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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_16 

 塔の最下層には大広間がある。何階分かを縦貫した吹き抜けになっていて、神殿を支えていた巨大な石柱が四本、中央の転送陣を囲むように立っているはずだ。
 その大広間を目指して、エドアルドは二つの背中を見ながら歩いていた。
 シグムントがカペルを呼んで、何かを話しながら歩いている。会話の内容を盗み聞く気にもなれず、本来自分がいるはずだと思っていた場所に、よりにもよってカペルがいるということもあって、エドアルドは必要以上にイライラしていた。
「何を苛ついているんだい?」
 この戦いから解放軍に参加してきたフェイエールの傭兵、ドミニカといったか、彼女が話しかけてきた。
「別に苛ついてなんていない」
「その態度が苛ついているって言ってるんだよ」
 自分が年下だからか、それともこの傭兵の方が場数を踏んでいるからか、あるいは女だからか、見下されているような気がして、それがエドアルドの苛立ちに拍車をかける。
 答える義理もない。沈黙でそう返答すると、ドミニカは「やれやれ」と首を振ってアーヤの隣に行った。
 苛ついてなんていない。ただ、すぐに戦闘を始めたかった。そうすれば、シグムント様の隣にいるのは自分なのだから……。
 だが、その願いもむなしく、敵が出てくる気配もない。通路を満たす静けさが不気味だった。
 不意に視界が広がった。狭い通路を抜け、巨大な空間に出る。中央にある四本の石柱以外は何もない。ただ広いだけだとも言えるが、広さというものはそれだけでも人の心を動かす何かがあるもので、エドアルドは無意識のうちに頭上へと視線を泳がせた。
「ようこそ、ヴェスプレームの塔へ」
 耳朶を打った見知らぬ声に慌てて剣を握り直し、エドアルドは正面を見据えた。敵の存在に気づかないでいた。失態だ。
「ずいぶんと早かったんだねえ、って当たり前か。わざわざ抜け道を用意してたんだものね、ふひひ」
 中央の転送陣の前に立ち、野卑た笑いを浮かべているのは、浅黒い肌に長い金髪を揺らす三十絡みの騎士だ。雑兵のそれとは違う甲冑。加えて、笑いながらも油断のならない気を放っているのを感じられれば、やつが封印騎士の一人であることはすぐにわかる。
「おまえがここの鎖を守る封印騎士か」
「いいや、違うよ。ボクは助っ人。君たちをここで葬るためのね」
 直後、封印騎士の後ろで転送陣が光の柱を屹立させ、その中から別の男が現れた。
「来たか……」
 同じく、雑兵の使う量産品とは違う甲冑を身にまとい、細身の剣を抱えて出てきた男。癖のない黒髪をかき上げた下に見えたのは、金髪の男とは違う若い男の顔だった。その男が言う。
「光の英雄というのはおまえか」
「……」
「レオニード様が、おまえと話をしたいとおっしゃっている。だが、簡単に通すわけにはいかん」
 シグムントが剣を引き抜いた。カペルが一歩後ずさりする。
 戦闘が始まる。そう思って、エドアルドは剣を握る手に力を込めた。
「……と言いたいところだがな。ニエジェラン」
「ふん。ドミトリィ、いつからボクに指図する立場になったんだ?」
 言いながら、金髪の男が月印を発動させ、突然、両手を床に押しつけた。
 次の瞬間、解放軍全員を包むような巨大な魔方陣が床に浮かび上がり、光の柱を天井へと伸ばした。
 何かが来る。その前に魔方陣から抜けられるか。いや、無理だ。それなら。と剣を構え直したとき、「うわっ」といつもの間の抜けた声が聞こえて、エドアルドはそちらへと目を向けた。
 カペルだ。カペルの身体が宙に浮かび上がり、そこに魔方陣が放つ光が凝縮し始めている。
「あれ、おかしいな。鎖を斬れる光の英雄様に反応するように作ったはずなんだけどな」
 金髪の男が首をかしげているが、魔方陣の発動は止まらない。
「まいっか」
 男がにやりと笑うのと、「カペル!」と叫ぶ声が聞こえたのは同時だった。
 集まっていた光が球体を作り始め、カペルはその中に閉じ込められようとしていた。そこに、カペルの名を叫んだシグムントが飛び込んでいく。
「シグムント様!!?」
 エドアルドが叫んだときには、二人は完全に球体に飲み込まれてしまっていた。
「ふひひ、行ってらっしゃい」
 金髪の男、ニエジェランが口元を歪ませると、光の球体は、その中身もろとも消え失せ、同時に床の魔方陣もかき消えた。
 シグムント様が……消えた……?
「貴様、いったい何をした!!?」
「慌てなくても大丈夫だよ。こいつが言っただろう? レオニード様が光の英雄と話をしたがっているって。だから、一足先に塔の屋上にお送りしただけさ。まっ、おまけがくっついて行っちゃったけど」
 信用できるのかは定かではない。ただ、今はその言葉を信じるより他はなかった。あのお方は無事だ。たとえレオニードと一騎打ちになったところで、負けるはずはない。
 そう自分に言い聞かせることができると、突然の事態にわき上がっていた怒りもいくらか落ち着き、まずはこいつらを倒すことに集中しようとエドアルドは考えることができた。
 その矢先だった。
「でも二人で飛んでいっちゃったからね。コントロールが狂って、出口がずれてなきゃいいけど。ずれてたら、塔の高さから落ちることになっちゃうものね。ふひひ」
「なんだと!?」
「さすがの英雄様でも、あの高さから落ちたら助からないよね?」
「貴様ぁ!」
 待つ必要もなく沸点を超えた怒りが身体を突き動かし、エドアルドは弾けるように金髪の男に飛びかかった。
 しかし、その突進も簡単に受け止められてしまう。
「君たちはボクとここで遊んでもらうよ。せいぜい楽しませておくれ」
 そう言った男に、エドアルドはつばぜり合いの状態から吹き飛ばされてしまった。
「エドくん、落ち着いて!」
 ユージンの声が聞こえたが、落ち着いていられるはずもない。口に血の味が広がるのを感じながら、エドアルドは立ち上がった。
「余談はそのへんにしておけ、ニエジェラン」
 金髪の男に、もう一人が言った。
「ドミトリィ、おまえはさっさとやることをやって持ち場に戻れよ。ここはボクのパーティー会場だよ」
「……」
 ドミトリィと呼ばれた若い方の男がそれに無言で答え、右手に月印を発動させた。胸の前に握られた右手が赤黒く光り、ドミトリィがそれを水平に伸ばすと、放たれた大量の光が大広間の外周に拡散する。
 そこに無数の魔方陣が発現した。ドクンと空間全体が脈動し、それらの魔方陣が、禍々しい光を次々と屹立させる。そして、その中から、モンスターの群れが折り重なるようにして現れ始めた。
「ぬかるなよ、ニエジェラン」
「だから口の利き方に気をつけろよ、クソガキ」
「……」
 ドミトリィはエドアルドたちを一瞥すると、現れたときの転送陣の中へと消えていった。
「ふん」
 苛立ちを鼻息で紛らわしながら、ニエジェランが近くの台座からこぶし大の宝珠を取り外すと、転送陣は力を失ったように光を無くす。
「さぁ、解放軍のみなさん、パーティーの始まりだよ」
 ニエジェランの歪んだ笑みに、モンスターたちの咆哮が重なる。
 大広間全体がうなり声を上げているような錯覚の中で、エドアルドは、唇を噛んで衝動を抑え込んでいた。

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