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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_18 

 見たことのないモンスターもいるが、所詮は我を失った獣の群れだ。
 二股に割れた槍の刃で弧を描きながら、ドミニカは複数のモンスターを一度になぎ倒した。倒れたモンスターは、怪しげな黒い光を放ちながら次第に消えていく。本物の獣ではない。召喚獣か何かか。それを判断する前に、くすんだ光の向こうから別のモンスターが飛びだしてくる。
 個体の強さは問題ではなかったが、この数は厄介だった。倒しても倒しても、次のモンスターが魔方陣から出てくる。術者を倒さねば終わりがないのかもしれない。ただ、その術者はすでに転送陣の向こう側に消えていた。
「うおおおおお!」
 術者とは別の封印騎士――ニエジェランといったか――に飛びかかりながらエドアルドが叫ぶ。冷静さを失っているのは明白で、大ぶりになった大剣の軌道は読まれ、完全に踊らされている格好だ。ニエジェランがその様子を嘲笑しているのが見え、封印軍だからという理由以前に、人間として嫌悪感を感じざるをえない相手だと理解したドミニカは、アーヤたちにまだ余裕があることを見て取って、エドアルドとニエジェランの間に割ってはいることを決断する。
「アーヤ、そっちは大丈夫だね。私はあの血の気の多いのの加勢に回るよ」
「うん、わかった」
 いつの間にか、ずいぶんと心強い返事をするようになったと感心したのもつかのま、アーヤがそんな戦士の空気をまとう必要はないことに気づいて苦笑する。
 初っ端にリーダーを失った解放軍を立て直すのはベテランの仕事だろう。今残っているメンバーで言えば、戦闘経験の多いのは自分かバルバガンか。バルバガンがユージンとミルシェの魔術師二人を庇うようにしてモンスターを追い払っているのを確かめ、ドミニカはエドアルドの方へと走り出した。
 その気配を感じとる余裕は、ニエジェランにはあったがエドアルドにはない。横目にこちらを確認したニエジェランがエドアルドをはじき飛ばすと、飛び込んだドミニカの一撃を受け止める。
 肌のひりつく感覚。
 久しぶりだった。強敵だ。
「次は私の相手をしてもらおうか」
「ふひひ、気の強い女だね。ボク、嫌いじゃないよ」
「あいにく、自分のことをボクなんて呼ぶ男には興味ないんだよ!」
 答えながら突き出した槍は、踏み込み半歩分の余裕を持ってかわされる。「んー、いい返事だなぁ」とにやけ面を浮かべる様子を見て取れば、やはり手の内を隠していると判断せざるを得なかった。
「ドミニカ、下がれ! 俺の相手だ!」
「頭を冷やすんだ。状況をいったん立て直す。あんたこそ下がりな!」
 センスは悪くない。調練も十分している。冷静さを取り戻せば十分に戦えるはずだ、と今までのエドアルドの動きから見て取れたが、上気した様子を横目にうかがえば、彼にはそれが一番難しいことだともわかる。
 エドアルドが立ち上がり、すぐにでも飛び込んできそうな気配を感じたドミニカは、内心で嘆息をもらし、エドアルドに合わせた動きに徹することにした。二対一は不本意だが、そうも言っていられない。
「仕方ない、か」
 エドアルドが上段から大剣を振り下ろす。それを横に身をひねってニエジェランがかわすが、大剣を挟んでドミニカの向こう側に退けるのは当然だ。
 それを読んで回り込み、槍を突き入れてみるものの、回り込んだ分の遅れからそれもかわされてしまう。だがそれでも、ニエジェランの動きを一拍だけ封じる効果はある。
 それを感じとったエドアルドが、振り下ろした大剣を斜めに跳ね上げた。
 やはりセンスは悪くない。
 ニエジェランはそれを辛うじて受け止めたが、大剣の質量と速度に数歩分はじき飛ばされる。全てかわされていたエドアルドの攻撃が、防がれたとはいえ、ニエジェランに当たったのはこれが初めてだった。
