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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第三章 「新月の民」_19 

「はぁー、やっと着いた」
「お疲れさま、カペル」
「アーヤこそ」
 とうに日は暮れ始めていた。
 モンスターとの遭遇戦も何とかしのぎ、カペルたちは無事に村人を送り届けることができた。その結果が、今、目の前にある。
 赤く焼けた村の中央広場では、カペルが送り届けた村人たちと、村に残っていた人たちが思い思いに再会を喜び合っていた。夕日に伸びた影が幾重にも重なり合っているのを見て、柄にもなく頑張った甲斐があったものだと、カペルは充足と疲労をない交ぜにして感じていた。
「怪我はどう? さっきは途中になっちゃったけど」
「うん、もういいみたい」
「後でもう一度見てあげるわ。帰りにモンスターに襲われてから、痛いーって泣きごと言われても困るしね」
 アーヤにどう思われているのかが何となくわかる発言に、カペルは乾いた笑いを浮かべるしかなかった。助けられてばかりの今までの戦いのことを考えればそれは仕方ないとも思えるが、もう少し評価されてもいいとも思う。男としては少々情けない。
「あの、今日はもう遅いですから、みなさん、うちで一泊していってください」
 ファイーナが遠慮がちに申し出てくれた。願ってもない申し出だ。
「助かります」
「ちょっとカペル!」
「お言葉に甘えて休ませてもらおうよ、アーヤ。僕、もうおなかぺこぺこ」
「ファイーナさんの迷惑も考えなさいよ、まったく……」
 そう言うアーヤも疲労は隠せない様子で、結局、ファイーナの申し出を受けることになった。


「あ、あの、カペルさん!」
「ん、何?」
 レイムに先導されてたどりついた家の前。
 ふいにファイーナが大きな声を出したことに驚いて、カペルは足を止めた。
「今回は本当にありがとうございました。命を救ってもらっただけじゃなくて、村にまで送り届けてもらって」
「ほんと、がんばったよね、僕」
「カペル、あんたねぇ。そういうことは自分で言わないの」
 調子のいいことを言えばアーヤが突っ込みを入れる。いつのまにか当たり前になっているそのリズムが心地良い。何かに怒っていたのも、戦いのどさくさで忘れてしまっているようだ。
 逆に、機嫌の良かったファイーナは、今は思い詰めたような堅い表情をしている。モンスターに襲われたのだからそれも当然かとカペルは納得してみたが、どうもそれとは違うような気もした。
「ファイーナさん?」
「あの、お礼をさせてください。私、カペルさんのしてほしいこと……な、なんでもしますから!」
「いや別にお礼なんて……って、な、なんでも!?」
「ほらそこ、変なこと考えない」
 かわいい女の子に何でもしてあげると言われて、変なことを考えない男はいないだろう。相手の意図がそこにないことがわかっていても、男は妄想を止められないものだ。その辺りの機微をアーヤはわかっていない。これは男の性であって、カペルだって本気で期待したわけではないのだ。
 だが……
「カペルさんなら、別に変なことでもいいよ……」
「……!!」
「!!」
「あ、やだ、あたしったら。何言ってるんだろ」
「な、なんでも……」
「カペル!!」
 アーヤに一喝されて、カペルは身を竦めた。
「ちょっと、ファイーナさん、何言ってるかわかってるの!?」
「……アーヤさんはどうなんです?」
 大人しそうな印象のファイーナの語調がいつになく強いことにカペルは驚いた。それはアーヤも同じようで、二人の間の空気が急に張り詰めていく。
 い、息が詰まる……。
「ど、どうって……」
「私はカペルさんのためなら何だって出来ます。あなたは出来ないんですか!?」
「で、出来るわよ!!」
「…………アーヤ?」
「う、うるさい! 知らないわよ。な、なな、何言ってるの!?」
「いや、それは僕の台詞でして」
「わ、私、もう行くからね!!」
 そう言って、アーヤは地面を踏み砕かん勢いで今来た道を戻っていってしまった。
「行くってどこにさ。ちょっと待ってよ、アーヤ! じゃ、じゃあ、ファイーナさん、また後で。とりあえず気持ちだけもらっておくってことで」
「……うん」
 ファイーナと目を合わせるのを気恥ずかしく感じたカペルは、これ幸いにとその場を後にした。ファイーナには少し悪い気もするが仕方ない。
「気持ち……か」
 だから、ファイーナがそう呟いたのを聞いたのは、隣にいたレイムだけだった。

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