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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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ソウルイーター(仮) プロローグ 

 背中を這う冷ややかな感触に身を震わせ、少女は目を開けた。
 四角い天井。壁。床。
 視線を順にめぐらしてみたが、一面を覆う石壁に表情はなく、変化と言えるのは壁の継ぎ目とカビの汚れが作る濃淡くらいだ。
 今度は逆。
 通ってきた道を戻り、反対側へと視線を移す。少女は息を飲んだ。
 そこには、四角く切り取られた空があった。鉄格子によってさらに等分されながら、鮮やかな青に白を混ぜ込んだ鮮烈な空の色彩が浮かんでいて、それは少女の目を奪うと、凍っていた彼女の心を跳ね上げた。
「あ、ああ……」
 声の出し方を忘れた喉を無意識に震わせ、冷たい床に張り付いた身体を引き起こそうとするも叶わず、辛うじて動いた右手をめいっぱいに格子窓へと伸ばす。
「そ……ら……」
 そう、あれは空。
 訳もわからず流れ出した涙に視界を滲ませながら、それすらも意識の外にして少女はひたすら四角い空を見つめ続ける。伸ばした右手は声と同じように震えていたが、滲む視界と同様に気にもとまらない。
 どれくらいそうしていただろうか。時間の継ぎ目は形を変える雲だけが教えていたが、長さも速さもよくはわからない。変化とも呼べぬ緩慢な雲の動きを見つめ、こぼれ落ちた涙が乾くに至らないわずかな時間が過ぎ、雲と同じ色をした少女の肌に光が当たったそのときだった。
 格子窓の向こうで、青と白の濃淡に混じって黒い染みが一つ、右から左へと流れていったのを少女は見た。雲の中を突き抜けていくわずかな染み。形などわかるはずもなく、点にしか見えなかったはずのそれは、しかし、少女の意識の中にはっきりとした像を結ぶ。
 瞬間、少女の瞳から光が消えた。
 同時に消失した意識の外、獣のように喉を鳴らしながら力任せに伸ばされた少女の右手が、雪のように柔らかだった白を失い、ささくれだった硬質の銀へと変化を遂げる。もはや窓の方へは向けられていないその右手に左手が寄り添い、獣の顎へと姿を変えた両の手が汚れた天井へと捧げられる。
 獣は咆哮を上げた。
 その顎からこぼれだした光が周囲を炙り、瞬間的に膨張した空気が爆発音となって咆哮をかき消す。いや、その爆発音こそが獣の咆哮だった。
 その咆哮よりも早く、光は膨大な熱を伴って天井へと達する。一筋の閃光だったそれは天井を飲み込むほどの光軸へと姿を変えると、部屋の上半分を吹き飛ばして天へと昇った。
 飲み込んだ雲もろとも瓦礫を蒸散させ、天へと還る一本の光。耳をつんざく爆発音は、雷鳴となって青空へと拡散していった。
 遮るものがなくなると、膨張した大気が風となって戻ってくる。その中、空へと捧げられた銀の顎がぶすぶすと燻る音を立てながら、ゆっくりと少女の手へと再び姿を変えた。
 力を失った両手をぼとりと床に落とすと、視界を埋め尽くす空の色を瞳に写し取りながら、戻ってきた意識の中で少女はぽつりと呟く。

「空」
 ――そこは、還る場所。

 その感触が胸の内から広がると、ふいに軽くなった身体を起こして少女は立ち上がり、一歩、また一歩と、つい先ほどまでは部屋の壁だった場所へと足を向ける。
 ごうと吹き上げる風が彼女の腰まで伸びた漆黒の髪を踊らせ、それに従う影のように白の貫頭衣が風をはらんで舞う。周囲に並ぶ同じ高さの尖塔が少女のいる場所を教えていたが、天を仰いだ彼女の目には映ってはいなかった。
「きれい……」
 吸い込まれるようにしてふらりと歩みを進める彼女には、足下など見えてはいない。その足が床を掴みそこねた刹那、両の手を広げて宙に躍り出た彼女は、笑っていた。

【SoulEater】
【Next】
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テーマ: 自作小説

ジャンル: 小説・文学

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