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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_24 

 節約しながら使っていたものの、矢の数がもう心許ない。
 牙をむき出しにして飛び込んできたモンスターの頭を蹴り飛ばしながら、アーヤは終わりの見えない戦いに焦りを覚えていた。
 カペルは大丈夫だろうか……。
 そう心配している自分に気づき、「シグムント様やエドと違って、あいつは弱いからなんだから」と誰にするでもなく言い訳をしてみたが、それでもやはり自分に嘘はつけないと思ってしまうのがアーヤだった。
 バルバガンを上空から狙うモンスターの姿が見え、条件反射の速さで矢を引き抜く。アーヤはやり場のない怒りにも似た気持ちを乗せてそれを撃ち放った。
 なかば八つ当たりの一撃がモンスターを撃ち落とす。それを目で追ったとき、アーヤは敵の異変に気づいた。
 魔方陣から光が消えている。
 エドが何かやったんだ、という思考が脳裏をよぎり、「くそっ、ドミトリィめ。何を手こずってやがる」とニエジェランが毒づくのが聞こえれば、それが確信に変わる。
「ユージンさ――」
 新手の出てこない今がチャンスだと告げるためにユージンの方を振り返る。その目に、赤熱した光の帯がモンスターを焼き払うさまが飛び込んできて、アーヤは言葉を呑んだ。ミルシェが放ったそれにモンスターが蒸散し、ユージンが放った無数の石礫が残りを蹂躙していく。
 タイミングを計ったかのような大技の連携に、二人がこのときを予測していたのかと思えると、それなら私は、とアーヤは残りわずかになった矢を巨大な目玉の化け物――“クロン”ヴィシャスアイへと疾走させた。
 攻撃を仕掛けようとしていたのか、ちょうど見開かれていた瞳孔に矢が突き立つ。どこからともなく悲鳴ともとれる声が聞こえると、その隙を狙ってバルバガンが走り出した。肩に光る月印が白熱し、雄叫びを伴って巨大な戦斧が振り下ろされる。斬るというよりも断つと言った方が正しいその一撃が、“クロン”ヴィシャスアイを文字通り両断した。
「ぐっ……やってくれる」
 打ち合っていたドミニカと距離を取り、ニエジェランが呻いた。
「一人だと寂しいだろ、ボクちゃん?」
 ドミニカらしくない安っぽい挑発だとアーヤは思った。が、効果はてきめんだった。
 怒りに顔を紅潮させたニエジェランはさらに大きく距離を取り、月印を光らせながら両手を床につけた。すると、その中空に巨大な魔方陣が今度は二つ浮かびあがり、“クロン”ヴィシャスアイと同型のモンスターが二体召喚される。
「今度は二つだよ。やっぱり目は二つないとね。ふひひ」
 そう笑い、床石を溶解する光線をドミニカに放つよう、目の一つをけしかける。
 辛うじてかわしたドミニカをさらにあざ笑いながら、「ボクを怒らせたおまえが悪いんだ」と地団駄を踏む様は、中年に差し掛かろうかという男のそれではないとアーヤは思った。
 ドミニカがこちらを見ている。何かを指し示すような彼女の視線を追い、アーヤはもう一つの異変に気づいた。
 上層へと向かう転送陣を覆っていた障壁が消えている。エドアルドと自分たちを分断していた鉄壁の防壁。召喚に力を使いすぎたのか、それとも挑発に我を忘れたか。どちらにしてもドミニカが一枚上手だったのだ。
「アーヤくん!」
 ユージンに呼ばれ、アーヤはそちらへと駆けた。
「ユージンさん、あれ!」
「ああ、わかっている」
 眼鏡を指でくいと押し上げ、ユージンが続けた。
「アーヤくん、君は先に上に行ってくれ。僕らはここを片付けてから追うよ」
「でも……!」
 ニエジェランの奥の手がこの程度だとは思えなかった。
 あんななりでも封印騎士。ショプロン村で見た漆黒の翼を思い出し、シグムントさえ手こずらせたあれを使えるのならと考えると、一人で先に行く気にもなれなかった。
 その心配が顔に表れてしまったのか、ユージンがもう一度「わかっている」と微笑む。
「だけど、先に行ったエドくんが心配だ。もしかしたら彼は一人で封印騎士とやりあっているかもしれないだろう?」
「あっ」
「だから、アーヤくんには先に行ってもらいたいんだ。シグムントとカペルくんのこともあるしね」
「……わかりました」
 誰をどこに配置するか。こういう判断はユージンに任せた方が確実だろう。そう自分を納得させ、ユージンとミルシェの二人と目を合わせると、こくりと頷きあってから、アーヤは転送陣へと駆けだした。
 それに気づいた目玉の一匹が、走るアーヤ目掛けて光線を放つ。俯けていた視線を上げるように、光線が床を溶断しながらアーヤに殺到する。
 刹那、床をぶち破って岩石の壁がそそり立ち、アーヤを襲う光線を遮断した。ユージンが得意とする魔法の一つだ。
 そして、すぐに光線がかき消えた。”クロン“ヴィシャスアイの方を見遣ると、バルバガンが強烈な体当たりをかまし、自分の数倍はあるだろう質量を床に転げさせていた。親指を立てて豪快に笑う様にバルバガンらしいなと思うと、彼らに対する心配が霧散していくのがわかる。
 アーヤは止めていた足を走らせた。
「行かせるもんか!」
 右手からニエジェランが飛びかかってくるのが見えたが、「行かせるんだよ!」とすぐにドミニカが割って入る。
「ドミニカ!」
「アーヤ、坊やをしっかり助けてやるんだよ」
 ニエジェランの剣を押さえ込んだまま、こちらを見たドミニカがウィンクをする。かっと頬が熱くなるのを感じながら、アーヤは「うん!」と答えて転送陣へと飛び込んだ。

「ふふ、坊やの前でもあれくらい素直になれればねぇ」
 赤くなったアーヤが転送陣に消えるのを確認すると、ドミニカはニエジェランをはじき飛ばしてから呟いた。
「ドミニカ、と言ったか。さっきから一々まとわりついてきて、面倒な女だな。ボクに気でもあるのかい?」
「ああ、そうかもね。だから、もうしばらくダンスの相手をしてもらおうじゃないか」
 まったく趣味でない男の顔を槍の向こうに見据え、それが苦虫を噛み潰すように変化していくのをドミニカは笑った。

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