2010.05.28 Fri 01:35 -edit-
メモを振り返っているうちに見つけた没ネタを晒してみる。推敲してないのであれな感じですが。
時期は、ヴェスプレームの塔から凱旋したカペルたちが王との謁見を済ませて自由行動になった直後。アーヤさんの部屋に呼び出されたカペルがダメ出しを頂戴するシーンです。時間軸的には第二部の冒頭になるシーンなんですが、全体の構成をガチャガチャいじったために削らざるを得なかったシーンでございます。
※
「ちょっとカペル、聞いてるの!?」
床に正座。
この体勢になってどれくらいだろうか。足がしびれてきたのを自覚しながら、カペルはアーヤの罵声を浴び続けていた。
「ごめんなさい」
「ほら、シグムント様はそんな簡単には謝らないわよ」
「ごもっとも」
アーヤの説教は続く。
光の英雄シグムントの代わりをやる。そう言ったにも関わらず、さっそくボロを出しそうになった。みんなのフォローがあったからこそフェイエール首長との謁見も無事に終わったが、先を思えば自分でも不安になるくらいなんだから、アーヤがそうなるのもわかる。
「もう……カペルがシグムント様の代わりをやるっていったんだからね。自分の言葉にくらい、ちゃんと責任を持ちなさいよ」
そこで言葉を切り、アーヤが大きく溜息をついた。まだ戦いの余韻が残る身体をベッドに放り投げ、天井を仰ぐ。いつも気丈な彼女も疲れを隠せないようだ。
寄り添ってきたグスタフの頭を撫でながら、アーヤがもう一度溜息をついた。
ヴェスプレームの塔の戦いが終わってから、まだ数時間しか経っていない。
王との謁見を済ませると、皆、それぞれの部屋に重い足取りで戻っていった。それぞれの中に、それぞれのシグムントがいて、それぞれの整理の時間が必要だった。
カペルもシグムントにあてがわれていた部屋へと戻ろうとしたが、アーヤに引きずられるようにして彼女の部屋に連行され、それで今に至る。
「……上手くやっていけるのかしら、私たち」
光の英雄シグムントを失った解放軍の戦いは、これからは、月の鎖を斬ることのできる唯一の存在となったカペルを中心に続いていく。光の英雄はここにいる、と世界を騙し続けながら。
「なんとかなるよ、たぶん」
その言い方が気に障ったのか、上体を起こしてアーヤがこちらを睨んでくる。
カペルが思わず首を竦めると、直後、ドアをとんとんと叩く音がアーヤの次の言葉を遮ってくれた。
「姫様ぁ~」
「なによ、ジーナ!」
言い出したのは僕。
英雄なんてがらじゃないのもわかってる。
顔が似ているだけで、シグムントさんの代わりになれるとも思っていない。
頼りがいのあるタイプでも無ければ、いきなり変われるはずもなく、フォローをすると言ってくれたアーヤが気負うのも無理はないというのも、情けないけどわかってしまう。
でもね、アーヤ――
「姫様の声、全部筒抜けです~」
「あっ」
アーヤも気をつけてくれないと、僕も困るよ。
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