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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_17 

 光が視界を塗りつぶし、おぼつかない浮遊感を覚えるところまでは、最初の転送陣と同じだった。違うのは、そこに落ち着くはずの足場がなかったことだ。
 大広間で敵と対峙し、直後に床から立ち上ったか光にのまれると、カペルだけが突然ふわりと浮かび上がった。何かに縛られているような感覚はないが、踏ん張る足場もなければジタバタするしかなく、その空虚さと無力さに呆然とする。
 強制的に別の場所へ飛ばされる感覚の中で、確かなのは、助けに飛び込んできたシグムントの手の感触だけだった。
 数階分を縦貫した大広間の天井も高かったが、転送された先はその比ではなかった。なぜなら、そこが外だからだ。水平に走らせた目に移るのは空ばかり。その青さに思わず感嘆の声をもらし、束の間の開放感にひたったカペルだったが、身体を包み込んでいた光が消えた瞬間、事態は一変する。
 おぼつかない浮遊感は消え失せ、有無を言わさぬ自然の摂理が身体を落下させる。もう一度ジタバタしてみるものの、ただ一つ、下に引っ張る強烈な力だけが自覚され、恐慌を起こした頭には無数の映像が乱舞した。
 子供の頃のこと。
 笛を吹いて歩いた旅のこと。
 解放軍の戦いのこと。
 アーヤのこと。
 乱反射する記憶の対岸で、「ああ、これが死ぬ間際に見るっていう……」と冷静に分析する自分を見つけたカペルは、直後「カペル、落ち着け!」と呼ぶ声に意識を引き戻され、左手に感じる熱を再認識した。
「シグムントさん!」
 引き寄せられるように振り返ると、もう一人の自分の姿が大写しになる。姿形は似ていても、中身の部分で大きく異なる、もう一人の自分。その顔を見てわずかに冷静さを取り戻したカペルは、背景に塔の壁面が見えることにようやく気づいた。
「塔まで飛ぶぞ、つかまれ」
「と、飛ぶって、どうやって……?」
 手首ごと握られたシグムントの左手にしがみつきながらカペルが問うと、シグムントはそれには答えず、右手の月印を光らせた。
 身体を水平に寝かせたシグムントの足下に、小さな力場が形成される。ショプロン村で封印騎士と戦ったときに使ったわざと同じだ。空中に作り出した力場を蹴って、敵に突進したわざ。あれの応用をここでするというのか。
 カペルがシグムントの手を強く握り直した直後、腕がちぎれそうなほどの横殴りの力が襲ってきた。シグムントの生み出した爆発的な横への推進力と、下へと引っ張る自然の力が重なって、二人は斜め下へと流されながら塔の壁面に突進した。
 だが、手をかける場所がない。壁面にとりついたとしても、どうやって止まる?
 カペルが疑問を並べている間に、シグムントは次の行動に移っていた。
 月印の光る右手で剣を引き抜き、そして、逆手に持ったそれを壁に突き刺した。
 石造りの壁と金属の剣が擦過して火花をまき散らし、抉り取られていく石のかけらが無数に飛び散る。その様子が至近にうかがえ、カペルは思わず顔を下に背けた。
 そこに、塔の外周を囲むようにテラスが展開しているのが見えた。あそこにたどり着ければとも思ったが、まだかなりの高さがあるとはいえ、落下速度を減殺しきれておらず、このままではただでは済まない。
 その下には、大地の様子が霞んで見えた。そっちに落ちれば終わりだなと冷静な方の自分が分析しているのを感じながら、恐慌の中の自分は、唯一の頼りであるシグムントの手を一心不乱に握り直そうとした。
 直後、今までで一番の衝撃がカペルを襲った。その力は、シグムントの腕を握る手を強制的に引きはがし、結果、カペルは一人で落下を始めた。
 どうして……?
 疑問の答えを探して、離れていくシグムントの姿を見やると、彼はこちらに手を伸ばしながら壁の途中にぶら下がって止まっていた。
 そうか、剣が何かに引っかかったんだ。それで……。
 絶望的な状況を再確認した頭の中で、死が再び現実味を持ち始める。恐怖に白濁する思考の外で、カペルは気づかぬままに絶叫していた。
「――さん!」
 伸ばした手の向こう側で、シグムントが剣を引き抜いてこちらに飛んでくるのが見えた。だが、死の恐怖が意識を寸断し、視界に白いとばりを下ろしていく。
 全てが白く消え失せる前に、シグムントの熱が触れたような気がした。
 その熱が死の感触を次第に薄れさせていく。
 包まれるようなやすらぎを感じながら、カペルの意識は眠りへと落ちていった。

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