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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第一章 「運命の始まり」_08 

 村の外れの小径を抜けると、大きな洞窟の入り口が見えてきた。あれが竜骨の祠の入り口らしい。その洞窟の入り口の脇、岩壁に沿った獣道を行くと、古めかしい扉があった。
 青龍を象った文様と見慣れない文字で装飾されてはいるが、作られてから古いせいか、それとも人目から隠すためか、扉は苔むすままにされていて、遠目には岩肌と一体化しているように見える。知らない人間がこれを見つけるのは難しいだろうと思えた。
 ルカが閂に手をかけるとほのかな青い光がそれを包み、自然と扉が開く。
「それも月印?」
「違うよ。青龍様が神官に授けてくださる力なの」とロカが説明してくれた。
「ふーん。ルカはもうもらってるんだ」
 一種の鍵のようなものらしい。青龍の認めたもの以外は使えない仕様ということか。
「行っくよー」
「あっ、ちょっと待ってよ」
 慣れた足取りで双子が中に入っていく。扉の向こうは、長い下り階段になっているようだ。

 引きずられるようにして入った先は、入り口の扉と同様に古めかしい雰囲気を醸し出しており、通路と言うよりもさながら神殿といった造りだった。円柱や石像、大きな壺のようなものから祭壇まで、それらしいものが無造作に並んでいる。土に埋もれたり崩れ落ちたりしている部分も多いが、それらに施されたレリーフや文字が青く明滅していて、その様はまるでこの地下道に星空を再現しようとでもしたかのようだった。青色ばかりの星空は、こういった遺跡に興味のないカペルにさえも荘厳な印象を与えた。もしかすると、この通路の方こそが祠の本体だったのかもしれない。
「うわぁ。すごいな……」
「なんで光ってるんだろうねー。不っ思議だねー」
「ふっしぎーだねー」
 感動するカペルをよそに、もう見飽きたとばかりに適当な返事が返ってくる。二人は何度もこの通路を使っているのだろうが、それは神官様に連れられてか、それとも無断で忍び込んでか……。いずれにせよ、ルカとロカにとってはごく当たり前の光景であり、日常の延長のようなものといったところか。
 慣れた足取りで進む双子の後を離されないようにカペルは歩いた。アーヤにも見せてあげたかったなという思いもあるが、まずは神官様のところへ急がないと。
「どれくらいで着くの?」
「すぐだよー。青龍様のいる部屋につながって――」
 答えるルカの声を遮るように遠雷のような音が響く。地鳴りだ。わずかに崩れた天井の欠片が埃と一緒にぱらぱらと落ちてくる。
「……何かあったのかな?」ロカが心配そうに言った。
「二人とも、急ごう」
 嫌な予感がする。とにかく、今出来るのは急ぐことだけだ。

 上り階段が見えた。ようやく到着らしい。ここに来るまで数度、同じような地鳴りが聞こえていた。徐々に近くになっている。
「階段を上がったら青龍様の部屋だよ」
 地鳴りのことを考えると、この先で何があってもおかしくない。カペルは「ちょっと様子を見てくるから」と言い残して、二人を置いてそっと階段を上がった。
 壁面を装飾するように並ぶ石柱、その裏側に出る。隠し通路と言うだけあって、出口は内側から見ればちょうど柱の影になって見えないような、そういう造りになっている。カペルはそのまま石柱に身を隠した。
 部屋は巨大な吹き抜けになっており、天井は無く、さながら青龍の通り道と行った具合だ。見渡すと、左手に破られた扉、右手に龍の座と青龍の姿が見え、吹き抜けの横腹に出たことがわかる。
 扉の残骸を見れば、先ほどの地鳴りのような音の正体は自明だった。入り口と青龍の間には複数の人影。
 間に合わなかった。

 封印軍と言っても大軍というわけではないらしい。甲冑を着込んだ騎士が数名とトロルが一匹。何故か真紅のドレスを着た女もいる。そして中央に、一際目立つ仮面の男。
 カペルがそれを確認していると、突然、青龍が咆哮を上げて火球を吐き出した。人間一人を飲み込むほどの巨大な火球は、仮面の男を直撃する。
 男は身動き一つせずに立ち尽くしていた。動いたのは、男のマントの下から伸びた触手のような赤い鎖だ。それが防壁となって殺到する炎を防いでいたのか、盾のなりをしていた何本もの鎖がだらりと崩れると、何もなかったかのように男が再び姿を現す。
 涼やかに揺れる銀髪に黒塗りの甲冑、それに合わせた同色の仮面が目元を覆っているが、その下にはサディスティックな微笑を浮かべる端正な口元が見える。そして、マントの下にだらりと下がった何本もの赤い鎖。異様な迫力を漂わせる男の姿に、カペルは思わず息をのんだ。
「これはこれは青龍殿。手荒い歓迎、痛み入る」
 男は大仰なお辞儀をしつつ言い放った。
「何用だ、赤き鎖の子よ」
「私のような者のことをご存じの様子。光栄ですな」
「何用だと問うておる」
「青龍殿は性急であらせられる」
 男が苦笑する。役者じみた大袈裟な振る舞いだが、それが妙に似合っている。
「くっくっく……。まあよい」
 ひとしきり笑うと、男は続けた。
「青龍よ、そなたの力、予が貰い受けに参った」
「……」
「もはやそなたらの時代ではない。世界は新たな神を欲しておる」
「それが自分だと」
「左様。月の神ベラのもと、予がこの世界の神となるのだ」
「愚かなり、人の子よ。力に飲まれ、己が身の丈を忘れたか」
「予の力は、次代の神となる器の証左。そなたも大地を統べる聖獣であれば、その程度のことは理解できよう」
「その為に世界を腐らせるか」
「変革に犠牲は付きもの。致し方なし」
「……愚かなり」
「……ふむ。交渉決裂ということでよろしいか」
 呆れたとばかりに、男は大きく肩をすくめた。
 男と青龍の会話のほとんどが、カペルには理解できなかった。ただ、男が青龍に対して害意を持っていることはわかる。
「聖獣とは言っても、なんとも浅はかなものよ」
 男のまとった黒いマントがふわりと持ち上がると、血の色を思わせる深紅の月印が両手に浮かび上がる。それが天に掲げられると、頭上に月印と同じ色をした光球が出現した。禍々しい光を放つ光球は次第に濃度を増し、その中に幾重もの赤い鎖を具現する。
「月の神ベラに捧げよう」
「青龍様に何をする!」
 リュウカさん!
 そう叫びたい衝動をカペルは飲み下した。
 男と青龍のやりとりに気を取られて気づかなかったが、リュウカはトロルに取り押さえられていた。取り押さえられたまま、仮面の男に向かって怒鳴っている。
 が、男はリュウカの声を無視したまま、その口元を歪ませた。それに呼応したように飛び出した無数の鎖が青龍に殺到し、逃げる間を与えずにその巨体を絡め取る。もがく身体に食い込んだ鎖は、出血の代わりとでも言いたげに赤く鳴動している。言葉にならない咆哮を最後に、青龍は沈黙した。
「青龍は直にいなくなる。神官殿、そなたももう用済みだ」
 男がリュウカを一瞥する。それに反応した背中の鎖が一本伸び、そして、リュウカの腹を貫いた。

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