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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第九章 「追憶」_09 

「またケルンテン、ですか」
「そうです。シグムント、ハルギータの使者としてケルンテンに赴き、緩和剤生産のための協力を要請してください」
「あ、はい……」
「堅くなる必要はありません。細かい交渉事はユージンが上手くやってくれるでしょう。あなたはハルギータの顔として、雪獣王に対すれば良いのです」
 緩和剤の大量生産にはシルバー鋼が足りず、そのため、ケルンテンの協力が必要らしい。その交渉の使者という役割を求められたカペルは、再び謁見の間に呼ばれていた。
「これはハルギータ一国の問題ではありません。月の雨が止まぬようであれば、リバスネイルは世界中の問題となりましょう。ケルンテンを始め、フェイエールやブルガスとも協力しなければならず、今回の要請はその第一歩となります」
「はい」
「ブルガスの蒼竜王にはソレンスタム殿が伝えてくださいますが、残念ながら、ケルンテンと我が国には、そういったパイプはありません。シグムント、ケルンテンを襲ったリバスネイルやモンスターたちを討伐し、街を救ったそなたたちであれば彼らも話を聞く耳を持ってくれましょう。宜しく頼みましたよ」
「出来るだけ頑張ります」
 自分にそんな大役が出来るだろうかと不安にもなるが、女皇の仰るとおり、ユージンさんたちがきっとなんとかしてくれるだろう。自分は代理の代理なのだから、適度に頑張るだけだ。
「炎の皇女、あなたにはフェイエールへの橋渡しをお願いしたいのですが」
「…………」
 らしくもなく押し黙ってしまったアーヤを見遣り、ヴェスプレームの塔での戦いの前、彼女が両親と喧嘩をしていたことをカペルは思い出した。あれ以来、ほとんど口も聞かずにまた飛び出してきてしまったらしく、ドミニカさんもそれを心配していた。協力の要請ともなれば直接会わないわけにもいかず、アーヤはその辺りの複雑な気分を未だ解消できていないのだろうか。
「あの……、今回のケルンテンとの交渉が終わるまでは待っていただけませんか?」
 いつかは帰る場所なのだから、後回しにしても仕方ない。そんなことがわからない彼女でも無いはずで、それでも今は、という気分の方が強いのだろう。
 それを察したのか、優しく慈母の微笑でスバルが答えた。
「フェイエールではいまだ月の雨は観測されていません。まだ時間はあるでしょうから、気持ちの整理をなさい」
「……はい」
「シグムント。シャルーク殿のためにも、皇女を必ずお守りなさい。いいですね?」
「はい、陛下」

 謁見を終え、受け取るものも一通り受け取ると、カペルたちは皇城出口にて集合することになっていた。準備を終えたカペルは、先ほどのことが気になったこともあって、アーヤと共にそこへ向かっていた。
「大丈夫、アーヤ?」
「何がよ」
「いや、さっきの……」
 思っていたよりも冷たい反応に焦っていると、それが可笑しかったのか、彼女は少し笑いながら言った。
「あーあ、カペルに心配されるなんて私も落ちぶれたものねー」
「はは……」
「大丈夫よ。それよりあんたこそ大丈夫なの? 交渉中にボロを出したら承知しないんだからね」
「気をつけます」
 少し元気になった彼女とそういうやりとりをして進むと、出口の近くにある教会の所で、二人を待っている人がいた。
「カペルくん!」
「ファイーナさん、どうしたの?」
「カペルくんたちが出発するって聞いて、それで顔を見に来たの。私たちはもう少しこっちにいるから」
「そうなんだ」
「用事が済んだら一度ショプロンに帰らなくちゃいけないの。それで……、暫く会えなくなっちゃうから」
「気をつけて帰ってね。またみんなで遊びに行くよ」
「うん。待ってる……。ずっと待ってるからね」
「ところで、ずっと気になってるんだけど……、レイムはそこで何してるの?」
 さっきからファイーナの後ろで奇っ怪な体操を繰り広げている彼女の弟の姿が目に入り、カペルは気になって仕方なかったわけだが、
「あれで修行してるつもりみたい。カペルくんみたいにみんなを守るんだ、って」
「僕みたいになったら困るよね。すぐに逃げ出しちゃうよ」
「そんなことないよ、きっと」
「レイムー。危ないことしちゃダメだよー」
「カペル兄ちゃん!」
 こちらに気づいて走ってきたレイムの頭を撫で、カペルはファイーナに言った。
「何かあったら必ず助けに行くから」
「約束だよ」
「うん」
 手を握られ、胸元に引き寄せるようにして「待ってるから」とファイーナに言われ、カペルは彼女の瞳を覗き込む。
 自分の手が届く範囲は狭い。それでも、目の前の一つ一つを片付けていけば、それは彼女たち新月の民を守ることにも繋がっていくのだろうか。封印軍に参加した新月の民も少なくない。誰かを助けるために別の誰かを傷つける。それが避けられないのなら、僕にやれることは、手の届く範囲の人たちを守ること。
 今までずっと、そこには誰もいなかった。守るものもなければ、守るために誰かを傷つけることもなかった世界。複雑になった自分の世界を見つめ、大変だがこれが生きているということなのだろうと感慨にふけってみたはいいが、「うほん」と聞こえた咳払い一つが、とても複雑でとても大変な状況を思い出させてくれた。
 慌ててファイーナの手を離し、アーヤのご機嫌を伺おうと視線を巡らせる。アーヤはそれを無視してファイーナに言う。
「気をつけね」
「アーヤさんも」
 一つ火花が爆ぜた気がしてカペルは後じさったが、「そうだ」とファイーナが何かに気づいてくれたおかげで戦闘は避けられたようだった。
「カペルくん、これ、お守り」
 そう言ってファイーナから手渡されたのは、小さな人形だった。
 カペルの姿を模した人形。ファイーナが手作りしたという人形は、彼女とレイムのものもあるらしく、それをひらひらとこちらに見せる。
「何かあったら、その人形が身代わりになってくれるから、必ず身につけておいてね」
「うん、大事にするよ」
「それと、こっちはアーヤさんの分」
「私のも?」
「うん。また三人で会いたいから」
「……うん」
 思いの詰まった人形は、きっと僕たちを守ってくれる。返せるものは何もないから、今は再会を約束することしかできないだろう。
「おーい、あにきー、置いてくぞー」
 出口の方に皆が集まっているのが見え、ヴィーカがこちらに向けて手を振っている。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
 ファイーナとレイムに見送られて、カペルとアーヤは仲間の待つ場所へと走った。

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