飛ばされ、ファイーナはよろけてその場に倒れてしまう。リバスネイルが剣を振り上げ、凶刃にファイーナを掛けようとした。
「ダメだ、間に合わない……!?」
 刹那、リバスネイルが動きを止める。
 心を取り戻したのかと思ったのも一瞬、リバスネイルはファイーナを殴り倒すと、狂ったように雄叫びを上げて再び剣を振り上げた。
 だが、その逡巡のおかげでドミニカが追いつく。
 槍の刺突一つで終わる。
 ……でも、もし心を取り戻したのだとしたら?
 その迷いが刺突を踏みとどまらせ、ドミニカは槍を地面に突き立てると、それを支えにして跳躍し、リバスネイルの背中を思い切り蹴り飛ばした。
 迷いは隙を作る。
 体勢を崩したドミニカに、もう一人のリバスネイルが殺到する。構えられた剣を見遣り、避けられないと感じつつ、ドミニカは体勢を立て直しながら敵を視界に捉え続けた。
「ラリオーガ」
 覚悟と足掻きを同時に行うドミニカの視界を、直後、横合いからほとばしった極太の閃光が蹂躙する。それは目の前にいたリバスネイルの黒い影を飲み込むほどの巨大さで、飲み込まれたリバスネイルは全身を焼かれて絶叫し、直線上に焦げた地面に突っ伏すこととなった。
 ミルシェだ。
 走ってきたのだろうか、大判の魔導書を抱え、肩で息をしている彼女の姿を視界に捉えると、ドミニカはすぐに槍を構え直した。蹴り飛ばしたリバスネイルが再び獣の咆哮を上げ、こちらへと飛び込んでくる。二対一から一対一へ。隙を埋める相方のいなくなったリバスネイルの動きは、もはや手に取るようにわかるほどの単純さだった。
「終わりにしよう」
 剣が振り切られるより早く。
 手が届くよりはるかに遠く。
 ドミニカの槍が一直線に伸び、猪突するリバスネイルの胸を正確に貫いた。心臓を両断されたリバスネイルは、その槍が引き抜かれるのを待たずにただの肉塊と化していた。槍の支えを失ったリバスネイルが崩れ落ちると、その身体から障気とも呼ぶべき黒い影が消えていく。
 振り返り、震えるファイーナの横を通って、ドミニカはミルシェに焼かれたリバスネイルのもとへと歩み寄った。全身を痙攣させながらもまだ生きているそのリバスネイルの身体を、徐々に黒い炎が修復していく。いや、浸食しているのか。その禍々しい姿に、心の芯がすっと冷えるのをドミニカは感じた。
「眠れ、安らかに……」
 仰向けになったリバスネイルの胸に槍の穂先を据え、ドミニカはわずかに目を瞑ると、刃をリバスネイルの胸に沈めた。
 くぐもった声を漏らしたのも一瞬、リバスネイルの右腕に縛られていた月印が鎖もろとも弾け、その身体を覆っていた漆黒の翼と甲冑が姿を失う。残ったのは、どこにでもいそうなありふれた青年の姿だった。
 ファイーナがよろよろと立ち上がり、その青年の前に跪くと、もう動かなくなった手を取った。肩を震わせ、堪えきれない涙がこぼれ落ちると、それは倒れた青年の頬を濡らした。
「知り合いかい?」
 ファイーナは何も言わず、一つだけ頷く。その腕の中で紫の閃光が屹立し、青年の姿はかき消えた。
 泣き崩れるファイーナを置いて、ドミニカはそっとその場を離れた。
 戦いの最中に崩れた壁が、目の前にあった。
 叩きつけた拳の痛みは、肉体の痛みか、心の叫びか。それとも、月印の軋みだったのだろうか。血に混じって後味の悪さが口中に広がり、ドミニカはやり場のない怒りを飲み下せずにいた。

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