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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_02 

 堅牢な外壁は、外敵からではなく、強烈な日差しと砂嵐から街を守るためのものだ。門をくぐり、その外壁を抜けると、フェイエールが誇るメインストリートが伸びていた。
 交易の盛んな街だけあって、メインストリートは露店と人だかりで埋め尽くされている。世界中の品々が砂丘を通過してフェイエールに集まり、バザールを形成しているのだ。バザールに並ぶのは食料だけでなく、武器や防具、装飾品からいかがわしい本まで、およそ奴隷以外のものは何でもござれと言わんばかりの多様さだった。
 物珍しさにきょろきょろとあたりを見回し続けるカペルは、アーヤが人混みの中の誰かを睨んだことに気づかないでいた。
「すごい活気だね。お祭りなのかな?」
「えっ、ううん。ここはいつもこんなものよ」
「へえ、そうなんだ。って、アーヤ、どうしたの?」
 喧噪に浮かれていたカペルは、アーヤがフェイエールに帰るのが憂鬱だと言っていたことを忘れていた。上の空で答える彼女を見てそれを思い出す。
「……私、行くところがあるから」
「えっ?」
「じゃあ、また後でね」
「えっ、ちょっと……。あー、行っちゃった。トイレかな?」
 憂鬱の理由を聞く時間も与えられず、カペルは雑踏の中に一人残されてしまった。仕方なしに、初めて訪れた街の景観を見回す。
「……ここ、どこ?」

 通り沿いの露店を覗きながら、カペルはメインストリートをぶらぶらと歩いていた。宿か城に行けばシグムントたちの居場所もすぐわかりそうなものだが、腹の虫のご機嫌伺いの方が優先順位が高かったから、急ぐことはしなかった。
 壁にもたれかかり、オラデア名物と銘打たれていたオラデアチキンサンドをほおばりながら、人の流れをぼんやりと見ていた。
 活気のある街だ。
 いろんな街を見てきたが、ここほど人が生き生きとしている街はなかった。環境が厳しい分、生きることに懸命だからかもしれない。この雰囲気なら、アーヤが育った街というのもうなずける。
 しばらくそうしているうちに、日も傾き始めていた。そろそろ宿にでも行ってシグムントたちの居場所を聞こうかと思った矢先に、聞き慣れない声が聞き慣れた名前を呼んでいるのが聞こえた。
「シグムント様ー!」
 声の方を見てみると、メイド服姿の女性が息を切らせて走っている。女性はカペルの前で立ち止まるなり、言った。
「グスタフを見ませんでしたか、シグムント様?」
「はい?」
「ですから、グスタフですよ。グスタフ。昨日お引き合わせした姫様のペットです。覚えていらっしゃらないんですか? 見かけによらず物覚えの悪い方なんですね……って、申し訳ございません、失言でした!」
 彼女の剣幕に押され、カペルは半歩後ずさりした。黙っていればどこかのお嬢様で通用しそうな容姿も、これでは台無しだ。
「いや、その、えーっと」
「どうされたんですか、シグムント様?」
「それ! ……僕、シグムント様じゃないんですけど」
 封印軍に捕らえられて以来、いったい何度目の人違いなんだろうか。いい加減に慣れてしまったが、一人くらい「フルート吹きの癒しのカペルさん」と声をかけてくれてもいいのにとも思う。
「だってほら、どこからどう見ても……。あっ、もしかして偽物さんの方ですか!?」
「そうです、偽物さんです」
「言われてみれば確かに雰囲気が違うような……。覇気がないというか、頼りがいがなさそうというか。ってまた失言でした、ごめんなさい!」
「い、いや、いいんですよ、気にしてませんから。はは……」
 わざとかと疑いたくなるほどの頻度で失言をするこの女性は、格好からしてどこかの家のメイドさんらしい。シグムントや自分のことを知っている様子から考えれば、城に出仕しているメイドの一人なのかもしれない。
「あのー、ところでメイドさんはどちら様ですか?」
「あっ、失礼しました。ジーナと申します。こう見えても、姫様付きのメイドなんですよ」
 そう言って、ジーナはスカートをちょこんと持ち上げてお辞儀をしてみせた。
「へぇ。フェイエールにはお姫様がいるんだ」
「そうだ。偽物さん、姫様はどちらにいらっしゃるんですか?」
「それを僕に聞くんですか?」
「ええ、だって……。でも、知らないなら仕方ないですね。何も知らなそうな間の抜けた顔してますもんね。……ってまた私、失言を」
「それはもういいですから」
 姫様の居場所はおろか、自分がどこにいるのかさえよくわかっていないのだ。聞かれても困る。
「それより、グスタフは探さなくていいんですか?」
「そうでした! こんなところで馬鹿面並べて自己紹介している場合じゃないんです。グスタフを探さないと!」
 もはやつっこむ気力もなくしたカペルは、ただただ嵐が過ぎ去るのを待つことにした。
「じゃあ、役に立たない偽物の……」
「カペルです」
「カペルさん。解放軍ご一行は城内におられますのでそちらへ。通りをまっすぐ行けば城門が見えてくるはずです。迷子になったら、そのへんの子供にでも道を聞いてください。それくらいは出来ますよね?」
「はーい」
 ぺこりと頭を下げたジーナは、「グスタフー!」とペットの名前を呼びながら去っていった。あの調子で見つかるのだろうか……。

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