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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第三章 「新月の民」_01 

 照りつける太陽は世界で最も大地に近く、視界を埋めるのは黄金色の砂と赤茶けた岩石ばかり。遠くには猛烈に吹き上げる竜巻の姿も見える。そんな過酷な土地にさえ生活圏を広げられるのは、フェイエールの国民の逞しさ、と言うよりも、月印の恩恵によるところが大きかった。
 カペルたち解放軍一行が、ブルガスとフェイエールを繋ぐ陸路、オラデア砂丘に入ったのは、ブルガスを発ってから一週間ほどが経過した頃だった。
「あーつーいー」
「ほらそこ、だらだらしない!」
「ブルガスはあんなに過ごしやすかったのにさ。フェイエールは暑すぎるよ……。っていうか、アーヤはなんでそんなに元気なのさ」
「言わなかったっけ? 私、フェイエール出身なの」
「ああ、それで」
「そう……もう、あんたがそんな顔してたらこっちまで暑くなってくるじゃない!」
「僕じゃなくて太陽に怒ってよ……」
 今歩いているのは、ブルガスとフェイエールを繋ぐ街道で――と言っても整備されているわけではなく、ところどころに道標が立っているだけだが――散在するオアシスを基点として東西南北に広がる交通網の中でも、比較的穏やかな気候ではあるらしい。砂丘の中でも辺境部になると、岩石さえも風化して延々と砂だけの世界が広がっているという話だ。想像しただけで背筋が凍る思いだが、生理的には熱い汗が噴き出すばかりだ。
「ああもう、うるさい! 暑いんだから、静かに歩け!」
 黙々と前を歩いていたエドアルドもまた、この暑さにはまいっている様子で、カペルたちのやり取りに業を煮やしたのか、立ち止まるといきなり怒鳴り散らし始めた。
「エドアルドの方がうるさいじゃないか」
「ぐっ……カペル、お前……」
「がーっはっはっはー。なんだお前ら、だらしねえぞ」
「だらしねーぞ」
 大汗をかきながらもむしろ元気になって見えるバルバガンが言うと、すっかり仲良くなったルカとロカが真似てみせる。
「ほんとよ、まったく。参ってるのなんてあんた達だけじゃない」
 そう言われて顔を上げたカペルとエドアルドが皆を見回すと、アーヤの言うとおり、暑さにやられているのは二人だけだった。苦笑を浮かべているユージンに、微笑を湛えるソレンスタム。日傘を差しているミルシェが微笑みかけるが、カペルには答える元気が無かった。
「ソレンスタムさん、そんな厚着で暑くないんですか?」
 全身をすっぽりと覆ったローブは見るからに暑そうで、その格好で涼しい顔をしていられるソレンスタムがカペルには信じられなかった。
「蒼竜王に無理を言って同行を許してもらったのです。最初から根をあげるわけにはいきませんからね」
 それで暑くなくなるのなら自分も蒼竜王に無理を言っておくべきだった、と埒もない思いを抱いたカペルだったが、そのとき、ソレンスタムの手から何か光るものが落ちるのを視界の端に捉えた。
「滴? ……あっ!」
 よく見れば、ソレンスタムは氷の塊を握っていた。こんな場所で氷が取れるわけがない。だとしたら……、そうだ、魔法だ。だから魔術師連中は涼しい顔をしているのだ。
「ずるいですよ! 僕にもわけてくださいよー」
「よろしいですか?」
「ダメ」
「ちょっと、なんでアーヤに聞くんですか!?」
「ダメよ、暑さなんて慣れればどうってことなくなるんだから。もうすぐオアシスだから我慢しなさい」
「そんなぁ……」
「……」
 何か言いかけたエドアルドはアーヤの言葉にぐっとそれを飲み込んで、トボトボと歩き出した。カペルも仕方なく歩き出す。二人は肩を並べて、同じようにうなだれながら進み始めた。
「シグムントさん、暑くないんですか?」
 先頭を行くシグムントに追いつくと、カペルはそれとなく尋ねてみた。
「……暑い」
 汗一つかいていない。カペルは嘘だと思った。

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