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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第二章 「鎖を斬る者たち」_09 

 剣を振る。
 最近はずっとそうだ。悩み、不安、やりきれなさ、戸惑い、怒り。自分の中で固まろうとする黒いものを消したい時は、こうやって剣を振る。そうすれば無心になれるはずだからだ。だがうまくいったためしがない。その動機に囚われたままなのだから、うまくいかないのは当たり前かもしれない。
 それでも剣を振る。それ以外には何も思いつかない。
 カペル。
 突然俺の前に現れた、シグムント様にそっくりな男。外見だけでなく、鎖まで断ち切ったという男。そんなはずはない。鎖を断ち切れるのは光の英雄シグムントだけなんだ。同じことができる者がいるはずがない。いてはいけないんだ。
 カペル。おまえはいったい何者だ……。
「エドアルドさん」
 呼ばれてエドアルドが振り返ると、そこにはしまりのない笑みを浮かべたカペルが立っていた。エドアルドは思わず視線を外す。ついさっき辛くあたったばかりの相手にいったい何のようだ。
「鍛錬ってやつですか、偉いですね」
「日課だ。偉くも何ともない。いったい何のようだ。何をしに来た」
「そんなにツンケンしないでくださいよ。誤解を解きたいだけなんで」
「誤解?」
「鎖のこと」
 そう切り出して、カペルは要領を得ない説明を続けた。
「――だから僕が鎖を斬れたのは、たぶん鎖がまだ完成していなかったからだと思うんだ。だいたい、月の鎖と同じものかどうかさえわからないし。その場にいたのがエドアルドさんだったとしても、同じ結果になったんじゃないかな」
「……なんだ、嫌みのつもりか?」
 違う。こいつはそんな嫌みを言うようなやつじゃない。それくらいはわかる……。
 エドアルドは、そんなことを言う自分にも、そう言われてもヘラヘラしているカペルにも、苛立ちを覚えていた。
「うーん、なんて言ったらいいのかなぁ」
「……もういい。言いたい事はわかった。次で試してはっきりさせればいい」
「うん、そうだね。邪魔してごめんね」
カペルが踵を返した。
「あ……」
「ん、何?」
 怒鳴ったり嫌みを言ったりしたままで行かせてしまうのは後味が悪い。そう感じる心にか、息が詰まるような苦しさを覚えたエドアルドは思わず声を漏らしてしまった。
「……悪かったな」
「何が?」
「! だから、その、おまえの過去のこととか……」
「いいよ、別に。事実だしね」
「……そうか」
「優しいんだね、エドは」
「なっ! 調子に乗るな! エドなんて呼んでいいとは言ってないだろ」
「ごめんなさい」
「もういい、邪魔だ、行け」
「じゃあまた明日。おやすみ、エドアルド」
 そう言い残してカペルは帰っていった。
 カペル。
 さりげなく呼び捨てにしたことは、まあ許してやる。
 おまえが鎖を断ちきれるかどうかも、この際どうでもいい。
 おまえには戦う意志がない。それは決定的なことだ。
 だから、シグムント様のお側にいるのはこれからもおまえじゃない。
 この俺だ。
 雑念を振り払うように、エドアルドは大剣を振り下ろした。すっかり手に馴染んだ得物は、いつもより鈍い音をたてて虚空を斬った。
 




 月が煌々と照る深夜。
 あてがわれたブルガス城内の一室で、シグムントは一人だった。
「エンマ……いるか」
「はっ」
 シグムントが呼ぶと、誰もいないはずの影の中から一人の男が現れた。一つに結んだ白髪と顔の皺、それに無数の傷跡。彼の生き様とその長さを物語る一つ一つが、影に隠れる技を紡いできた長い道程をも語っている。エンマは、シグムントに仕える忍びの一人だ。
「すべて思い出した。すべて……」
 月光を受けた月印が薄暗い部屋に赤く浮かび上がる。授かったばかりのそれを見つめながら、シグムントは続けた。
「苦労をかけたな」
「お館様」
「エンマ、頼みたいことがある」
「……はっ」

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