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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第三章 「新月の民」_02 

 日暮れを過ぎてからもなかなかオアシスには到着しなかった。ようやくたどり着いた頃頃には、昼間の暑気が嘘のように、少し肌寒ささえ覚えるようになっていた。オラデア砂丘の気候とはそういうものらしい。
「さーむーいー」
「ほらそこ、ぐだぐだ言わない!」
「昼間はあんなに暑かったのにさ。夜になったらこれだもん。汗も冷えちゃったし、ご飯もまだだし――」
「はいはい、わかったから薪を集めに行くわよ」
「アーヤ、よろしく」
「あんたも来るのよ!」
 そう言って、アーヤはカペルを引きずるようにして行ってしまった。
 シグムントがその様子を見ていると、隣にいたユージンが話しかけてきた。
「あの二人、ずいぶん仲良いみたいじゃないか」
「ああ」
「アーヤくんが僕らと一緒に来るって言ってきた時は、なんていうか、張り詰めていて危うげな感じだったけど、カペル君と会ってからは生き生きとしているように見えるよ。そう思わないか、シグムント?」
「そうだな」
「彼は不思議な子だね……なあ、シグムント。カペルくんのこと、どうする気だい?」
「どういう意味だ」
「彼は鎖を斬れるっていう話だろ。もし本当なら、しばらくは彼に任せて少し休んだらどうだい。身体の調子、悪いんだろう?」
「……」
 ユージンとは物心ついた頃からの付き合いだった。人付き合いの苦手なシグムントには、友人と呼べる人間は数えるほどしかいないが、彼はその中の一人だ。だからこそ、隠していてもばれてしまうこともある。
「カペルの意志次第だ。嫌だと言えばやらせようもない」
「それはそうだけど」
「まだ戦える。自分の身体のことは自分が一番よく知っているさ」
「あまり無茶はするなよ、とは言えないか。女皇様も心配していらっしゃるだろうから、僕にだけはきちんと話すんだよ」
「ああ」
 シグムントはハルギータ女皇国の女皇、スバルの顔を思い浮かべた。シグムントはハルギータ女皇国の出身で、孤児だった。それを育ててくれたのは女皇スバル自身だ。国民すべてを我が子のように慈しむ女皇の心は、今、月の鎖に苦しむ人たちを思う心となっている。だからシグムントは戦いに出た。スバルの心労を少しでも軽くするために。
 その最初の戦いで、自分が月の鎖を断つことができるということがわかった。それからは連戦だった。疲労が抜ける前に次の戦いへ。傷が癒える前に次の戦いへ。月の鎖の所在がわかる度に、シグムントはその地に赴いた。鎖を断てるのは自分だけだからだ。自らが望んでの事だったが、心とは違い身体は正直だった。
 プレヴェン城の戦いのあと、シグムントは血を吐いた。誰にも見せなかった。
 気がつけば、身体はどうしようもないほどに蝕まれていた。月印の力は届かない。それを知っているのは治癒術師であるミルシェだけだ。そのミルシェには口止めをしてある。自分の死期というものに、何となく思いを巡らすことが多くなった。そんな時に現れたのがカペルだった。
「お館様」
「エンマか」
 影の中からエンマが現れた。エンマとその配下には、オラデア砂丘周辺の調査を命じてある。その報告に来たようだ。
「南に新たな月の鎖が打ち込まれたようです。避難してきた者の話によれば、南にある小さな村の近くだと。正確な場所は部下が今、調査しております」
 月の鎖。その言葉に、シグムントの身体の奥で傷が小さく疼いた。
「封印軍は?」
「それほど規模は大きくないようですが、少なくとも二体のトロルは目撃されています」
「シグムント、どうする?」
 ユージンが問う。答えは決まっていた。
「翌朝、その村へ向かう」
「……そうだね。だけど、まずはアーヤ君に話を聞こう。この辺りの地理には詳しいだろう。何か知っているかもしれない」
「ああ」

 しばらくすると、アーヤとカペルが薪を集めて帰ってきた。砂丘と言ってもオアシスの近くには潅木も散在している。一晩分の薪程度なら何とかなる。
「ほら、ぶつぶつ言わずに歩く歩く。雑用をやらない新入りなんていないんだから」
「僕、雑用係なの?」
 行った時と変わらない調子で帰ってきた二人に、ユージンが声をかけた。
「アーヤ君、ちょっといいかな?」
「あ、はい」
 二人は薪を手近に置くと、シグムントたちのところにやってきた。
「どうしたんですか?」
「ここから南にある村のこと、何か知ってるかい?」
「南……ショプロン村のことでしょうか?」
「どういう村なんだい?」
「ショプロン村は……、その、新月の民が作った小さな集落です。フェイエールの統治下というわけではないので、あまり詳しい事はわかりませんが。何かあったんですか?」
「ああ。そのショプロン村に、どうやら月の鎖が打ち込まれたらしい」
「ショプロンに!? あそこには封印軍と戦える人なんていないはずです!」
「新月の民の集落なら、そうだろうね。そういうわけだから予定を変更することになるよ」
「はい。でも封印軍はどうしてそんなところに……」
 ここで考えても仕方のないことだとシグムントは思った。鎖があるのなら、まずはそれを斬ることだ。
「翌朝、ショプロン村へ向かう。アーヤ、案内を頼む」
「はい」
「ユージン。おまえはフェイエールに向かい、遅れる旨を伝えた上で事前協議を始めておいてくれ」
「わかった」
「ソレンスタム卿には、ユージンに同行していただく。エンマたちを護衛につける」
「その方が謁見も円滑に進むでしょう。お引き受けします」
「残りの者はショプロンへ向かう」

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