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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第八章「手を取り合って」_25 

「カペルが、新月の民……?」
 唐突に告げられた真実に、頭がついていかない。だが、自分の言葉がカペルを傷つけたのだということだけは、はっきりとわかっていた。先ほどまでの夢の感触が抜けきらない感覚に、今もまだその中だったらと思わざるを得ない。膝に力が入らず、突き倒されたまま、爆散した鎖の雨の向こうに消えていくカペルの背中を見ていることしかできなかった。
 たちの悪い冗談だろ?
 そう言いたかったが、それがどれだけ最低なことなのかは考えるまでもない。
「なるほど、ね」
 誰かの手が肩に触れる感触が逃避を許してくれない。自分に現実を見ろと何度も忠告してくれたドミニカの手が、同じ熱を放ってエドアルドの心を揺さぶった。
「もしかしたら、とは思っていたんだ。ケルンテンで透明化したリバスネイルと遭遇したとき、その存在を教えてくれたのはファイーナだった。リバスネイルが見える力は月印のものじゃない。だとしたら……ってね」
 嘘じゃない。
 カペルは、新月の民なんだ。
 現実の感触を持って飲み下したそれが、腹の底を冷たくする。
「俺は、なんてことを……」
 自分のことばかりでどうしようもなくなってしまった俺をそれでも仲間だと言ってくれたあいつを、知らなかったとはいえ、俺は……
「カペルはカペルよ」
 アーヤがふいに言った。
「だってそうでしょ! これまで一緒に戦ってきたじゃない。新月の民だからってそれは変わらないわ! そうでしょ、ドミニカ!」
 新月の民であったとしても、カペルを受け入れて欲しい。そう懇願する瞳は揺れていたが、アーヤの声音に迷いはなかった。
 その彼女の頭を、子供をあやすようにぽんとたたくと、ドミニカは皆を見回した。最初は驚いていた皆だったが、その視線を受け止めたときには一様に優しく笑っていた。
「アーヤ、行ってあげな」
「うん」
「ま、待ってくれ!」
 カペルの元へ行こうとしたアーヤを引き留め、エドアルドは言葉を継ごうとした。
「俺は……俺は……」
 だが、アーヤのようにまっすぐな言葉が出てこない。
 カペルに謝りたい。だが、どんな顔をして会えばいい。あいつの、おそらく一番深い心の傷を抉るようなことをした自分が、どんな顔をして会えば……。
 言いよどんでいると、アーヤはそのままカペルの元へと向かってしまった。
「アーヤは行ったよ。あんたはどうするんだい?」
「俺は……カペルに謝らないといけない。自分のためにも……シグムント様への恩に報いるためにも、あいつと一緒に戦っていきたいんだ。だけど」
「だったらやることは一つしかないだろう」
 ドミニカは変わらず厳しい一言を投げかけてくる。ずっとそれに反発するしかできなかったエドアルドだったが、それも今は違って聞こえた。
 今はそれが、胸の奥に響いて残る。
「ああ、そうだ」
 やることは一つしかない。ドミニカに引き起こされ、皆の顔を見回すと、エドアルドはアーヤの後を追った。
「まったく、世話のやける英雄様ご一行だね」
 苦笑して聞こえたその言葉を背中に聞きながら、エドアルドは胸の内の迷いを消し去った。
 月印が怖くても、俺は戦う。恐怖という弱さに打ち勝てなくては、シグムント様にだって愛想を尽かされるだけだ。
 俺は、解放軍の一員として戦っていくんだ。

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