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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第三章 「新月の民」_23 

「いやー、危ない危ない」
 そう呟きながら、人気の無くなった夜の広場をカペルは歩いていた。
「もう少しだったんだけどなぁ。惜しかったなぁ……」
「何が惜しかったって?」
「ド、ドミニカさん!」
 カペルが顔を上げると、そこにいたのはドミニカだった。手には愛用の槍を持っている。
「いや、べ、別になんでも……。その、ドミニカさん、こんなところで何を?」
 ドミニカはにやりと笑うと、槍をぶんと振り回し、切っ先をカペルの鼻先でぴたりと止めて見せた。
「あ、あの」
「食後の運動だよ。鍛錬は欠かせないのさ。こう見えても私はプロの傭兵だからね」
 こう見えてもも何も、どこから見てもプロの傭兵ですよ、とは思っていても言えない。
「坊やもどうだい? ちょっと付き合いなよ」
「遠慮します。僕、そういうの苦手でして」
「そうなのかい? それなりに使えると聞いてるけど」
「僕の本業はフルート吹きですよ」
「フルート?」
「あの、アーヤから聞いてません?」
 どうやらフルート吹きとは紹介してくれていないようだ。まさか本当に「ただのカペル」で終わらせてしまったのだろうか……。
 こうしてしばらく話してみると、少しおっかないところはあるものの、ドミニカも優しい人なのだろうということはわかってくる。豪快に感じる笑い方も嫌みな印象はまったく感じさせず、気の良い姉御肌といった雰囲気は、慕う人も多いのだろうと思わせるものがある。たぶん、アーヤも彼女のそんなところに惹かれているのだろう。
「……しかし、坊やもいろいろ大変だね」
「そうですよ。こうやって戦うのなんて、ほんとは嫌いなんですから」
「いや、そっちもそうだけど」
「えっ?」
「……まっ、そのうちわかるさ。嫌でもな」
 含みのある笑みを見せると、ドミニカは視線を月に移した。頬の横で月明かりを照り返す槍の切っ先が、ドミニカの瞳に影を映し込む。
「坊や、アーヤのこと、しっかり守ってやるんだよ」
「いやあ、それが守られてばっかりでして」
「ははは。アーヤの言っていた通りだ。おもしろいやつだね、あんた」
「アーヤが僕のことを? な、なんて言ってたんですか?」
「知りたいかい?」
「そりゃもう」
「……ふふふ。やっぱいいよ、あんた。気に入った」
「どうもどうも。で?」
「フルートはまた今度聞かせてもらうとして、私はもう戻るよ。じゃあな、坊や」
 そう言って、さわやかに笑いながらドミニカは行ってしまった。
「え、ちょ、だからアーヤはなんて言って……。はあ、行っちゃった」
 アーヤのことを守れ、か。
 今のままでは守られてばかりだ。だからといって、急に強くなれる方法なんてあるはずがない。なぜなら……。
 青白い光を夜空にたたえながら、月はいつもの場所に鎮座している。一番近い鎖は西の山へとおりていて、そこが次の戦いの地、ヴェスプレームの塔のある場所だと教えていた。
 右手を月に向けてかかげ、握りしめてみる。カペルのこぶしは月よりも小さく、捕まえることが出来ずにただ影を落とすだけだ。
 カペルは握りしめた右手を胸元に引き寄せ、自分に何が出来るかをそれに問いかけてみた。こぶしを開いてみてもそこに答えはなく、もう一度強く握りしめたが、やり場のないそれは、力なく下ろすしかなかった。

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