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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_14 

「ふわぁ、眠い……」
 グスタフを探して駆けずりまわった疲労からか、昨夜はやたらと早く寝てしまった。翌日が決戦の日だったというのに図太い神経をしている、と我ながら思わないでもない。
 寝過ぎると逆に眠くなるというのは本当で、集合場所に来て早々に大きなあくびをしてしまうのを、カペルはこらえきれずにいた。
「ほら、しゃきっとしなさいよ。これから封印軍の拠点に行くのよ。激戦になるんだから、気を引き締めなさない」
 正装から普段着に戻ったアーヤは、両親とのしこりも無かったかのようにいつもどおりに振る舞っている。「そんなこと言ったって眠いものは」と文句を言いかけたところで頬を思い切りつねられ、小さく漏れた悲鳴とともに無理矢理覚醒させられたカペルは、自分以外は全員が揃っていることにようやく気づいた。
「お待たせしちゃいました? いやいや、申し訳ない」
「まったく……」額に手をやりながら、エドアルドが首を振る。
「おまえ、これから何をするのかわかってるのか?」
「ヴェスプレームの塔に攻め込むんでしょ?」
「そうだ。わかっているなら、もう少し緊張感を持て。そんなことじゃ、一番最初にやられるのはおまえだぞ」
「って言われてもなぁ」
 積極的に戦いに参加することに違和感が無いと言えば、まだ嘘になる。傍観者として生きてきた自分が、世界の命運を握るような戦いの中心にいることに現実感も無ければ、眠気も手伝って、ぼんやりとした返事しかできないというのが今のカペルの正直な気持ちだった。
「はぁ、逃げたいなぁ」
「諦めろ」
「諦めなさい」
 すかさず二人に突っ込まれて首を竦める。ユージンとバルバガン、ドミニカ、それにミルシェがその様子を見て笑っているが、シグムントは変わらず無表情なままだ。
「あれ、そういえばソレンスタムさんは?」
 そう聞いてみたところで、物陰から一人の少女が現れた。ちょこんと一つに結われた髪が揺れ、幼さを残した顔立ちの中で伏せられた視線がわずかに色香を漂わせていて、カペルは少しドキリとした。
 見慣れない服装は、エンマのものに似ているように思えた。彼の部下といったところか。
 少女はシグムントの前に跪いて言った。
「報告。転送陣の準備は整っております。いつでも起動できるとのことです」
「わかった」
「案内いたします。こちらへ」
 少女に促されて、カペルたちはフェイエールの街を出た。


 フェイエールの街から山岳地帯に入り、幾らか山を分け入った先に巨大な穴蔵が見えてくる。フェイエールにいくつもある廃坑の一つらしく、転送陣はその奥に用意されているそうだ。
「封印軍の主力の動向がわからないから、下手に軍は動かせないとお父様……王は仰っていたわ。だから私たちだけで侵入しないといけない。中に入ってしまえば、大軍の優位は無くなるしね。だけど私たちだけで正面突破は難しいから、転送陣で一気に内部に侵入するのよ。エンマさんたちが内部に転送陣の出口を確保してくれているわ」
「そんな便利なものがあるなら、いつもそうすればいいのに」
「ヴェスプレームの塔は、もともとハイネイルの修行場だったのよ。その名残、っていうのかな、動かなくなった魔法陣が残っているの。それが使えるからできることであって、いつもそうできるわけじゃないのよ」
「ふーん」
「それに、古い魔方陣の利用法はソレンスタム様が教えてくださったものだから、今までは誰も知らなかったのよ」
 と、アーヤに説明を受けながら、古びた廃坑の中を歩く。うち捨てられた道具類が朽ちるままにされていて少し不気味だったが、それよりも、洞窟を支える支柱が腐りかけていることに、カペルは不安を感じざるを得なかった。
「大丈夫よ、今まで崩れてこなかったんだから」とアーヤは言っているが、何の根拠もない言葉よりも、ぱらぱらとこぼれてくる土塊の方が雄弁だ。

 そうこうしているうちに最奥部に到着する。
「お待ちしていましたよ、みなさん」
 松明の明かりとは別の白い光が、廃坑の奥にある狭い空間を照らし出していた。地面に描かれた魔方陣の光だ。起動されたそれの前に立ちながら、ソレンスタムがいつもと変わらない微笑をたたえていた。
「皆さんを送り出すためにも、残念ながら私は残らなければなりません。無事の帰還をお待ちしておりますよ」
「ありがとうございました。ソレンスタム殿」
「……ご武運を」
 含みのある視線をソレンスタムと交わしたシグムントが、皆を見回すように振り返った。
「行くぞ」
 声を上げず、皆が頷く。
 ここから先は戦場。
 皆から伝わる緊張感が胃の底を重くするのを感じながら、カペルは頭を切り替えようと意識した。
 順に、転送陣の光の中へ入っていく。
 シグムントに続いてエドアルドが入り、ミルシェ、ユージンの後ろにバルバガンが続く。ドミニカが行き、アーヤが足をかけようとしたところで、ソレンスタムがカペルに声をかけた。
「カペル君、どうか無事に帰ってきてください」
「……ソレンスタムさんにそう言われると、ちょっと怖いですよ」
「ははは。確かにそうですね。ですが、これは“星読み”としてではなく、私個人の願いです。どうか、ご無事で」
「はい。ありがとうござい――」
 轟音が、カペルの声をさえぎった。
 遅れて吹き荒れた突風に、思わず尻餅をつく。
 転送陣に入る前だったアーヤが、瞬時に戦闘態勢に入った。
 入り口のほうから気配。それもかなりの数だ。
 封印軍の奇襲か?
「ここはお任せを」
 案内をしてくれた少女が、腰の後ろに重ねていた一対の小太刀を両手に引き抜いた。重心を低くし、二振りの刀を逆手に構える。
 立ち上がりながら、モンスターの群れを視界に入れたカペルが「でも」と言おうとしたところで、ソレンスタムの手がカペルの肩に触れた。
「君には君の戦いがある。行ってきなさい」
 変わらない微笑に有無を言わせぬものを感じて、カペルは言葉に窮した。「行くわよ」とアーヤがカペルを促すのに合わせて、ソレンスタムが一つうなずき、カペルの答えを聞く前にモンスターの方へと向き直ってしまった。
「……行ってきます」
 戦闘態勢に入った二人の背中にそれだけを告げて、カペルは光の中へと歩みを進めた。

「ソレンスタム様も避難を」
 そう言った少女に微笑を返し、ソレンスタムは月印を発動させた。
 少女の眼前に無数の氷刃が出現し、廃坑を埋め尽くすようにしていたモンスターの群れに殺到する。空間を満たしきるほどの氷刃に引き裂かれ、逃げ場のないモンスターの群れは、瞬時にしてただの肉塊と化した。
「す、すごい……」
「ハイネイルは伊達じゃない、でしょう?」
 微笑を崩さずに言うソレンスタムに、少女はこくこくと頷くばかりだ。
 そんな会話の合間にも、肉塊となった仲間を越えて、新たなモンスターがやってくる。
「お嬢さん、お名前は?」
「コ、コマチです!」
「では参りましょうか、コマチさん」
「はい」
 上ずって答えていた少女の顔は、すでに戦士のそれに変わっていた。

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