 余裕の笑みが消える。だがその表情は、危地に追い込まれたというよりは、面倒なものに巻き込まれた、といった印象だった。
 再びニエジェランが小さく笑う。何かを企んでいるのか……。
 その機微を読み取るだけの余裕はエドアルドにはない。間髪入れずに飛び込み、渾身の突きを繰り出す。見切られている攻撃があたるはずもなく、カウンター気味に入ったニエジェランの蹴りに、エドアルドは派手に吹っ飛ばされた。
 それら一連の動きを、戦いの経験から無意識に読み取りつつ、ドミニカは敵の動きに合わせて攻撃を繰り出した。
「おわっ、ちょ……」
 ふいにニエジェランの動きが鈍った。すかさず押し込むと、ニエジェランは、懐に入れていた転送陣の鍵、宝珠を落とす。それは不自然なほどまっすぐに、吹き飛んだエドアルドの足元に転がっていった。
 エドアルドは、当然それを拾い上げる。
 転送陣の鍵があれば、上に行くことが出来る。レオニードのところへ行ったというシグムントたちと合流することも出来るが、上に上がっていった封印騎士もまた同様の罠をはっていないともかぎらない。まずはここの体制を立て直す方が先か。だがそれ以前に、こんなにも簡単に宝珠を落とすのはおかしくないか?
 矢継ぎ早にドミニカは思考を巡らすが、エドアルドがそれに気づくはずもなく、一瞥をくれると、転送陣のほうへと走り出した。
 まずい。一人で行く気か。
「待ちな、エドアルド!」
 静止も聞かずにエドアルドが宝珠を台座に収めると、転送陣が光の柱を屹立させる。
 その転送陣に足をかけると、エドアルドは頑なな視線をこちらに向けた。少しは冷静さを取り戻したかのようにも見えるが、いずれにせよ、どんな罠が待っているかわからない。転送陣の向こう側へ一人で行かせるわけにはいかない。
 再び制止の声を上げようとした瞬間だった。
 突然、どす黒いエネルギーの奔流が転送陣を囲むように立ち上り、エドアルドの視線を遮る障壁となる。
「一名様、御案内。ふひひ」
 振り返ると、ニエジェランが障壁と同じ色に月印を光らせている。
「その障壁は自信作でね。そうそう破れるものじゃないよ」
 その言葉を裏付けるように、エドアルドに飛びかかろうとしていたモンスターの一匹がその障壁に触れると、四肢を引きちぎられる勢いではじき飛ばされた。
「エドアルドくん、だっけ? 君は上に行くといい。あのいけ好かないガキに痛い目を見せてやってくれよ」
 たぶん無理だろうけど、と続けた声はエドアルドには聞こえていなかっただろう。「待て」と叫ぶドミニカの声に振り返ることもせず、エドアルドは転送陣の中に消えていった。
「さあ、残ったキミたちはボクの遊び相手だ。おもちゃも用意しているんだよ」
 再びニエジェランが月印を光らせると、頭上に巨大な魔方陣が浮かび上がる。ドミニカが咄嗟に飛びのいた直後、魔方陣から巨大な何かがぼとりと落ちてきた。
 それは巨大な“目”だった。直径でドミニカの倍はあろうかという巨大な“目”は、紫がかった皮膜をまぶたの様に瞬かせ、上に伸ばした触手にぶら下げたもう一つの“目”でこちらの様子をうかがいながら、宙にふわふわと浮いている。
 何度目かの瞬きの後、“目”の瞳の色が変わったのを見て取ったドミニカは、肌が粟立つ感覚を覚えて、弾かれるようにその場から離れた。
 瞳の色の変化が止まり、もう一度瞬いた直後、そこから極太の光線があたりを薙ぐように放出された。光線に飲み込まれたモンスターが蒸散する。
「“クロン”ヴィシャスアイ。ボクのかわいいペットさ」
 焼け焦げた床が空気を揺らす向こう側で、ニエジェランが不敵に笑う。
 すぐにエドアルドを追うのは難しいと判断したドミニカは、無事を祈ったのを最後にして、意識を目の前の敵に集中させていった。

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