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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第三章 「新月の民」_03 

 砂丘で野営ともなれば、食事は簡素なものだ。それでも丸一日歩き続けた身体には染みるようにおいしく感じる。空っぽになった胃へ食事を流し込む作業に没頭しながら、カペルはしみじみとそう思った。
「また行きたくないとか言い出すかと思ったら、今回は素直についてくるのね」
 カペルの隣に座ったアーヤが言った。彼女には炎の明かりがよく似合う。焚き火を照り返す頬が赤く染まり、少女の面影がいつもより艶を帯びたように感じる。それで思わず目をそらすと、アーヤの向こう側に、バルバガンと一緒になってくつろぐルカとロカの姿が見えた。ふと、なんとなく二人を取られた気分になって、カペルは身勝手な寂しさを少しだけ感じた。
「新月の民の村、っていうのに興味があってね。珍しいでしょ?」
「そうなの?」
「新月の民の大半は、住む土地を持たない放浪の民なんだ。持たないというか持てないんだけど……。街には彼らの居場所は無いからね。だから多くは街を点々として行商みたいなことをやってるんだよ」
「それは知ってるわ。フェイエールにも行商は来るもの。でも……あの人達、帰る場所が無かったんだ」
「そう、僕と同じ、根無し草ってやつ」
「カペル、やけに詳しいわね」
「……僕は旅芸人だからね。アーヤよりはいろいろ世界を見てきてるつもりだよ」
「ふーん、カペルのくせに生意気ね」
「……これまた理不尽な物言いで」
 ただ、最近はモンスターが増えたせいで旅をするのも難しくなってきているだろう。そうなれば街に留まるしかないわけだが、街には彼らの居場所はない。力の弱い者、縁起の悪い者、理由は何でもいいのだろう、侮蔑の目があるからだ。それに同情する人が憐れみの声をかけてくる。それさえも彼らを苦しめることになる。
「カペル、ついてこい」
 シグムントが言った。カペルはそれに従って、皆とは少し離れた場所でシグムントと二人になった。
「どうしたんです?」
「……お前はフルート吹きだと言っていたな」
「そうですけど」
「貸してみろ」
「えっ、これですか?」
 予想していなかった言葉に戸惑ったが、カペルは言われるままにフルートを渡した。
「これは」
「青龍を助けた時に貰ったんです。ずっと使っていたものは封印軍に取られたままで……」
「そうか」
 フルートを受け取って何をするのだろうとカペルが訝しげに思っていると、シグムントはおもむろにそれを吹き始めた。
 どこか懐かしくも感じる、どこか寂しくも感じる、聞いたことがあるようで無いような不思議な曲。驚いたのも一瞬、カペルは少しの間、シグムントの笛に耳を傾けていた。
 本当に不思議な感覚だった。すべてを任せてしまってもいいような、大きな包容力を感じる旋律。それが曲のせいなのか、それとも奏者のせいなのか、カペルにはよくわからなかった。
「……返すぞ」
「シグムントさん、フルート吹けるんですね。意外だな」
「昔取った杵柄だ」
「……しかも僕より上手いかも」
「カペル」
「は、はい」
「この先、お前はどうするつもりだ」
「どうするつもりって、明日はショプロン村に行くんですよね」
「その後のことだ。私たちはこれからも戦い続ける。おまえはどうする」 
 戦力になるほどに自分は強くない。何よりも戦うことに慣れていないし、慣れたいとも思わない。月の鎖が斬れるかもしれないというのも、シグムントがいれば大して意味のないことだ。それでもついて来いと言っているのか。それともただ飯ぐらいの厄介払いでもしようというのか……。
「いきなりそんなこと聞かれても困りますよ。しばらくはお世話になるつもりですけど」
「そうか」
「あの、一緒に行ってもいいんですか?」
「認めたのは私だ。かまわん」
「よかった。今ダメって言われたらアーヤに怒られるところでしたよ」
「そうなったら私も一緒に怒られよう」
「……冗談、ですよね?」
「……」
「……」
「カペル、明日は私の側で戦ってもらう」
「はい」
「お前に鎖を斬らせるつもりだ」
「役には立たないと思いますよ」
「……かまわんさ」
 シグムントが夜空を見上げた。それにならってカペルも見上げる。
 わずかに欠けた月が巨大な鎖を大地に降ろしている。あれを僕が斬る。出来る自信はなかったが、やるだけやってみればいいと思える余裕が、今のカペルにはあった。

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