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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第三章 「新月の民」_06 

「ようやく来たか」
 封印騎士は、鎖の前に仁王立ちしていた。プレヴェン城で戦ったレスターよりも一回り大きな体躯を銀の甲冑で包み、橙の意匠をあしらった両手剣を墓石のように大地に突き刺している。
「ほんと、いい女は待たせるものじゃないわよ」
 サランダだ。
 今回も月の鎖に腰掛け、高みの見物としゃれ込んでいる。赤いドレスとサディスティックな笑みも変わらない。
 封印騎士が剣を抜いた。それに呼応してシグムントが一歩前に出ようとしたが、それよりも先にエドアルドが前に出た。
「俺がやります」
 頑なな声色は、どこか危うげなものさえ感じさせる。だが、そうエドアルドに言ったところで譲ろうとはしないだろうことも、何となく想像がついた。
 エドアルドの後ろ姿を見つめていたシグムントは、「気をつけろ」とだけ言って剣を納めた。
「ありがとうございます!」
 言うなり大剣を構え直し、エドアルドが一歩前に出る。
「相談は終わったかい? だったらこっちもいくよ、セムベラス」
 プレヴェン城で見た赤い光。サランダの手からそれが降り注ぐと、セムベラスと呼ばれた封印騎士の腕に月印が浮かび上がり、大きく脈動した。
「ふぅ……。力が溢れてくる。これが、レオニード様の……」
「さあ行きな、セムベラス」
「おう」
 その言葉を合図に、エドアルドと封印騎士が同時に飛び出した。
 交錯する。
 月印による爆発的な推進力が、激突した二人を中心に衝撃波を巻き起こし、カペルは思わず顔を腕で守った。
 まずは力比べだ。剣を重ねて二人が押し合う。
 つばぜり合いの均衡は、体格で勝る封印騎士がエドアルドを押し込む形で崩れた。均衡が崩れると堰を切ったように一気に押し込まれ、岩壁に叩き付けられるかと思えた刹那、エドアルドは封印騎士の勢いをいなして、その突進から逃れるように飛び退いた。
 着地と同時に再び踏み込む。速い。
 エドアルドの突きは、今度は封印騎士がいなす形で避けられた。いなすと剣を素早く上段に構え直し、叩き付けるように切り下げる。エドアルドは大剣を跳ね上げ、それを真っ向から受け止めた。
 またしばらく押し合う。そして二人は、同時に距離をとった。
 お互いダメージはない。互角のように見える。ただ、エドアルドの息は荒くなっていた。
「すごい……」
 またぶつかる。
 カペルは見守るしかなかった。あのセムベラスとかいう封印騎士は相当の手練れだ。カペルにだってわかる。それに一歩も引けを取っていないエドアルドに、カペルは感嘆せざるをえなかった。毎日の修練の賜物だろうその強さは、自分には到達することの出来ないものなのだという風にも思えた。
「なんだかんだでエドは強いわよ。誰かさんと違って努力家だもの。でも……」
 押されている。力は拮抗しているが、まったく同等というわけではない。わずかに封印騎士の方が勝っている。技術の差なのか、それとも戦闘経験の差か。あるいは月印の性能の差か……。いずれにせよ、そのわずかな差が積み重なり、エドアルドは押され始めていた。
「どうした、小僧! 息が荒いぞ」
「はぁ……はぁ……くそっ、まだだ!」
 そう叫んで出した突きもかわされ、よろめくエドアルドを封印騎士が襲う。間一髪でかわしてはいるが、その差は徐々に開きつつあった。
 戦いを傍観していたカペルは、その時、封印騎士の変化に気づいた。月印が強く光り出している。それに加えて、竜骨の祠やプレヴェン城で感じたものと同じ違和感を感じた。
 今度こそ見定めようと目を凝らす。あれは――
「……鎖!?」
 普通の月印とは違うこと。それは月印の上に赤い鎖が浮かび上がっていることだ。まるで、封印騎士の腕に縛り付けるように……。
「カペル?」
「アーヤ、あの月印、何かおかしくない?」
「おかしいって……」
 アーヤが目を細くする。
 瞬間、月印に新たな変化が起こった。
 鮮やかな赤い色を放っていた月印が反転、どす黒く染まっていく。星のように光っていた赤が、今は血の色と同じだ。
「おや、やっと始まったみたいだね」
「サランダ、これは……ぐあああああ!」
 手で顔を覆い、身をよじる封印騎士の姿は明らかに苦しそうだ。逆にサランダの顔には喜悦の色が見て取れる。
「ちょいと我慢しな。あんたはもうすぐ解放されるんだ」
「はぁ、はぁ、くそ、くそおおおおおおお!!」
 苦しみにもがき、封印騎士は絶叫する。
「エドアルド、離れろ!」
「えっ……」
 シグムントが叫ぶと同時に、封印騎士の身体を覆っていた赤い光が、文字通り爆発的に拡散した。衝撃波が粉塵を巻き上げ、土煙となって視界を閉ざす。
 それに弾き飛ばされたエドアルドは、すぐに体勢を立て直していた。怪我は無い。それを確認すると、カペルは土煙の向こうに意識を集中した。徐々に視界が晴れてくる。その先に人影。
 封印騎士が立っていた。姿が徐々にはっきりと見えてくる。

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