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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第三部 プロローグ 

「た、助けてくれ……」

 かさつく喉をなんとか震わせ、自分を見下ろす緋色の目の少年に向かってシモンは言った。
 もう身体が動かない。
 かろうじて視線を上げてみせるのが精一杯だったが、心の底から懇願しているように見えているのなら、それだけ動けば十分だった。
 傷から流れ出る血は黒く汚れている。どろりと肌を伝って落ちていくその感触だけが妙にはっきりしていた。
 温かい。まだ温かい。
「頼む」
 感覚が失せていく。壁と床の冷たさが感じられず、それがいっそう血の温度を際立たせていた。
 温かい。
 思い出されるのは、育ててくれた祖父母のことだ。
 じいちゃんの膝の上で読んだ絵本のこと。
 あかぎれの目立つばあちゃんの手。
 思い出されるもの一つ一つに温もりがあり、すっかり忘れていたはずのそれらを今さら懐かしく思う可笑しさに頬を緩めたかった。だが、もうその余力も残っていないようだ。
 少年の手の震えが止まった。
 目から色が消え、絡まった視線はここではないどこかを映しているように見える。
 持ち上げられた剣がかちゃりと鳴った。ひどく冷たい金属の音が、働かなくなりかけていた鼓膜を震わせた。
「カペル、やめて!!」
 少年の後ろで少女が叫ぶ。その声に躊躇したのも一瞬で、少年は剣を腰の高さに構えた。
 座り込んだシモンの胸の高さ。切っ先が心臓をしっかりと指し示す。
 ここで、終わりか。
 じいちゃん、ごめん。
 ばあちゃん、ごめん。
 受け取ったものの大きさに比べれば、返せたものは無いに等しい。あふれ出る後悔の念に代わって流れた涙が、シモンの頬を伝った。
 まだ死にたくない。だけど……

「ごめん」

 少年の剣が胸に深く突き刺さる。
 真っ赤に灼けた宝石が割れる音をシモンは聞いた。
 それが、彼が聞いた最後の音だった。

【小説インフィニットアンディスカバリー】
【Next】


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