09« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»11

ふであと

  : 

徒然なるままに、もの書き。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告  /  tb: --  /  cm: --  /  △top

第四章 「光の英雄」_12 

 伸びて野暮ったくなった前髪をかき上げながら、ドミトリィは切れ長の目を窓の外にやった。星の瞬きをたたえる空とは対照的に、月明かりに照らされた眼下の山岳は、その輪郭を闇の濃淡で浮かび上がらせているだけだ。遠くにはフェイエールの街の明かりが見え、下から吹き上げる風の様子も感じられれば、そこがヴェスプレームの塔の高層にある一室だということを理解させるに十分だった。
 ヴェスプレームの塔は、北大陸に興った封印軍の南大陸侵攻における橋頭堡として建設された。かつてはハイネイルの修行場として使われていた神殿の上に、月の鎖と同様の技でレオニードが創り出した巨大な建造物。奇蹟とも呼ぶべき力で生み出されたそれは、軍事拠点という役割とは別に、芸術的ともいうべき意匠をフェイエールを見下ろす大地に屹立させている。
 そう、レオニードの力は奇蹟だ。終わることの無いと思えた闇の底から、俺を引き上げてくれたその力は――
 夜のとばりから目を離し、ドミトリィは自分の右手を見つめた。レオニードのそれと同じ、赤い光を放つ月印がそこにぼんやりと浮かんでいる。
「ドミトリィ様」
 ドアを叩く音に続いて、聞き慣れた副官の声がし、ドミトリィは沈思の時間を終わりにした。
「入れ」
「フェイエールに入れていた者からの報告です。先刻の報告どおり、やはりフェイエール軍に動く気配はないと」
「そうか」
 全ては想定の範囲内だった。フェイエールに解放軍が入ったという報せを受けた後、レオニードは彼らを塔に引き入れたいとドミトリィに告げた。光の英雄と話がしたいとも。
 それからすぐ、ドミトリィはヴェスプレームの塔にあった戦力の大部分を伏せた。伏せたということだけが、フェイエールにもわかるようにだ。奇襲を警戒したフェイエール軍は、予想通り動かなかったようだ。逆に、塔を手薄にした分、解放軍は攻め込む機とも見るだろう。やつらに、いや、光の英雄には待つ時間がない。だから、やつらだけでも攻めてくる。
 すべては、想定の範囲内……。
 レオニードと光の英雄の会見のために、雑音は自分が排除する。任せた、とレオニードの手が肩に触れた時の熱を思い出すたびに、高揚感が全身を駆け巡る。
「内部に進入したものどもは、仰せの通り、放置してあります。ですが」
「かまわん。そのままでいい」
「はっ」
 シグムントの手の者が塔内に侵入していることも把握していた。おそらく相手も把握されていることをわかっているだろう。だが、小細工をしたところでどうにもならない。全てこの手でねじ伏せてやる。
「お前も外の部隊に合流しろ」
「しかしそれでは」
 有無を言わさぬ視線を送ると、副官は言葉を飲んで部屋を出て行った。
 ドミトリィは再び右手の光に目を落とす。拳をきつく握ると、かすかな痛みとともに月印が強く光り出した。この手で、この力でやつらを……。
 月印の赤に自らの憎悪を幻視しながら、ドミトリィはその向こうに映した敵の姿を睨み据えた。

【小説インフィニットアンディスカバリー】
【Prev】/【Next】
スポンサーサイト

テーマ: 二次創作:小説

ジャンル: 小説・文学

コメントの投稿

Secret

△top

この記事に対するコメント

△top

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaenovel.blog78.fc2.com/tb.php/78-43d20f6e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

△top

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。