03« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.»05

ふであと

  : 

徒然なるままに、もの書き。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告  /  tb: --  /  cm: --  /  △top

第八章「手を取り合って」_26 

「言っちゃった……」
 衝動に駆られて告白をしてしまったカペルは、皆の輪に戻ることも出来ず、その場を後にした。岩陰に隠れ、皆が見えなくなった瞬間に後悔が押し寄せてきて、頭を抱えてしまう。
 越えられたと思っていたんだ。新月の民とコモネイルの間に引かれた、一本の線を。
 新月の民は役に立たないと言われ、その線がいまだ目の前にあることを思い知らされた。エドアルドに悪意があったわけじゃない。だからこそ、その根が深いことに気付かされる。
 間に引かれた一本の線。僕はまだ足もかけていなかったのだ。
「ああ、どうしよう……いてっ!」
 唐突に後ろから頭をはたかれ、カペルは思わず呻いてしまう。
 振り返ると、そこにはアーヤがいた。なんだかご立腹のご様子だ。
「なにウジウジしてるのよ」
「え、だって……」
「この私が、月印程度でうろたえるちっちゃい人間だなんて思ってないでしょうね」
「て、程度って……」
「そりゃ、ちょっとは驚いたけど」
「でも、なんだか怒ってるみたいだし」
「怒ってるわよ、当たり前でしょ!」
「やっぱり……」
 そのつもりが無かったとはいえ、結果的に皆を騙していたのだ。居心地の良さが執着を生み、失うことを恐れさせて、本当のことを伝えるのを後回しにしてきたつけ。
 皆と旅をするのも、ここで終わり、か……。
「なんで黙ってたのよ!」
「それは……」
「あんたの一番大切な秘密、なんで私に黙ってたのよ!」
「……え?」
「順番が違うでしょ! まずは私に打ち明ける。みんなにぶっちゃけるのはその後でも出来るでしょ!」
「怒ってるのって……そこなの?」
「めちゃくちゃ大事なことでしょ!」
「あの、月印のことは……」
「だから、そんなちっちゃなことはどうだっていいの!」
 ちっちゃなことって……。あの、アーヤさん、僕にとってはすごく大きなことなんですが……。
「いい? 今度こんなことがあったら、まずは私に話すのよ」
「アーヤ……」
「返事は!?」
「は、はい!」
 怒りながらも少し照れくさそうにしているアーヤを見ていると、自分の悩みが本当に小さなもののように思えてきて、カペルは思わず笑ってしまいそうだった。
 結局、新月の民に対する差別というものに一番こだわっていたのは、自分なのかもしれない。確かに、コモネイルと新月の民の間に引かれた一本の線はある。だが、所詮それは線なのだ。越えられない壁でもなければ、底の見えない谷でもない。その線を互いに踏み越える小さな勇気があれば、乗り越えられる。手を伸ばせば、その手を握りあうことだって出来る。
「ありがと、アーヤ」
 簡単なことにも気付けない愚鈍さが僕にはある。たぶん、みんなにもある。だから、気付けることの喜びに、気付かせてくれる人と出会えた幸運に、カペルは感謝の言葉を捧げた。
 赤らんだ頬を隠すようにアーヤは視線を外すと、後ろに向かって声を上げた。
「ほら、そんなところに隠れてないで、こっちに来なさいよ! 言いたいこと、あるんでしょ!?」
 そう言われ、岩陰から現れたのはエドアルドだった。気まずそうに顔を伏せ、「もう、何やってるのよ!」とアーヤに背中を押されながら、エドアルドはカペルの目の前までやってくる。
 ついさっきのことを思い出すと、カペルも気まずくて黙ってしまう。でも、黙っていても仕方がない。心の間にある一本の線。それを踏み越える勇気を……。
「エド、さっきはごめん」
「なんでおまえが謝るんだ」
「だって……」
「おまえは謝ってばかりだな」
 それで力が抜けたのか、エドアルドは少し恥ずかしそうに笑った。
「俺にも謝らせてくれ。……俺は完璧になりたかったんだ。シグムント様のようにな。そんなことを考えている内は、どうしたって完璧になれるはずなんてないのにな。
 カペル、また同じ過ちを繰り返すかもしれない。そのときは思い切り殴って目を覚まさせてくれ。月印も上手く使えないかもしれない。それでも、おまえの隣で戦わせてくれ。頼む」
 その言葉から、肩に乗せられた手から、エドアルドの思いが伝わってくる。それが、心の間に引かれた線を越えられていたことを教えてくれた。それがわからず、自分は怯えて逃げてしまったのだ。
 越えられたんだ、きっと。
 越えられた……。
 肩に触れる熱が胸を熱くする。それがなんだか気恥ずかしくて、カペルはそっと肩の手をどかしながら言った。
「無理だよ」
「おい……」
「だって僕、いざとなったら逃げるし」
 カペルが笑うと、エドアルドも笑った。それだけで何かが伝わったような感触が、嬉しかった。
「そんなこと、私が許すわけないでしょ!」
「わー、ウソですウソです。ごめんなさい」
 アーヤに小突かれながら、カペルは心の底から笑った。
 やっぱり越えられたんだ……。
 それを教えるように、アーヤも、エドアルドも、笑っていた。

【小説インフィニットアンディスカバリー】
【Prev】/【Next】
スポンサーサイト

テーマ: 二次創作:小説

ジャンル: 小説・文学

コメントの投稿

Secret

△top

この記事に対するコメント

△top

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaenovel.blog78.fc2.com/tb.php/251-548ddaea
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

△top

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。