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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_25 

 ドミトリィが撃ち放った衝撃波を切り裂き、爆ぜたエネルギーの奔流をかきわけながらエドアルドは猪突する。
 渾身で放った斬撃は、紙一重のところで消えたドミトリィにかわされたが、鋭敏になった感覚はその現れる場所をすでに捉えていた。
 床を破砕しながら反転。ドミトリィに消える余裕を与えないタイミングの一撃は、しかし、見事にいなされ、エドアルドはそのまま壁に並ぶ彫像を打ち砕くことになった。
 強い。
 それは月印の差などではなく、純粋に剣士としての力量への感想だった。
 強い剣士には、敵であろうと敬意を払う。斬り結ぶ中で、エドアルドは目の前の敵に対して一定の敬意を払うようになっていた。だがそれは、同時に一つの疑問となってエドアルドの口をついた。
「なぜレオニードにつく。なぜ月の鎖なんかを……?」
 月の鎖は、世界を腐らせる諸悪の根源。大地が穢れれば人の生活はままならなくなり、モンスターが徘徊すれば直接的な生命の危険にもつながる。現にエドアルドは、月の鎖によって苦しむ人たちを多く見てきた。
 剣士を強くするのは、才能と、修練と、その矜恃だとエドアルドは思っていた。だから、これほどの剣士が封印軍にいることが理解できない。
 エドアルドの声が聞こえたのだろうか。
 ドミトリィが剣を下ろし、何かを考えるように黙り込む。そして、不意に月印を光らせると、手から衝撃波を飛ばして床をたたき割った。
「この力が何だかわかるか?」
 そんなものはわかりきっている。
「月印だ」
 エドアルドと触れ合った視線を握り込んだ拳に落とし、再び一瞬の迷いを見せた後に続けたドミトリィの言葉は、にわかには信じられない内容だった。
「……俺が、“新月の民”だと言っても、そう言えるか?」
「なっ……!?」
 あり得ない。
 新月の民とは、月印を持たぬ人たちの総称だ。だが、目の前の男は確かに月印を使って戦っていた。
 ドミトリィの言った意味がわからずに、やはりあり得ないと断じようとしたエドアルドだったが、そのとき、ふと思い出した記憶に思わず言葉を呑み込んだ。

「……よけいなことをしやがって」

 ショプロン村の鎖を解放したときに聞いた誰かの声。誰のものかわからずに聞き流してしまったその声が、封印軍を支持する新月の民のものだったとしたら……。
 あり得ないとしか思えなかったものに疑念が生じ、同時に、ドミトリィの月印の上に覆い被さる赤い鎖をはっきりと視認したエドアルドは、それに月の鎖の姿を幻視した。
 月……。
 鎖……。
 月印……。
「ま、まさか……そんな……」
 そして、エドアルドの疑念はドミトリィの言葉によって確信に変わる。
「月を大地に縛り付けるように、あの方は俺の身体に月印を縛り付けてくださった。本来なら、おまえの剣を受け止めることも出来なかっただろう。俺がこうして戦えるのは、全てあの方のおかげだ」
 月印を受け付けぬ新月の民にさえ、月印を縛り付けることのできる能力。それがレオニードの力だというのか? 
「おまえたちの希望が光の英雄なら、あの方は俺たちの希望だ。月印が無かったおかげで、俺たち新月の民がどういう境遇に追いやられていたか知っているか? いや、知っていても理解はしていまい。おまえは持って生まれた側の人間だ。持たずに生まれた俺たちを理解はできない。それがおまえたちという“種”だ。おれたちとは違う」
「だ、だからといって世界を腐らせて何になる!? おまえも、おまえの仲間も、俺たちと同様、この世界に生きているだろう?」
 震える声を必死に押さえて、エドアルドは言葉を絞り出した。
「だから理解していないと言うんだ」
 完全に気を飲まれていたエドアルドの反応が送れ、咄嗟に構えた大剣はドミトリィによって力任せにはじき飛ばされる。放たれる圧力に押され、エドアルドはその場にへたり込んだ。
 剣の切っ先をエドアルドに据え、ドミトリィが断じる。

「これは復讐だ」

 世界の当たり前の姿が突然崩れ、そこにあった歪みが眼前に突きつけられる。その重みが胃の腑にずしりと沈み込み、じゃあこれまでの戦いは何だったんだと問うた頭が白く白濁すると、エドアルドは一瞬、我を忘れて呆然とした。
「あ……」
 言葉が像を結ばない。何か言わないと全てが崩落していく感覚に襲われ、必死に口に言葉をのせようとしたが、ただ喘ぐことしかできなかった。
 見下ろすドミトリィの目に蔑む色が見える。それでも何も言えない自分に悔しいと思う余裕さえない。
 据えられた剣先が離れていき、上段に構えられた。
 斬られる……。
「エド!」
 ふいに聞き慣れた声が耳朶を刺激し、それが遊離したエドアルドの意識を引き戻した。
 我に返ったエドアルドは、反射的に転がるようにしてその場から離脱する。はじき飛ばされた大剣を拾ってすぐに構え直したが、ドミトリィは部屋の入り口の方を見遣っていた。
 視線を追従し、見慣れた仲間の顔を見つける。アーヤだ。そこに、自分があこがれた英雄の姿を重ね合わせたエドアルドは、弱気になった自分を叱咤した。
 そうだ、何をやっている。相手の事情など関係ない。俺にはやらなければならないことがあったはずだ。この戦いに挑む、俺の理由が……。
「先に行け、アーヤ」
 足下に転がる宝珠を拾い上げていたアーヤにそう告げると、それを聞いたドミトリィがエドアルドをゆっくりと睨め据えた。
「でも……」
「行け!」
 ここで退くことは許されない。退けば、自分自信を否定することになる。
「……無事でいなさいよ。でないと承知しないんだから」
 それだけを言ってアーヤは走り出した。気持ちを察してくれた仲間に感謝しながら「ああ」とそれに答えたエドアルドは、行くのを黙って見過ごしたドミトリィと視線を交錯させる。
「まだ戦うつもりか……」
 そう問うてきた相手に、エドアルドは静かに、そしてはっきりと答えた。
「おまえにおまえの戦う理由があるように、俺にも俺の戦う理由がある。俺は解放軍のエドアルド。光の英雄に成り代わっておまえを討ち、そして、俺たちは月の鎖を断つ!」
 月印を解放する。
 肉を裂かれるような激痛が走り、沸騰する血液に血管が爆ぜる音さえ聞こえた気がする。それと同時に、さらに激しくなった力が全身を燃え上がらせ、その奔流を御するためにエドアルドは意識を集中させた。
 もっとだ。もっと力を……。
 封印騎士を倒すだけの力を、俺によこせ。
 力の代償が鋭敏になった感覚を貫く。その激痛に、エドアルドは口元を綻ばせた。

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