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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第三章 「新月の民」_11 

 オラデア砂丘には、岩壁をくりぬいたような自然のトンネルが散在している。普段は太陽の光をしのぐための通路として使われているそれも、今は新月の民の簡易の避難所となっていた。
「どーも。治癒術師のミルシェでーす。怪我した人がいたらおっしゃってくださいね。お姉さんが治しちゃいますよー」
 解放軍の一人らしい女性が来て笑顔を振りまいているが、まだ状況がよく飲み込めないでいる村人たちは、女性の提案にどう答えていいかわからずに戸惑っている。
「どうしたんです? 怪我人、いないのかしら。それはそれで嬉しいけど、お姉さん、ちょっと寂しいかな……」
 何故か落ち込み始めたミルシェという女性は、そう言いながら村人たちの間を行ったり来たりし始めた。怪我人を見つけると、些細な傷でもすぐに治療に入る。治癒の光を見て複雑な表情を浮かべる村人たちを意に介さず、ただ怪我を治療することに集中している姿は、女の目から見てもきれいな人だと思えた。
「姉ちゃん、聞いた? あの人たち、解放軍なんだって。すっごいね!」
 解放軍の戦いを間近で見ていたせいか、弟のレイムは少し興奮気味だ。
「……そうね」
「僕と年の変わらないような子までいるんだよ。あー、僕も月印が使えたらなぁ……」
「それは言わない約束でしょ?」
「そうだった。あー、でもなー」
 そうこうしているうちに、戦いを終えた解放軍の面々がやってきた。さっきの少年も一緒だ。隣にいる女性が、カペルがアーヤと呼んでいた人だろうか。その二人が話しかけてきて、一緒に逃げてきた村の老人が応対している。
「あの、ショプロン村のみなさんですよね」
「そうですが」
「私たちは解放軍です。ショプロン村の鎖は、先日、私たちが解放しました。もう村に戻っても大丈夫ですよ」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます。ありがとうございます!」
「……アーヤ、でもいいのかな。このままこの人たちだけで帰らせたら、また同じようなことになっちゃうんじゃない?」
 カペルが少女に話しかける。カペルの言う通りかもしれない。鎖を斬ってすぐにモンスターが大人しくなるのなら、私たちが襲われることもなかったはずだ。
「それは……そうね」
「送っていくわけにはいかないぞ。俺たちにそんな時間はない」
 二人の会話に、身の丈ほどもある大剣を持った男が割って入ってきた。よく見れば、彼もまた自分と同じ年頃だ。先ほどの子供たちやカペル、その隣にいる少女もそうだが、解放軍は、想像していたような屈強な傭兵団というわけでもないらしい。
「カペル、目的を忘れたのか? 俺たちは月の鎖を斬るために戦っているんだ。一刻も早く鎖を斬ることがこの人たちのためにもなる。それぐらい、お前にもわかるだろ」
「それはそうかもしれないけどさ……」
 不服そうに口を尖らせるカペルは、自分たちのことを新月の民とわかっていながらも心配してくれているらしい。
「シグムント様、何とかなりませんか?」
 カペルの隣にいたアーヤという少女が、懇願するように後ろにいた男に尋ねた。
 彼が光の英雄シグムント。白銀の甲冑に赤いマントを翻し、何もせずとも、その佇まいだけで精悍さを感じさせる彼は……。
 驚いた。その顔立ちが、雰囲気は違えど、カペルと瓜二つだったからだ。
「双子なのかな?」
 レイムが小声で聞いてきた。ファイーナにわかるはずもない。わからないが、彼がカペルと同様、自分たちに同情的かもしれないとファイーナが期待したのも、二人がそっくりなことを考えると自然なことだったかもしれない。
 しかし、そのファイーナの期待はすぐに彼自身の言葉で否定されてしまった。
「フェイエールへ向かう」
「そんな!?」
 アーヤが声を上げるが、シグムントは何も言わない。カペルも押し黙ったままだ。
 新月の民を救おうなんて奇特な人がいるはずもないことは重々承知していたはずだった。勝手に期待を抱いて勝手に失望しただけだとファイーナは自分に言い聞かせるが、気分が重くなるのは否定できない。そして、また襲われたらと思うと身体が竦んでしまう。
「……じゃあ、僕が送っていきますよ。僕なら、いなくなっても困らないでしょ」
 思わず顔を上げる。言ったのはカペルだった。
「駄目だ。お前は次の戦いに連れていく」
「駄目って……。だったら、ここでお別れですね。僕はもともと解放軍の一員ってわけでもないですし、どうせ戦力外だし。これからは別行動ってことで」
「カペル!?」
 アーヤが抗議の声を上げる。
「ほんとは面倒だけどね。痛いの嫌だし。でも、見捨てたら寝覚めが悪くなっちゃうでしょ。ね、アーヤ?」
「あっ……」
「というわけで、今までお世話になりました」
 カペルは、解放軍を離れて自分たちを助けてくれると言ってくれている。彼が何故そこまでしてくれるのかは、ファイーナにはわからなかった。
 それはシグムントも同様なのか、表情は変えないまま黙り込んでしまった。カペルもまた、返事を待って黙っている。こうして黙って並んでいると、本当に鏡に映したように二人はそっくりだ。
「……七日だ」
 口を開いたのはシグムントだった。
「えっ?」
「カペル、七日で帰ってこい。いいな」
「……帰ってこい、ですか」
「ああ」
「わかりましたよ。七日ですね」
 シグムントにそう返答すると、カペルはこちらを見てニッと笑った。視線が合い、ファイーナは頬が熱くなったような気がして思わず顔を伏せてしまった。

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