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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第九章 「追憶」_02 

「で、なんでこの子がいるわけ?」
「と言われましても……」
 この森を歩くのは何度目だっただろうか。鬱蒼と生い茂る原生林は、月の雨によって刻々と姿を変える。そうは言っても、数日程度ではたいした変化は起こらないだろう。先ほどまで降っていた月の雨の影響か、あの気味の悪い現象、木々が脈動する姿が散見され、その度に嫌な気分が頭をもたげてくる。
 鎖の大地で月の鎖を解放した影響はまだ見られるはずもなく、コバスナ大森林は未だモンスターの跋扈する危険な場所だった。
「カペルくんにお願いしたら二つ返事で受けてくれたんですよ。ねえ、カペルくん」
「まあ僕らもハルギータに向かうところだったし、ファイーナさんもそのための護衛を捜しているみたいだったから」
「そういうことなんです」
 言いながら妙に強い力でファイーナに腕を引かれると、太い根の張りだした大地に足を取られてカペルはよろめいた。何やら柔らかな感触にその腕を抱きすくめられなければ転けていたところだった。
「別にそれは構わないんだけど……ってなんで抱きついてるのよ! カペル、離れなさいよ!」
「僕にその自由はないようです……」
 嬉しい感触とアーヤさんのお怒りを天秤にかけ、ここは離れた方がと思わないでもなかったが、ファイーナを無理にふりほどくわけにもいかず、そもそも身動きの取れないほど固められた腕を動かす自由はカペルにはない。
「カペルくんに感謝してるだけなんだから別にいいでしょ」
「だから、それでなんで抱きつく必要があるのよ! ちょっと、は、離れなさいよ!」
 その固められた腕を無理矢理引き抜こうとするアーヤの力も並大抵ではない。腕を引き裂かれそうな痛みに叫び声を上げたいのを何とかこらえ、「ちょ、二人とも、止め――」
 苔に足を取られてカペルが転ぶ。引きずられるようにファイーナとアーヤも転んだ。「いてて」とカペルが腰をさすっているうちに二人はすでに立ち上がり、角を突き合わせ始めている。
 カペルは這々の体で逃げ出した。
「あんたも大変だねぇ」
「ははは……」
 ドミニカにそう言われても苦笑いを浮かべるしかない。その横にいたエドアルドとヴィーカにも肩をすくめられてしまった。
「もう何が何やら……」
 最後尾に二人を残し、カペルはドミニカたちにまぎれて隠れるように歩くことにした。
 先頭はルカとロカ、それにレイムを乗せたグスタフだ。子供たちと談笑しながら道案内をしてくれているのはコマチだった。その後ろをソレンスタムとキリヤの師弟が何やら話しながら歩き、ユージンとトウマが続く。これだけの大所帯で歩いていれば、モンスターもそうそうには近づいてこないだろう。
 後ろからの騒がしい声音は聞こえないことにして進んでいると、トウマがするすると近づいてきて言った。
「カペル、止めた方が良いのではないか?」
「あんたも色恋沙汰に気を回したりするんだね」と驚いてみせたドミニカに、トウマは「いや」と言いながら後ろの二人に視線を向ける。
「あまり騒いではモンスター共に居場所を教えるようなもの。それにこのあたりはドロゴ族の縄張りだ。囲まれては面倒なことになる」
「ああ、そういうことかい」
「それに……」
「それに?」
「オルトロスに見つかってはやっかいだ」
「倒したんじゃなかったのかい?」
 キリヤの庵からケルンテンへと急ぐ途中、巨大なモンスターに襲われたのをカペルは思い出した。トウマがコバスナの主と言っていたあれのことか。
「いや、コマチと二人では到底倒しようもない。あれはコバスナの主のようなもの。我々からうかつに手を出してはならぬ相手よ。そうスバル陛下も仰っていた」
「ふーん。そいつは一度、サシで手合わせ願いたいねぇ」
 にやりと笑うドミニカの顔を見遣り、この人は全く……、と呆れるしかないカペルをよそに、トウマは思案顔で言った。
「……いずれにせよ、目立つ行動は控えた方がいい。モンスターだけではない。我々は封印軍にも狙われる身だからな」
「まあ、それはそうだね」
 封印軍に狙われている。
 町中で襲われたり、野営中を狙われたりしたことはまだない。だが、そういう攻撃があってもおかしくないのは、考えてみたら当たり前だ。封印軍からしてみれば、月の鎖を解放する光の英雄がいなくなれば、解放軍なんてどうということのない相手となる。
(もし狙われるとしたら、まずは僕か……)
 背中が冷たくなる事実に唾を一つ飲み込み、トウマがそういう発想をするというのは、やはり諜報機関である“影”の頭領であるからかとその顔を伺う。
「そんな顔をするな、カペル。そなたは我らが守り通してみせよう」
 にこりと笑うトウマに乾いた笑いで答えたカペルは、嫌が上でも理解させられてしまう自分の置かれた立場を再確認し、それならば単独行動は絶対に控えようと心に誓った。
 その危険の理解は同時に、ケルンテンに残してきたミルシェのことを思い出させた。
「シグムント様を追って飛び出してきちゃったから、整理しなきゃいけないことがあるの。すぐに追いかけるから、カペルくんたちは先にハルギータへ行っててね」
 そう言ったミルシェのどこか寂しげな笑顔を心に浮かべたカペルだったが、後ろから聞こえてきたファイーナとアーヤの声に、それは押し流されてしまった。

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