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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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ソウルイーター(仮) 第一章_04 

 背の高い木々の葉が夜空を遮っているが、月光はその隙間をぬって大地に降り立ち、必要十分な明かりをノエルたちに与えてくれていた。
 茂みを抜けて多少は広がった場所に出る。そこで立ち止まった少女に合わせてノエルも止まると、振り返るなり少女は言った。
「……フィーア」
「へっ?」
「名前。あんたは?」
「あ、ノエル、です……」
 助けてくれたのだから敵ではないだろうけれど、味方というわけでもないらしい。
 先ほどと同じ表情。なんだかご立腹のご様子だ。
 きつい視線に見据えられ、ノエルは何も言えない。怒りをはらんだ青い瞳を見つめ返しながら、何か悪いことでもしただろうかと考える一方、澄んだその色のせいだろうか、悪意を感じさせない視線が新鮮にも感じられた。
 人間の視線には、自分が思っている以上の情報が詰まっている。それは時に人を救い、時に人を傷つける。ノエルにとって、自分に向けられる視線の多くは後者だった。だから他人の視線に敏感にもなったものだが、フィーアと名乗った彼女の視線の不思議な感触に、ノエルは戸惑うしかなかった。
 沈黙。
 それきり黙りこくったまま、彼女は何かを考え始める。
 年頃はやはり同じくらいだろう。
 腰まで届く黒髪が月光をはらみ、空気の流れに乗ってかすかに揺れる。ワンピースは汚れてしまっているが、透き通るような肌には不思議と傷はなかった。
 考えるときの癖だろうか、指で下唇を弄っているのがどこか幼さを感じさせているが、瞳から読み取れる強い意志は、少女と呼ぶにはあまりに強い。
 つかの間、ノエルは少女の姿に見とれていた。
 最初からそうだったが、何を怒っているのだろう。
 思い当たる節と言えば……。
 ノエルは自分の手に目をやった。思い当たる節。偶然とはいえ、いきなりフィーアの胸を掴んだのも事実。その時には何も言ってこなかったけれど、怒っていても当然だろう。でも、この感触を忘れるつもりはさらさらない。
「ノエル」
「は、はい!」
 いきなり呼ばれて心臓を跳ね上げられる。
「この森に何をしに来たの? ここは人の入ってくる土地じゃないわ」
「何って、クリスタルの情報を聞いてやってきたんだけど。一応それでごはんを食べてまして」
「……やっぱり。あんたなんて助けるんじゃなかった」
「えっ?」
「何も知らずにやってきて、そうやって森を荒らして。あの子たちが興奮するのも、そもそもあの子たちがあんな姿になったも、みんなあんたたちのせいじゃない
「それってどういう意味?」
「知らないならいいわよ。どうせ説明したって無駄。そうやって自分たちの首を絞め続けて……。だから、私たちだけで何とかする」
 話が見えない。
 ただ、怒っている理由は、ノエルがやったことじゃなくて、そもそもこの森にやってきたこと自体に対して、らしい。
「よくわかんないけどさ。助けてもらった恩もあるし、手伝えることなら手伝わせてよ」
「…………」
 手伝わせて欲しい。自分でも思ってもみなかった言葉が口をつき、ノエルは驚いていた。自分の言葉をもう一度かみしめ、彼女に協力したいという気持ちは嘘じゃないと確かめる。
 助けてもらったこともある。
 でもそれだけじゃないかもしれない。
 彼女の瞳の向こうに見える強くて頑なな意志。それがいったい何なのか、興味がある。知りたい。そう感じる自分がいることに気づくと、ノエルは改めて視線を向け直した。
 嘘じゃない。手伝えるなら、そうしたい。
 一度絡まった視線を外し、また下唇を弄りながらフィーアが何か考え始める。気持ちが伝わったのか、自分の言葉を真剣に検討してくれている。それが嬉しかった。
 手を止め、フィーアがこちらに正対する。彼女が口を開いた。
「ノエル、クリスタルはね……!?」
「!?」
 気づいたのは同時。
 二人が後ろに飛んで退けた直後、茂みを突っ切って現れた黒塗りの巨体がその間を割るように飛び込んできた。
「さっきのやつ!?」
 いや、違う、か?
 咄嗟の直感がそう言い、ノエルは胸元のペンダントに手を伸ばした。服の隙間からそれを引っ張り出し、ぶら下がった親指大のクリスタルをぎゅっと握る。
「上手くいってよ……」
 クリスタルが青白い光を帯びる。起動は成功。
 その光は握るノエルの手に移り、指先に集められた。その指を中空に走らせる。凝集した光がインク代わりに紋様を描き出し、それらが意味をなした瞬間、光は爆炎へと姿を変えて敵へと殺到する、はずだった。
 クリスタルのエネルギーを物理現象に変換する記述式。正確に記述したそれは、しかし、この時もノエルの味方をしてくれなかった。
 紋様を描き出すそばから、光が消えていく。
「また失敗っ?」
 不発に終わった記述のロスが、ノエルと獣の爪との距離を埋めていく。
 力の導き方も、記述の方法も、一応は理解している。それなりの訓練も受けたし、上手く起動できたことも何度かある。ただ、ノエルのそれは異常なまでに不安定だった。起動するかしないか、使ってみるまでわからない。それは使い物にならないのと同義だ。そしてそれは、ノエルに対する周りの評価とも同義だった。
 絶望感がノエルを襲う。
 目前に迫る死への絶望感ではなく、この十年、溜めに溜め続けてきた絶望感が胸の奥から吹き出し、ノエルは動くことが出来なかった。
「伏せて!」
 左に回り込んできていたフィーアの声が耳にはじけ、停止していた身体がびくりと反応する。引かれた手の熱の感触が沈みそうになった心を引き上げる不思議に戸惑いながら、突き出されたフィーアの手が光を帯びているのを目の端に捉えると、ノエルは反射的に頭を伏せた。
 ブン、と大気が揺れる。
 フィーアの手から弾き出された光は、そのか細い腕とほぼ同じ太さの帯を形成し、大気を焼き払いながら獣の鼻先を擦過した。膨張した空気が爆風となってあたりを吹き荒れる。
 鼻先を焼かれた獣は反射的に後退し、小さく悲鳴を上げた。その悲鳴につられて顔を上げたノエルは、そばまで駆け寄ってきていたフィーアに腕を引かれてすぐに立ち上がる。
「逃げるわよ」
「う、うん」
 引かれた腕に残ったのは、焼けるような熱と、ひどく硬質なざらりとした感触。その違和感に気づかぬふりをしながら、ノエルは再び走り出した。

【SoulEater】
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テーマ: 自作小説

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